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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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32話 勇者としての意地

≪タロウ視点≫


 ガキンっ!!

 

 俺が今斬り合っているのは、グランドマスターに作られたと思われる勇者レギールだ。

 前に戦った時は、俺の斬撃についてこれていなかったが、今は違う。

 レギールは俺の斬撃を受け流し反撃してくる。

 だが、避けられない程ではない。

 これも、ラロ姉様が俺を鍛えてくれたからだ。

 もし、鍛えられていなかったら、レギールに殺されているだろう。

 しかし、この戦闘は長引きそうだな……。

 俺も決定打を与えられていないが、それはレギールも同じだ……。

 いや、レギールの顔は焦っているのか、かなり苛ついているように見える。


「な、なぜだ!? 俺はベアトリーチェ様に強化されたんだ!!」


 確かにレギールの身体能力は爆発的に向上している。それこそ、【身体超強化】の様にだ。

 だが、レギールの剣は軽い。

 筋力そのものは上がっているが、剣技の技術が圧倒的に足りていないんだ……。

 ……それに。


「レギール。お前に聞いておきたい事がある」

「あぁ!?」


 やはり、かなり苛ついているみたいだな。

 こいつを見ていると、かつての俺を思い出す。


 レティシアに殺されるまでは、俺はファビエ王国内で数々の暴虐行為を行ってきた。

 ジゼルによってファビエ王国は滅びたが、もし、生き残りがいたら俺を許しはしないだろう。

 誤ったところで意味もないし、謝る相手もいない。

 俺にできる事は……、勇者を名乗らない事だ……。

 名乗る資格がない……。


「レギール。お前はなぜ勇者を名乗る?」

「あぁ!? 運よく召喚され栄誉のある勇者を名乗れたお前には分からないんだろうな!!」


 運よく?

 栄誉ある?


「まさかと思うが、うらやましいと思ったり、妬ましいとでも思っているのか?」


 勇者という言葉にどれほどの意味がある?

 特に俺の様に、戦えもしない人間が突然勇者に選ばれる……。そんな事に何の栄誉が?

 もし、栄誉があるのなら……。

 一瞬だけ……、レギールから意識が外れてしまった……。

 その瞬間を見逃すレギールではなかった……。


 ……っ!? 


「ようやく、隙を見つけたぜぇ!!」

「タロウ!!」


 しまった!?

 

 レギールの剣が、俺の脇腹を貫く。

 くっ……。

 激痛が走る。

 勇者になった後……、レティシアと敵対し、痛めつけられて、少しは痛みに耐性ができた……。

 だがな……。

 いくら耐性が出来ようと、痛いモノは痛い。


「ぐっ……」


 レギールは剣を引き抜こうとしない。

 引き抜いた方が出血量は多いはずだ。

 ……それなのに、なぜ?

 

「このまま魔力を注ぎ込んでやるよ!!」


 魔力?

 あぁ、そういう事か。

 確か、人は、一人一人、魔力に違いがあるそうだ。

 だからこそ、他人に魔力を注ぎ込まれると、激痛を伴うとジゼルが言っていた……。


「タロウ!!」


 ラロ姉様が俺を助けようと駆け寄ってくる。しかし……。


「邪魔すんじゃねぇ!!」


 そう言って、レギールが手を振り上げる。すると、地面から大型の魔獣が二匹現れた。

 ラロ姉様なら、魔獣程度に負けないだろう。

 だからこそ、俺が注目したのはレギールの腕だ。

 振り上げた腕に隙がある!!


 俺は、レギールの腕を斬り払う。

 レギールの腕が宙を舞う。

 その瞬間、レギールの剣を握る手の力が抜け、俺は一気に後ろに下がる。


 チッ!!

 剣は刺さったままで痛いが、引き抜かなければもう少し動ける。


 レギールだって、片腕を失っただけだ。まだ、戦えるはずだ!!

 そう思っていたのだが、レギールは痛みにのたうち回った後、逃げ出そうとしていた。


「に、逃がさねぇ……よ!!」


 俺は、力の限りレギールに斬りかかろうとする。しかし、踏み込もうとした時、足から力が抜ける。


 チッ……。

 剣が刺さったままとはいえ、血が流れすぎたのか!?


 や、ヤバイ……。

 意識まで……。


≪ラロ視点≫


 私は、目の前の魔獣を一瞬で片づける。


 この程度の魔物で私を止められるわけないじゃない!!

 それよりもタロウよ!!


 タロウはレギールの腕を斬り飛ばし、斬りかかろうとしたが、血を流しすぎたのかその場で崩れ落ちる。


 今、レギールの攻撃が来れば、タロウが殺される!!

 そう思って、私も最速でタロウの前に出ようとする。

 しかし、レギールはそのまま逃げてしまった。

 

 急に消えたけど、アレは転移魔法なの?


 転移魔法を使ったとはいえ、レギールの魔力をまだ感じる事が出来る。

 追いかけて、殺すか?

 いや、今はタロウの方が優先よ!!


 私は傷ついたタロウを連れて治療ギルドに入る。

 しかし、治療師達はタロウを治そうとしてくれない。


「か、帰れ!!」


 治療ギルドの連中は、私達を追い出そうとする。


「か、金なら払うわよ!!」


 しかし、誰も動こうとしてくれない。


 ダメだ……。

 この国の治療ギルドはマイザー王に懇意にされていた。

 こいつらは基本、腐っている。


 私は、タロウを連れ外に出る。

 早く治療しないとタロウが死んでしまうわ……。

 潜りの治療師ならば……。


 そう思ったその時……。


「タロウをこちらに連れてくるんだ!!」


 あ、あれは……。

 どうしてあの子がここに!?


≪タロウ視点≫


 くっ……。


 痛みで目が覚める。

 見覚えのない天井……。

 ここはどこだ?

 俺はレギールと戦っていて……。


「目が覚めたかい?」


 この声……。


「じ、ジゼルか……?」

「あぁ、気分はどうだい? 体の傷はもう治っているはずだよ。痛みは多少残っていると思うが……」


 俺は刺された腹部を見る。

 確かに、傷は塞がっているようだ……。


「お前……。治療魔法が使えたのか?」

「あぁ。私は魔導王と呼ばれた女だ。まぁ、エレンちゃんみたいな強力な治療魔法は使えないがね……」


 確かに、こいつはレティシアと戦っていた時に、俺達の傷を治していた。

 いや、アレは改造か……。

 ジゼルの隣には心配そうな顔をしたラロがいた。


「ラロ姉様……、レギールの奴はどこに行った?」

「分からないわ……。転移魔法を使ったのか、急に消えたわ」


 チッ……。

 俺にとどめを刺さずに逃げるとはな……。

 アイツとは近いうちに……決着をつける時が来るだろうな……。

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