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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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31話 ギルドの混乱


 私達がマイザーに帰ってきてから、たった半日で色々な事があった。

 

 帰って来て一番最初に聞いた話は、マイザー王がギルド職員に対し、国外追放の命令を出したそうだ。

 事の発端は、ギルド職員がマイザー王の言う事を聞かなかったらしく、それに腹を立てたらしい。

 普通であれば、国王の命令は絶対なのだろうが、今のマイザー王にそこまでの力はない。

 グランドマスターに弱みを握られている王は、逆に王城に幽閉されてしまったらしい……。

 いつも思うけど、本当に小さい男だ。


 そして、その話を聞いた直後、空にグランドマスターが現れた。

 今まで顔を隠していたが、今回は仮面を外した。

 その顔は、傷だらけではなく、綺麗な顔で妖艶に笑っていた。


 私達、冒険者からすれば、グランドマスターの言葉はふざけた内容だったけど、彼女の部下であるギルドは混乱していた。

 まぁ、自分達のトップがそんな事を言ったのよ。混乱しても仕方ないわ。


 私とタロウは、閑散としたマイザーの町を歩く。

 タロウも黙って付いてきているけど、どうしてもわからない事があるのよね。


「タロウ。どうして、レティシアちゃんと戦わなかったの? 珍しく、彼女も決闘を受け入れてくれていたのに……」

「まだ、ラロ姉様に恩返しができてねぇ。俺の生きる目的はレティシアと戦う事だが、そう思えるようになったのは、ラロ姉様が鍛えてくれたおかげだ……。ラロ姉様がマイザーを滅ぼしたいのであれば、俺は喜んで協力する。俺の戦いはその後でいい」


 嬉しい事を言ってくれるじゃない。

 でも、私が望むマイザーの崩壊は短期間でできる事じゃない。

 それに、これは私の負の感情による復讐よ……。タロウにまで背負わせられない。

 でも、もう少しだけ、タロウと一緒にいてもいいわよね……。

 

 私達は情報収集の為にギルドに入る。

 ギルド内では、冒険者同士が揉めているのかは知らないけど、いつもよりも騒がしい。

 私は近くにいた冒険者に、騒ぎの理由を聞く事にした。

 

「ちょっと、何の騒ぎなの?」

「ラロの姉御!? 聞いて下せぇ。グランドマスターの野郎が散々不正を働いて消えやがったあげく、この間、空に現れてあんな事言いやがったから、冒険者の何人かが文句を言いに行ったんだ」


 不正ねぇ……。

 グランドマスターは、もう何百年もグランドマスターをやっているのよ。不正の一つや二つは当然していてもおかしくないでしょうね……。

 それに、さっきのグランドマスターの宣言は、信じようと信じまいと一度は殺すと言っているだけだ。

 グランドマスターの言う通り、本当に新しい世界で生き返ったとしても、それはもう自分ではないかもしれない。

 私が気になったのは「何も考えずにただ平穏に生きる事を」というセリフだ。

 それはグランドマスターに生かされているだけで、それは生きていると言えるのか?

 だから、私はグランドマスターを信用は出来ない。


 この冒険者も、あのグランドマスターの言葉には思うところがあるのか、ギルドに真意を聞きに来たそうだ。

 それに対して、タロウは冒険者の肩を叩き、溜息を吐く。


「おいおい。そんな強面の顔をしておいて、グランドマスターが言っていた戯言を信じてビビっているのかい?」

「ば、馬鹿言うんじゃねぇよ。俺達、いや、タロウ、お前も冒険者なら分かっているだろう?」


 ……。

 そうね。

 私達は冒険者。

 ただ、グランドマスターに生かされるだけの人生なんて嫌よ。

 それに、グランドマスターの企みは成功しない。

 グランドマスターがどれほど強大だったとしても、レティシアちゃんに勝てるとは思えない。

 例え、今はグランドマスターの方が強かったとしても、あの子なら……。【未来視】で見たあの子ならば、神にすら負けないと信じている。


「俺達、冒険者は自由だ。だから、あんな下らねぇ与太話なんて信じる必要すらねぇ」


 タロウがそう言うと、冒険者も大きく頷く。

 マイザーに来た頃のタロウは、愚かでこの町の冒険者からも蔑まれていたわ。

 でも、今は違う。

 あの子は、少しずつ受け入れられてきた。


 私はギルドの受付を見る。

 冒険者が受付に文句を言っているのだと思ったけど、どうやら、言い争っているのはギルド職員同士みたいね。


「なぜギルド職員同士が言い争っているのかしら?」

「最初は冒険者が職員に文句を言ったんだ。一番最初の対応に嫌悪感を覚えていたらしく、冒険者に共感していたんだ。だが、ギルドの上層部……。このギルドの幹部共が、こんな事を言い出したんだ……」


 ギルドに長年、忠誠を尽くしている者は殺されずに救われる……と。


 ば、馬鹿じゃないの?

 さっきのグランドマスターの言葉のどこにそんな風に感じ取れる要素があったの?

 こう思ったのは私だけじゃなくタロウも同じ事を思ったらしく、言い争うギルド職員を呆れた目で見ていた。


「はぁ……。どちらを支持しようが勝手だがよ……。今は冒険者達や国民が混乱しないようにするのが最優先で、それをせずに、ギルド職員同士で争う意味はねぇだろう……」

「まさか、あの悪名高い勇者タロウが正論を言うとはな。だけど、俺もそう思うぜ……。だが、ギルド職員(アイツ等)も混乱しているんだと思うぜ。なんて言ったって、このギルドのギルマスも消えちまったみたいだからな……」


 ギルマスが消えた……ね。

 逃げ出したのかしら……、それともグランドマスターに殺されてしまったか……。

 私達が、未だに言い争っているギルド職員を冷めた目で見ていると、ギルドの入り口が勢いよく開き、血塗れの男が飛び込んできた。

 タロウがすぐさま動き、男の下へと駆け寄る。


「お、おい! 何があった?」

「が……ぐふっ」


 男は大量の血を吐き出し、その場で息絶える。

 これは……呪い?

 私の【神の眼】では【血の呪い】と出ている。

 確か、メディアが出来るきっかけとなった病だったかしら……。

 ちなみに【血の呪い】は、今では重症化を抑える薬も完成して、致死率は殆どないと言われているわ……。

 それなのに……。


 私も男に駆け寄って、遺体を視ていると、ギルドに一人の男が入ってくる。

 あ、あれは!?


「邪魔するぜ。勇者タロウがここにいるって聞いたんだが、どうやら本当にいるみたいだな」

「あんた、レギールじゃない。あんたみたいな勇者崩れが冒険者ギルドに何の用なの? それにタロウはもう勇者じゃないわよ。以前にタロウに負けて悔しいからと言って、いちいちこちらに関わってこないで頂戴?」


 私は冷めた目で、レギールを見る。

 レギールは言われた事が図星だったのか、顔を真っ赤に染めて怒りを露にする。


「黙れ!! あれは俺の本気じゃない。そもそも、あの時の俺はまだ完全体じゃなかった。そうでないければ、タロウ如きに負けるはずがない!!」


 よく言うわよ。

 あの時のあんたは、完全にタロウの動きについていけなかったじゃない。

 今だって、大して変わっているとは思えない。

 それはタロウも思ったみたいで、呆れ返った顔をしながらも剣を抜く。


「いいぜ。相手になってやるよ。今度は確実に、完全に殺し尽くしてやるよ」

「タロウ……。こんな奴に関わる必要はないわ」


 私は一応止める。

 タロウは、呆れた顔をしながらも「いや、アレはここで殺しておいた方がいい」と言った。

 確かに、私もそう思うけど……。

 そう思った時、レギールが口角を吊り上げて嗤い、近くにいた冒険者を斬った。


「な!? やめろ!! お前の相手は俺だろ!!」


 タロウは、レギールに斬りかかる。

 前までのレギールならば、タロウの斬撃に反応は出来なかったはず。

 でも今回はタロウの剣を止めた!?


「さぁ!! 今度こそ決着をつけてやる。勇者は俺一人で十分だ!! 腐った勇者はここで死ね!!」

「俺が腐った勇者ってのは否定はしねぇが、テメェが勇者を名乗んのは気に喰わねぇ!! 俺がテメェに引導を渡してやるよ!!」


 こうしてタロウとレギールの戦いが始まった。

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