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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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29話 医療大国メディアの表の女王とエルジュの覚悟

誤字報告 いつもありがとうございます。


 エルジュ様のいる空間は、独特な雰囲気を持っています。なんと言いましょうか、とても清らかな空気なのですが、はたまた牢獄の様な、複雑な空間です。

 広さは結構広いのですが、そんな広い空間に、今は三人……いえ、四人います。

 一人は勿論エルジュ様。

 そして、セラピアさんとソワンさん。

 この三人は先ほどもいましたが、もう一人増えています。


 その人は、とても綺麗な服を着た、五十代くらいのおばさんで、とても気品を感じます。


 ……。

 あぁ、この人はマリアさんです。

 医療大国メディアの表の女王です。


 私はマリア様に頭を下げ、エルジュ様に近づきます。

 そして、エルジュ様の前にアブゾルを置きます。


「エルジュ様、連れてきましたよ」

「レティシアちゃん……。そのお人形は?」

「これがアブゾルです」

「え!?」


 アブゾルは、カタカタと音を立てながら、ゆっくりと不気味に立ち上がります。


 うわぁ……。


 物凄く気持ち悪いので、焼き尽くしたいですね。でも、このお人形はトキエさんの所有物です。アブゾルが入っているとはいえ、勝手に焼き尽くすのはいけません。

 カタカタと不気味に動くアブゾルを見て、エルジュ様達は少し……、いえ、かなり引いているみたいです。

 あ、ソワンさんは平静を装っていますね。本心では、きっと驚いているはずです。


「お、お初にお目にかかる。ワシがアブゾルじゃ。今は力を失ってあるのでな、こんな姿になっておる」

『そして、私はバハムート。かつてこの世界を作りし七竜の一匹だ』


 はて?

 毛玉(お前)は、お呼びじゃないんですよ?


 私は毛玉を床に叩きつけます。


『ぎゃあああ!!』

「何を勝手に喋っているんですか?」


 私は毛玉を拾い上げ、握り潰そうとします。

 毛玉が苦しんでいるので楽しいですが、今はいけません。

 エルジュ様がジト目で私を見ています。

 確かに、毛玉やアブゾル人形を見て、信じる人なんていると思えません。


 アブゾルや毛玉が疑われるのは何も問題はありませんが、私が疑われるのは嫌です。


「エルジュ様、この二匹が言っている事は本当ですよ。アブゾルは、先のベアトリーチェとの戦闘で、アブゾールにかけた断空結界の影響で死にかけていましたので、私が人形の中に入れました。この毛玉は、無断でエレンの中に入りこみ、聖女の力を安定させていました。本体は白いトカゲでしたよ」


 エルジュ様は【神の眼】を持っているので、この二匹を視て、驚愕していました。

 一応、【神の眼】の前では、嘘はつけません。

 アブゾルのクラスは【神】【ご神体】となっていますし、毛玉は【聖竜王】【七竜神】となっています。


「れ、レティシアちゃん、貴女……」


 あ、私も視られてしまいました。

 私は口元に人差し指を置いて「内緒です」と言います。これだけで、エルジュ様は理解してくれました。


「しかし……。けだまん殿が……聖竜王(バハムート)でなければ抑えきれないほどの神気……。エレンちゃんは凄いわね。いつか女神になりそうね……」


 はて?

 女神というのは、神族でなければなれないのではないではないのですかね……。そう思ってアブゾルに聞いてみると、別に神族でなくても、力と清い心を持っていれば、神にはなれるそうです。


 私達が連れてきた、グローリアさんとベックさんはマリア様に頭を下げています。


「エルジュ女王陛下……。お久しぶりでございます」

「はい。グローリア陛下、久しぶりですね」


 はて?

 グローリアさんはマリアさんをエルジュと言いましたよ?


「グローリアさん。その人はマリア様ですよ? エルジュ様は、こっちです」


 私はエルジュ様を指差します。しかし、セラピアさんが邪魔をします。


「なぜ、邪魔をしますか?」

「エルジュ様に、指をささないで、無礼よ」

「はて?」


 神様に指をさすのは無礼なのですか?

 私はアブゾルの目を指でついてみます。


「ぎゃああああ!!」

「はて? 人形なのに、痛いのですか?」

「お、お主は鬼か!? いや、お主は鬼神じゃが、普通はでこを指差したりするのであって、目を突かんじゃろうが!! 今はこの人形の体が本体じゃから、目を突けば痛いんじゃ!!」


 はて?

 元は人形だと言うのに、それは不思議な現象です。

 あ!

 良い事を思いついたので、今度、魔物相手に実験してみましょう。

 もし成功したら、ベアトリーチェにとってとても楽しい事になります。


「そ、そんな事よりも、なぜマリア様の本名を……?」


 セラピアさんが何かを言っていますよ?

 ……。

 もしかして……。

 私はエルジュ様を見ます。

 エルジュ様は、首を横に振って「私が教えておいたのよ」と言ってくれました。

 危ない危ない……。危うくバレるところでした……。

 

「さて、エルジュというたのぉ……。ワシと話がしたいと聞いたが、どういった要件じゃ?」

「はい。話をする前に、アブゾル様に確認したい事があります。スペア(・・・)の存在の話を聞いた事がありますか?」


 はて?

 知られてはいけないと言っていた気がしますが、随分とあっさりとスペアの事を話しますね。


 アブゾルはスペアの事を聞いた事があるのか、とても驚いています。

 神のスペア(・・・)の事を知らない限り、スペアという言葉で驚く事は無いと思います。


「確かに聞いた事もあったし、存在を疑った事もある。エルジュ、お主がそうじゃというのか?」

「はい。私は神族であり、アブゾル様のスペアとして、この世界に派遣されました。スペアである私がメディアを作った事で、この世界に干渉してしまった為、サクラ様の怒りを買い、この次元の狭間に閉じ込められてしまいました」


 ふむ。

 国を作っただけで、こんな場所に閉じ込めるとは、サクラという人はなかなか厳しい人みたいです。


「お主がスペアだという事は分かった。それで、ワシに何を聞きたいのじゃ?」

「単刀直入に聞きますが、アブゾル様は、今も神界と連絡を取る事が可能なのですか?」

「あぁ、取れるが、サクラ様がお主に罰を与えているのであれば、ワシにはどうする事も出来ないぞ」

「それはいいのです。ですが、これだけは伝えて欲しいのです。今回、アブゾル様にスペア(私の存在)の事を知られてしまいました。私はもう役割を果たせないでしょう。その報告だけでもしておいて欲しいのです」

「しかし、そんな事をしてしまえば、お主は永遠にこの空間から出られなくなるのではないのか?」

「それは構いません」


 これはもしかして……。

 私同様、エルジュ様の覚悟(・・)に気付いたアブゾルは、「少しでも、罪が軽くなるように、話はしてみるが、期待はせんでくれ……」と呟きました。

 おそらくですが、エルジュ様は自分を犠牲にサクラという女神様を介入させようとしているのです。

 いやいや……。

 そんな自己犠牲の精神は許しませんよ。


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