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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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27話 圧勝

誤字報告 いつもありがとうございます。


≪ドゥラーク視点≫

 

 どうやら、ベアトリーチェが放った光の剣は、建物などは貫通できないと知った俺達は、冒険者達を物陰に避難させる。

 前にベアトリーチェと戦った時の様に、レティシアが倒れるといけないと思い、戦いを見守っていた。


 しかし、見守る必要もなかった。

 ベアトリーチェがどんな攻撃を繰り出しても、レティシアにはかすりもしない。

 レティシアは見てから避けているのだと思っていたが、避ける素振りすら見せない時が何度かあった。

 まるで、最初からどこに攻撃が来るのかを分かっている(・・・・・・)ような動きだ……。


 いくら攻撃しても当てる事の出来ないベアトリーチェに対し、レティシアの攻撃は一撃も外れる事がなく当たっている。

 しかも、レティシアの攻撃は全てが致命傷になるほどの威力だった。

 それでもベアトリーチェが死ぬ事はなかった。

 ベアトリーチェは、ゴスペルヒールを常に自分に使っていたからだ。

 やはり治療ギルドから、聖女が使う魔法の最適化はベアトリーチェに伝わっていたようだ。

 レティシアからすれば、死に難いおもちゃが目の前にいる程度何だろう。


 レティシアはベアトリーチェの頭を潰そうとはしない。おそらく頭を潰してしまえば殺してしまうからだろう。

 ……いや、アレは、死なないように注意しながら、苦痛を与えているように見える。

 アイツ……。たまにああいうところを見せるからな……。


 しかし、それももう終わりのようだ。

 レティシアは空に逃げるベアトリーチェを叩き落とし、立ち上がろうとするベアトリーチェの前で剣を振り上げた。


「ど、どういう事だ!? 前に戦った時(・・・・・・)よりもはるかに強くなっている!?」


 ベアトリーチェが言っている()とは、いつの事だ?

 俺が知っている限り、ベアトリーチェと直接戦ったのは二回。

 最近では、ベルを助ける時に戦ったと聞いたが、話を聞く限り、アレは戦闘ですらなかったと思える。

 という事は、レティシアが学校にいるときの事を言っているのだろう……。

 あの時のレティシアと比べているのなら、まったく違うだろうな……。

 今のレティシアは【鬼神】の力を完全に使いこなしているし、今はその力を使ってすらいない。


「どうでもいいです。もう死んでください」


 レティシアはベアトリーチェの頭をファフニールで叩き潰した。その瞬間に、ベアトリーチェは塵と変わる。

 これがレティシアの言っていた、分裂したベアトリーチェの死に方か……。

 しかし、この塵が戻る先は……。


「これで、またベアトリーチェが強化されましたか……」

「どういう事だ?」


 カンダタさんが、レティシアにベアトリーチェの事を聞いている。

 そう言えば話していなかったな……。もう隠しておいても仕方ないだろう……。


「ベアトリーチェはいくつかに分裂しているそうです。だから、こうやって分裂したベアトリーチェを倒すと、本体が強化されるそうです。カンダタさんはベルに会いましたか?」

「あぁ……。あの銀髪の娘だろう? 最初、誰かの隠し子だと思ったぞ」


 カンダタさんは、ベルを見た瞬間に「ドゥラーク。いつの間にリディアとこんな大きな子を作ったんだ!?」と言っていた。

 ベルの見た目は五歳くらい。いくらなんでも、子供はそんなに早く成長しねぇよ。


「アレはベアトリーチェの良心だそうですよ。だから、ベルをベアトリーチェに奪われると困るんです」


 ベルが、ベアトリーチェの良心だとして、自ら捨てたモノをもう一度手に入れようとするのか? という疑問はある。

 いや、ベアトリーチェが本当の意味で完全体になりたいというのであれば……必要がないと捨てた良心というモノも必要なのか?


「レティシア、この後どうするんだ?」

「そうですね。マイザーを滅ぼしても構わないのですが、その前にセルカに一度帰りましょう」


 確かに、ギルガの旦那やグローリア陛下と一度話をしておいた方がいいだろう。

 そう思っていたのだが、ジゼルがエルジュという人の部屋に戻る事を提案してきた。どうやら、そこにスミスが匿われているらしい。

 スミスの存在を完全に忘れていた……。

 レティシアもそうだったらしく、少し照れた顔で転移魔法を発動させる。


 俺達はレティシアの転移魔法で、エルジュという人の部屋に転移した。


≪レティシア視点≫


 私達が帰ってきた事に、エルジュ様達は驚いていました。

 セラピアさんはカンダタさんやドゥラークさんを見て「ここはエルジュ様の聖域なのに……」とうなだれていました。


「帰ってきたわね。アレ? カンダタじゃない」

「お前はラロ。それに勇者タロウ」


 ラロがカンダタさんに近づきます。タロウはカンダタさんを睨んでいました。


「訂正しろ。俺はもう勇者じゃない」


 ふむ。

 どうやら、タロウは勇者と呼ばれるのが嫌みたいですね。

 今度、嫌がらせに呼んでみましょうか。


 タロウはカンダタさんに抗議をした後、私の方を向き「レティシア、俺達をマイザーに戻してくれ」と頼んできました。


 はて?

 タロウとは、スミスさんを救出した後、戦うと約束していたのですが……。忘れているのですかね?


「戦わないのですか?」

「あぁ……。今はまだグランドマスターとの戦いが終わっていないだろう? 全てが済んでからでいい」

「しかし、ベアトリーチェを殺した後は、私はさらに強くなりますよ?」

「構わん。それなら、俺も少しでも強くなるだけだ」


 まぁ、そこまで言うのであれば、そうしましょう。

 タロウの性格も少しはマシになってきたので、約束はちゃんと守ります。


「そうですね。マイザーのベアトリーチェは倒しましたが、アブゾールにいる本体をまだ倒していません」


 ラロはアブゾールの事を聞きたそうにしていましたが、タロウが急かしたので、マイザーに転移してあげました。


 さて、次はスミスさんです。

 そう思っていると、笑顔のエルジュ様が近づいてきました。


「レティシアちゃん。どうしてあなたがここへの転移魔法が使えるの?」


 あぁ、その事ですか。

 ちゃんと説明をしておかないと、緊急の逃げ込み先に使えませんから、説明だけはしておきましょう。


「はい。あの転移魔法陣の文字を解析しました。二回も転移しましたから充分でした」


 そう答えると、エルジュ様はその場で膝をつきます。


「う、嘘でしょ……。確かにレティシアちゃんの最大の特殊能力は【成長力】だけど……。二回って往復じゃない……。それで解析されるなんて……。私……もう何百年もここに閉じ込められているのに……」


 どうやら随分と落ち込んでいるみたいです。

 なぜでしょう……?


「ところでエルジュ様。結界で覆われているアブゾールに入る事は可能ですか?」

「む、無理ね。アレはアブゾル様が、肉体を生贄にしてまで発動させた断空結界なの……。余程の神でなければ、破れないわ」


 ふむ。

 余程の神ですか……。

 そう言えば、何度か話に出ているあの神様ならば結界を破れますかね?


「では、神界にいるサクラさんという人であれば、アレを解けますか?」


 私がサクラさんの話を出すと、エルジュ様の顔が青褪めます。

 どうしたのでしょうか?


 エルジュ様は、慌ててサクラさんの事を説明してくれます。

 神々の王である、サクラさんという人は、見た目は私くらいの少女なのですが、見た目に反して強力な神様で、気軽に会える人ではないそうです。

 そして、エルジュ様をここに閉じ込めたのもサクラさんだそうです。


「ふむ……。では、サクラさんを紹介しろとは言えませんね」

「そうしてくれるとありがたいわ……」


 私がサクラさんと会うのを諦めたと同時に、私の魔法玉が光ります。

 その光景を見たエルジュ様とセラピアさんが驚愕しています。

 どうしたのでしょう?


「ど、どうして、魔法玉が反応するの? この次元は各世界と完全に分断されているから、特殊な魔法玉じゃない限り連絡を取れないはずなのに……」


 どうやら、セラピアさんやソワンさん、それにメディア女王にしか、特殊な魔法玉を渡していないらしく、外との連絡手段はそれ以外にないそうです

 しかし、私にはそんな事は関係ありません。

 次元を越える転移魔法を覚えた時に、手持ちの連絡用の魔法玉にも細工をしておきました。

 だから、私の魔法玉であれば、別次元だろうが関係ありません。


 私は魔法玉を取り出し、起動させます。

 この色と魔力はギルガさんです。


「はい。あ、ギルガさんですか?」

『レティシア、スミスを助ける事は出来たか?』

「はい。ここで、レティイロカネをいじっていますよ。相変わらず気持ち悪いです」


 スミスさんはさっきから、床に座り込みレティイロカネを撫でまわしていました。

 ふむ。

 気持ち悪いです。


「お嬢ちゃん酷いな!?」


 スミスさんはそう大声で言ってきますが、無視しておきましょう。

 

『レティシア、スミスを助けたなら、一度帰って来てくれ。アブゾル様が話があるそうだ』

「アブゾルが……ですか? 分かりました。すぐに帰りますね」


 私はそう言って魔法玉をしまいます。

 私とギルガさんとの会話を聞いていたエルジュ様がすごい勢いで私の肩を掴みます。


「ちょ、ちょっと待って……。レティシアちゃん。今アブゾル様って言わなかった?」

「はい。アブゾルも匿っていますよ」


 この言葉に驚いた声をあげたのは、セラピアさんでした。


「レティシアちゃん。確か、聖女であるベック様も匿っているのよね?」

「はい。どうして知っているのですか?」

「それは、私だってセルカの町の治療ギルドのギルドマスターよ。知っていて当然よ」


 ふむ。

 セルカのギルマスであれば、ベックさんの事を知っていても当然ですか……。

 しかし、ソワンさんは治療ギルドのSランク。危険な人もSランクなのですが、どうしてセラピアさんはSランクじゃないのでしょう?

 それをソワンさんに聞くと「姉は極度の面倒くさがり屋で、エルジュ様以外の事はことごとくどうでもいいと思っているんだ。だから、それなりの権力を持てるギルドマスターをやっているんだ。姉もとっくに不老にはなっているよ」と教えてくれました。


 私はセラピアさんを呆れた目で見ます。


「ワガママさんですね」

「何よ。私はできるだけエルジュ様の傍を離れたくないのよ」

「ふふ、嬉しい事を言ってくれるわね」


 セラピアさんは全く悪びれる事もなく、そう言い切ります。その言葉にエルジュ様も嬉しそうです。

 しかし、すぐにキリっとした顔になり「レティシアちゃん、私もアブゾル様と話をしてみたいわ」と言い出しました。


 スペアはその世界を管理している神に会っちゃいけないんじゃないんですかねぇ……。

 まぁ、別にいいですけど……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] レティシア強いっすねー [一言] ここまでなんでもできるなら一家に1レティシア欲しくなるんだけどw
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