1話 ファビエ王都
誤字報告、いつもありがとうございます。
誤字報告があったので誤字報告のあった場所を少し書き換えました。
2章の開始です。
マリテさんの治療が終わった次の日に、アレスさん達は故郷へ向けて旅立ちました。
これからは勇者タロウを追うのではなく、故郷に戻って冒険者として生きていくそうです。
加護を失った事で魔王を倒すという使命も無くなったから、それが一番だと思います。
私とエレンは、二人でファビエ王都に行くために準備をしていました。するとギルガさんが私達の部屋の扉をノックしてきます。
「どうかしましたか?」
「お前ら二人でファビエ王都に行くつもりか?」
「はい。ファビエ王都に行くのは私の我が儘です。だから、他の人達のお仕事の邪魔までできません」
「その事なんだがな。これを読んでみろ」
ギルガさんに一枚の紙を渡されます。
これは依頼書ですね。
【ファビエ王都の情報を求む】
【※この依頼は特A級の危険な依頼なので命の保証はできません】と書かれていました。
ちょうどファビエ王都に行く依頼ですね。
あぁ、行くのならこれを受けろというのですね。
「分かりました。情報を届けます」
私がそう返すと、ギルガさんは呆れた顔になります。
「お前は何か勘違いしていないか? オレ達のパーティがコレを引き受ける事にしたんだ」
「そうなんですか?」
確かにこの依頼ならば、私達だけではなく、ギルガさん達もファビエ王都に行く事ができます。ですが、命の保証ができないと書かれていますよ。
ギルガさんには娘さんがいますし、ドゥラークさんやリディアさんは了承しているのでしょうか? もし、ギルガさんが勝手に決めたのならば、それはいけません。
「お二人はどう言っているのですか? 命の保証はできないと書いてありますよ」
「そうだよ。私達ならもう身内もいないから、もしもの時があっても大丈夫だけど……「エレン!!」」
ギルガさんはエレンを怒ります。
誰に向かって怒鳴っているのですか?
私はギルガさんを睨みますが、ギルガさんは私を無視して、エレンを真剣な顔で見ています。
「この拠点に一緒に住んでいる以上、オレ達パーティはもう家族だ。お前等のどちらが死んでも悲しむ奴がいるのを忘れるな! もう二度と、そんな事は言うな!」
そう言ってエレンの頭を撫でます。
エレンは涙ぐんで「ごめんなさい」と言っています。
「レティシア、お前もだ」
「え? あ、はい」
「お前はなんか軽いなぁ……」
まぁ、私が一緒である以上、エレンを死なせる事はありません。
ですが、こんな私達を家族と言ってくれるのは嬉しいかもしれません。
ドゥラークさんは馬車を手配しに行き、リディアさんは常時依頼書をギルドまで取りに行っているそうです。
馬車? 常時依頼?
常時依頼とは、魔物の素材を売る為の依頼だそうです。
どうやらファビエ王都に行くには結構な時間がかかるそうで、その間に魔物に襲われたときの事を考えて常時依頼書を持っていくそうです。
それはいいとして……馬車ですか……。
昨日の夜に転移魔法を開発したのですが……。
そんな事を考えていると、ドゥラークさんが手配した馬車が到着したようです。
馬車は馬が二頭もいる大きなモノでした。
「これなら五人乗れるだろう」
「ドゥラークさん……」
「ん? どうした? あ、ギルガの旦那から聞いたがファビエ王都に行くのを決めた事を気にしているのか? そんな事は気にすんな!」
「あ、いえ……。それはもういいのですが、転移魔法があるので馬車は必要ないのですが……」
「は?」
ドゥラークさんの顔が固まります。
しかし、ギルガさんが私の頭をポンっと叩きます。
「なんですか?」
「一つ聞きたいんだが、お前はファビエ王都に行った事があるのか? それとも縁のある者がいるのか?」
「え? どちらもありませんよ」
「じゃあ、どう転移するんだ?」
「できますよ」
「できると思ったらやってみろ」
「……」
なにか諭されているみたいでムカつきますが、目の前で転移すれば納得してくれるでしょう。
……アレ?
転移できませんよ?
「おかしいですねぇ……」
「おかしくないさ。転移魔法陣は一度行った場所でないと転移はできない。これは転移魔法も同じはずだ。転移魔法は失われた魔法だが、転移魔法陣と同じ原理だと聞いた。マリテがいる場所なら可能かもしれんが、何の縁も所縁もない場所には転移できないだろう」
マリテさんなら精神の一部を私と繋いでいますから、知らない場所でも転移できそうです。
せっかく転移魔法を開発したのに使えなければ意味がありません。
「ムカつきますが仕方ありません。ファビエ王都まではどれくらいかかるんですか?」
「この馬車で二週間だな」
私は馬車を見ます。
二頭も使って二週間ですか。
遅すぎます。
「私が引きましょうか? 私なら一週間もかかりませんよ」
「絵面が最悪だから却下だ」
絵面って何でしょうか?
しかし……残念です。
良い案だと思ったんですけどね……。
私は大人しく馬車に乗ります。
馬車の御者はギルガさんとドゥラークさんがやってくれるそうです。
しかし、二週間ですか……まぁ、エレンが一緒ですし、リディアさんもいますから暇つぶしはできそうですね。
馬車に揺られて二週間、ようやくファビエ王国の王都に到着しました。
「やっと着いたな。町に入ったら、まず冒険者ギルドへ向かうぞ」
ギルガさんが馬車をセルカの町に帰す手続きをしながらそう言いました。
「ねぇ、リーダー。馬車を返してしまって帰りはどうするの?」
リディアさんはこの二週間でギルガさんの事をリーダーと呼ぶようになりました。
確かに今のままでは、ドゥラークさんかギルガさんのどちらがリーダーか分かりませんでしたからね。
見た目に関してはドゥラークさんの方が迫力はありますし……。
ギルガさんはギルガさんで貫録はありますし……。
まぁ、私としてはどちらでも良いんですけどね。
「帰りはレティシアの転移魔法があるだろ」
「え、はい。一度行けば転移できるそうですよ」
ギルガさんの話では、一度行ったところには転移できるそうなので、帰る事はできるのでしょう。
馬車は置いておくだけでお金がかかるそうなので、できればさっさと返してしまいたいそうです。
「大きな町だね。レティ」
「はい。大きな町です。あそこに見えるのがファビエ城ですね」
ファビエ城は真っ白なお城で綺麗な建物です。
こんな綺麗なお城があるのに、ファビエ城内では国王派と王女派に分かれて対立しているそうです。
その対立の理由が【勇者タロウの召喚】だそうです。
なんでも、王女様はこの世界の事はこの世界の者が解決すればいいと思っていたそうです。
それに対して、国王はアレスさんという勇者がいたにもかかわらず、異世界から勇者を召喚してしまったようです。
その結果、勇者タロウは王都で数々の犯罪を行い、それを見かねたレッグという人が、勇者タロウを追いだしたという事のようです。
国の内輪揉めには興味は無いのですが、もし手助けをするのなら王女様の方ですかね。
少なくともタロウを呼び出した愚かな人には協力したくありません。
「レティシア。エレン。行くぞ!」
「「はい」」
ファビエ王都までの二週間の道中で、数々の魔物に襲われては返り討ちにしました。
その魔物の素材が、ギルガさんの持つ道具袋に入っているので、それを売りにギルドへと行きます。
ファビエ王都の冒険者ギルドはセルカの町よりも大きいみたいですが、なぜか活気がありません。
ギルガさんが受付に行くと「ギルガさんじゃないか!」と駆け寄ってくるおばさんがいました。
「君は……テレーズさんじゃないか。ファビエ王都のギルドで働いていたんだな」
「えぇ。しかし、心配したわよ。テリトリオが滅びたと聞いていたからね。ギルガさんは今何をしているんだい?」
「あぁ。冒険者に復帰したんだ」
「そうなんだね。今日は依頼を受けに来たのかい? 残念だけど依頼はないよ」
テレーズさんの話では、国王派の貴族が冒険者を嫌っていて、兵士を使い依頼ができないように妨害しているそうです。
「テレーズさんも大変だな。前はテリトリオで、今度はファビエ王都か」
「でも、それも少しの辛抱だよ。ネリー様が国王を倒そうと頑張っていらっしゃる」
「上手くいくと良いな。それよりも今日は魔物の素材を売りに来た」
「依頼がこなせないから、物資も少なくなってきたんだよ。魔物の素材はありがたいわね。今すぐ担当者を呼ぶわ」
魔物の素材買取用の担当者が来たので、ギルガさんは倒した魔物を取り出します。
道具袋には多くの物が入りますが、防腐処理をしていないと腐ってしまいます。
防腐処理には、防腐の魔法を使っているのですが、それでも少しずつ傷んでいきます。
ここに来るまでに全部が傷まなくて良かったとギルガさんは笑っていました。
数が多いので買い取りの計算に時間がかかっている様で、私達はギルドの受付で待っていると冒険者と思われる人が駆け込んできました。
「戦える奴等は来てくれ!! ファビエ兵の連中が反逆者を一掃するために動いた!!」
反逆者?
どういう事なのかをギルガさんに聞くと、兵士の言う反逆者とは王の決定に従わない者の事だそうです。
ファビエ王都では定期的にこういう騒動があるらしく、今日もそれが起こったみたいです。
まったく、迷惑な話です。
感想、気になる点、指摘などがありましたら是非よろしくお願いします。
あと、こういう書き方もあるよと教えていただければ嬉しいです。
ブックマークの登録、評価もぜひよろしくお願いします。




