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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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25話 挑発


 スミスさんは、何日も牢屋に入れられていたというのに、随分と元気です。

 まぁ、鉱石を愛する人ですから、神経まで鉱石と一緒で硬く頑丈なのかもしれません。

 そんな冗談みたいな事を考えていると、スミスさんが牢屋の中での事を話してくれました。


 処刑が決まった囚人は、処刑までの時間で精神が壊れたりするそうです。

 精神が壊れてしまった者を処刑しても、恐怖もなく死んでしまうので、マイザー王としては面白くないと、精神が壊れないように、処刑ぎりぎりまで普通の生活をさせろと命令していたそうです。

 そのおかげか、流石に鍛冶はできませんでしたが、スミスさんは牢屋の中で鉱石を触る事が出来たそうなのです。

 そんなスミスさんを見て、ラロが呆れた顔でスミスさんに捕まった時の事を尋ねました。


「スミス。あんた、捕まった時に暴れず素直に捕まったと聞いたけど、なんで素直に捕まったの?」


 はて?

 スミスさんはかなりの頑固親父ですので、鍛冶の邪魔をされて怒らないとは思えません。

 ですが、ラロが言うには、スミスさんは、捕まえに来た兵士に無抵抗で自分の仕事を中断させて、素直に連行されたとの事です。

 鉱石バカのスミスさんとは思えません。ま、まさか……。


「貴方は本物ですか?」

「なんて、失礼な事を言うお嬢ちゃんじゃ!? それに、ラロよ。お主はワシが暴れなかったというがの……、ワシはあくまで生産職でSランクじゃ。あの時逆らっていれば、周りの鍛治師まで巻き込んでしまう事になる。じゃから、大人しく捕まったのじゃ」


 これは驚きです。

 あの鉱石の事しか頭がないスミスさんが、鍛冶師の事まで気を使うとは……。

 まぁ、そこまで親しくはありませんけど。

 ……しかし。


「スミスさん。捕まって処刑されたら、鉱石相手に気持ち悪い欲情が出来なくなりますよ? それとも、死ねば鉱石になれるとでも思いましたか?」


 そう思っているのでしたら、この人の気持ち悪さには、ラロでも危険な人でも勝てません。


「いや、いくらワシでも死んだら鉱石になるとは思っちゃいないぞ。相変わらず辛辣なお嬢ちゃんじゃな……」


 ……と。

 どうやら、スミスさんがいなくなった事に気付いたみたいですね。

 牢屋にベアトリーチェの神気を感じます。

 どうやら、ラロもベアトリーチェの神気を感じ取れたのか、焦った顔で「チッ。レティシアちゃん、転移魔法を使ってちょうだい!?」と叫びます。


「はい」


 返事をしましたが、おそらくですがベアトリーチェは私達に気付けません。

 マイザーに妨害魔法などをかけるから、私達を認識できなくなるんです。

 それに、ベアトリーチェは【神の眼】を持っていません。だから、ここを見つける事もできません。

 どちらにしても、このままここに居ても仕方ありませんから、エルジュ様のところに転移します。


 私達がエルジュ様の部屋に転移してくると、その部屋にいたエルジュ様、セラピアさん、ソワンさんは驚いていました。


「な!? レ、レティシアちゃん!? どうしてここに!?」


 セラピアさんはとても驚いています。

 ここはラロとジゼルに説明しておいてもらいましょう。


「エルジュ様。ベアトリーチェを待たせているので、彼等を匿っておいてください」

「ちょっと、レティシアちゃん!?」


 私はジゼルと共にマイザーに戻ります。

 はて?

 ジゼルもついてきたのですか?


「ジゼル?」

「済まないね。昨日にギルガ殿から、忌み子ちゃんから離れるなと言われているんだよ」


 ふむ。

 相変わらず、ギルガさんは心配性です。

 でも、そうなるとエルジュ様が心配ですが、ラロではエルジュ様には勝てないと思うので、そこも大丈夫でしょう。


 私達はマイザーの外の門の近くに転移してきました。

 すると、私達が現れると同時に、ベアトリーチェが背後に現れます。


「やぁ、レティシアちゃん。今、マイザー城に賊が入ったんだけど、何か知らないかい?」

「おや? これはこれはグランドマスターじゃないですか。私も今ここに来たところですから、何を言っている事やら……」


 私はジゼルと共に首を傾げます。


「あはは。何をわざとらしい。コソコソするなんて、君らしくないね」


 はて?

 こそこそとは不思議な事を言いますね。

 むしろ、何もしていないのですが……。


「何を面白い事を言っているんですか? 私達は今この国に来たばかりなんですよ。スミスさんが捕まっていると聞いて、スミスさんに面会に来ただけなのですが、もしかして逃げられましたかぁ?」


 私はわざとらしく大声でスミスさんの事を聞きます。


「何を馬鹿な事を……。君が逃がしたんだろう? スミスをどこにやったのかな?」

「はて? 私は今来たばかりなのでスミスさんの事なんて知りませんよ?」


 私は、わざとらしく両手を上げ知らないというふりをします。

 すると、ベアトリーチェの魔力に怒りが混じります。


「あ、仮面をしていても怒っているのが分かりますねぇ……。何を怒っているのですかぁ?」

「いつまでとぼけているつもりだい? 君の言葉一つでリーン・レイ(君達)の今後を潰す事も可能なんだよ?」


 ……。

 ついに、権力を使って脅してきましたか。

 しかし、私にはそんな脅しは効きませんよ?


「はて? さっきから言っていますが、私は今ここに来たばかりですよ? つい先ほど言った事すら理解できないとは……、貴女は何百年もグランドマスターをしているそうですが、ボケてきたのではないのですか?」


 私の挑発に、ベアトリーチェから怒りの魔力が激しく放出されます。

 ダメですよぉ……。この程度の挑発くらい軽く受け流さないと……。


「そうか……。君がそのつもりならば、もう容赦はしない」

「はて?」


 ベアトリーチェは、周りの冒険者に指示を出します。どうやら、私達を捕まえる為に、事前に準備していたみたいです。

 ここに居るのは冒険者ばかりです。どうせお金に目がくらんだのでしょう……。

 一応、忠告だけしておいてあげるとしますか。


「あのー……。冒険者の皆さん」


 私は一気に殺気を解放します。

 

「グランドマスターの命令で、向かってきてもいいですけど……、確実に殺しますよ?」


 私は見せしめに一人の冒険者の首を掴み地面に叩きつけます。

 この人は、まだ、答えを出していませんから、殺しはしません。


「この人のように殺されたくなければ、今すぐこの場を去りなさい」


 私が冒険者達を睨むと、冒険者の足が少し後退ります。

 しかし、「貴様ら……。グランドマスターである私に逆らって、この先も冒険者を名乗れると思っているんじゃないだろうな……」とベアトリーチェが脅すと、冒険者の数人が私に斬りかかってきます。


 残念です。

 貴方達の死は無駄にしませんよ。


 私が冒険者を殺しにかかろうと動こうとした時「待て!!」と私達を止める声が聞こえてきました。


「はて?」

「お、お前は……」「あの人って!?」


 アレはドゥラークさんとカンダタさんです。

 あの二人がなぜここに?

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