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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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24話 スミスの救出


 ラロの準備が終わるまで、セルカの町で待っていろと言われたので、大人しくセルカの町でのんびりしていると、私の魔法玉が光り始めます。

 いつもは持ち歩く事は無いのですが、昨日の朝にギルガさんから「ラロからいつ連絡が来てもいいように、魔法玉を常に持ち歩け」と言われたので、持ち歩いていました。


「はて?」


 私は魔法玉を発動させます。

 すると、魔法玉から気持ちの悪い声が聞こえてきました。


『レティシアちゃんね。準備ができたわ。前に隠れていた家に転移してきてちょうだい。今回は少人数で動きたいから、連れてくるのはジゼルだけでいいわ』


 ジゼルだけですか?

 確かに、ドゥラークさんでは体が大きいのでこそこそ隠れるという事は苦手でしょうけど、カチュアさんでもいいと思うのですが……。

 まぁ、ラロのご指名ですからジゼルを連れて行くとしましょう。


「はい。わかりました。今からジゼルを迎えに行きます。一時間ほどでそちらに行きますね」

『分かったわ。だけど、できるだけ早くしてね……』


 ふむ。

 二日も待たせたというのに、随分と急かしてきますね。

 まぁ、良いです。

 私はジゼルがいるフィーノの村に転移します。

 フィーノのジゼルの診療所とセルカの拠点は繋がっているのですが、昨日の夜に急患が出たと慌てて出ていきましたから、今はこの拠点にはいません。

 

 転移してきたフィーノの村は今日ものどかです。

 今もこの村では改造された亜人さんが普通に歩いています。

 ようやく普通の人間に戻れる薬が完成したのですが、このままでもいいという村人が多いそうで、ジゼルも困っていました。

 これは前途多難ですね……。


 さて、ジゼルはどこにいるのですかねぇ……。


「おや? 忌み子ちゃん。ラロから連絡は入ったのかい?」


 はて?

 急に声をかけられたので私が振り返ると、少し疲れた顔のジゼルが立っていました。


「急患はもう大丈夫なのですか?」

「あぁ。もう大丈夫だ。それで、忌み子ちゃんがここに居るという事は……」

「はい。ラロからジゼルだけを連れて来いと言われましたので迎えに来ました」

「私だけかい? 純粋な戦闘だったらドゥラーク殿の方が良いと思うのだがね」


 確かに、ジゼルの言う通りですが、ラロの話からすると手荒な真似はしないと予測できますので、戦闘は無いと考えていいでしょう。


「ラロはラロで何かを考えているんじゃないですか? とりあえず行きましょう」

「あぁ……。でも、もしもの事があるから、グローリア陛下に連絡だけ入れておくよ」


 ジゼルは自分の魔法玉を取り出し発動させます。

 しばらくすると、魔法玉からグローリアさんの声が聞こえてきました。

 ジゼルはグローリアさんに事の経緯を説明します。

 五分ほどで話を終わらせ、魔法玉をしまいます。


「さて、行こうか。あ、転移魔法でマイザーのあの家まで行けるのかい?」


 普通の転移魔法であれば、特定の場所にピンポイントに転移するのは不可能です。

 しかし、私にはあれ(・・)があります。


「はい。これを使います」


 私が取り出したのは一本のナイフです。

 これは、てと? ……、エレンといた町の武器屋さんで買ったナイフです。

 投げナイフとしてあまり使わなくなりましたが、ある魔法をかけているので便利なナイフに進化しました。


「それは、ポインターナイフだね。ギルガ殿から研究してくれと何本か渡されているんだ。今のところは忌み子ちゃんしか使えないからね……」

「そうなのですか?」


 まぁ、確かに今のところ私にしかポインターナイフは使えません。

 私がどれだけ弄っても、私以外の人間が使う事は不可能でした。

 もしかしたら、ジゼルならばなんとかできるかもしれませんね。


 私達は事前に家の柱に刺したポインターナイフに転移します。

 転移した先には窓の外を見るタロウと、ラロが立っていました。


「お待たせしました。タロウは何をしているんですか?」

「待ったわよ。タロウ、外はどう?」

「今にも襲ってきそうだぜ?」


 襲ってくる?

 何が……。

 あぁ……。外を見るまでもないですね。

 殺気を放った何かがこの家を囲んでいます。


「はて? 囲まれていますね。騙されましたか?」


 まぁ、どれだけ雑魚がいたとしても、殺し尽くす事も逃げ切る事も可能です。

 だいたい、転移魔法もあるのですから、どうとでもできます。


「さっさとお城に転移してスミスさんを助けますか?」

「それは無理よ。グランドマスターがマイザー城に転移魔法を妨害する魔法をかけているわ」

「はて?」


 私はお城の方を見ます。

 確かに、何かの魔法がかかっているのが分かります。

 となると、一度セルカに戻りましょうか?


「ラロ姉さま。どうする? 俺が足止めしようか?」

「別に大丈夫よ。この地下に逃げればいいだけよ」


 ラロはそう言って足下を指差します。


 はて?

 この国にもメディアの様に地下施設が?

 ラロは、メディアに行った時に、危険な人が持っていた転移魔法陣を取り出します。確か、一階層下に転移する魔法陣でしたか?

 ラロの設置した転移魔法陣に乗ると、私達は真っ暗な通路に転移します。ここが地下ですか?

 そう言えば、家に設置した転移魔法陣はどうなるのでしょうか。そう思っていてラロに聞いてみると、転移した直後に手元にちゃんと帰ってくるそうです。

 それは便利ですね。


 しかし、本当に地下に来たみたいですね。足音が上から聞こえます。

 どうやら、囲んでいた連中が家に突入したみたいです。

 しかし、この地下通路は……。


「メディアにある地下通路に似ています。ラロ(貴方)も知っていたのですか?」

「えぇ。私には【神の眼・過去視】があるのよ。セラピアやイラージュを視れば、この通路の存在を知る事が出来るわ」


 確かに【神の眼】があれば、隠し事は出来そうにありません。

 特に、重要な秘密であればあるほど、人の心に強く残ります。だからこそ【過去視】で良く見えるのでしょう。

 それよりも気になる事があります。


「グランドマスターは、ここの事を知っているのですか?」


 もし、グランドマスターが知っているのであれば、ここも無意味になってしまいます。

 しかし……。


「【神の眼】を持たないグランドマスターは、ここの事を知らないと思うわよ。メディアの女王の下へ行く地下通路はメディアにだけ、あると思っているんじゃないかしら?」


 ラロはセラピアさんの過去を視て知ったそうなのですが、こういった通路は各国に秘密裏に作られているそうです。

 エラールセにすらあるそうで、皇王であるグローリアさんすら知らないそうです。


「セラピアの過去の話では、メディアの地下通路だけは特別でわざとバレやすくしているそうよ」

「なぜですか?」

「そこまでは知らないわ。エルジュという大聖女は私よりも強力な【神の眼】を持っているんでしょう? さすがにエルジュの過去は視れないわ」


 どうやら同じ能力でも上位の存在には、【神の眼】は効果がないみたいですね。覚えておきましょう……。


「しかし、あの家が地下通路の真上とは……。運が良かったですね」

「ふふ……。そんなわけないじゃない」

「はて?」


 ラロが言うには、地下通路の真上に位置するこの家を空き家として用意したのはラロだそうです。

 私達はまんまとラロの計画通りここに隠れた……というわけです。


「掌の上で踊らされているみたいで、ムカつきます」

「ふふ。そう言わないの」

「それで、この通路に来た理由は?」

「ここなら、誰にもバレずにスミスのいる牢獄の真下に出られるわ」


 ラロはスミスさんが投獄されると知った時から、少しずつ犯罪者を捕まえマイザーの牢屋に送り込んでいたそうです。

 牢屋に犯罪者を送り込む事で、スミスさんを目的の牢獄に居れようとしたみたいですね。

 そして、この二日間で、ラロの思惑通りの場所にスミスさんが投獄されている事を確認していたそうです。


「では、直接スミスさんの牢屋の床をぶち抜き救出するのですか?」

「それだと周りに気付かれるでしょう? レティシアちゃんの【創造】の力を使ってある魔法を作り出して欲しいの」

「はい?」

「エルジュの下への転移魔法よ」


 あぁ、次元を越える転移魔法であれば、ベアトリーチェにも気づかれないという事ですか……。

 しかし、ジゼルはいい顔をしません。


「それは不可能なんじゃないのかい? 次元を超える転移魔法は異世界の文字で書かれているんだ……」


 どうやら、エルジュ様のところに行く転移魔法陣の事をエレンに聞いていたみたいですね。

 普通に考えれば、使う事は不可能と考えますが、ラロはにやりと笑います。


「知っているわよ。でも、レティシアちゃんはすでにその言葉を理解しているでしょう?」

「私の過去を視ましたか?」


 あぁ……。

 あの金に光る眼は【神の眼】を発動させています。

 

「えぇ」

「それでしたら、隠しても仕方ありません。使えますよ」


 今のところは、エルジュ様のところだけですけど、次元を越える転移魔法は完成しています。


 私達はスミスさんが入れられている牢獄に向かい通路を進みます。

 ちょうどお城の入り口の真下で魔力を感知しました。これが妨害魔法ですか……。

 鬱陶しいですから解析でも始めましょう……。


 三十分くらい歩くと、地下に下りる階段があり、その奥でラロは立ち止まります。


「ここよ。さて、どうやってスミスをここに連れてくるかよね……。次元を越えたとしても妨害魔法があるから……」

「あぁ、解除できますよ? もう、解析が終わりましたし」

「え!?」


 実は階段を下りる前に解析が終わり、いつでも解除できるようになりましたし、妨害魔法をすり抜ける事も可能です。

 これにはタロウも呆れた顔をしていました。


「お前、いつの間に……」

「お城の下に入った時点で魔力解析を行っていました」

「ずっと黙っていると思ったら……」


 はて?

 ジゼルにも呆れた顔をされましたよ?


「さて、スミスさんを救出しましょうか」


 私はスミスさんの魔力を感知して、転移魔法を発動させます。

 すると、目の前にボロボロの服を着せられたスミスさんが現れました。


「な!? ここはどこなんじゃ!?」

「はて? 随分と元気ですねぇ……」


 話に聞くと、もう数日も投獄されているというのに、痩せ細る事もなく元気ですねぇ……。

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