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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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22話 タロウの想い


「レティシアちゃん。スミスを助ける事には協力するけど、準備があるから、二、三日だけ時間を貰うわよ?」


 はて?

 スミスさんの処刑は決まっていますし、ラロはすでに牢屋の鍵を持っているのですから、わざわざ準備をする必要がないのでは?

 そう思っていたのですが、「これは必要な準備なのよ」と言って、家から出ようとします。

 しかし、ドゥラークさんがラロを家から出そうとしません。


「準備って何をするつもりなんだ? そもそも、俺達がマイザーに入っている事はグランドマスターにはバレているだろう。だからこそ、早くスミスを助け出したいのだが?」


 ふむ。

 ドゥラークさんの言う事は尤もです。

 しかしラロは、深く溜息を吐きます。


「はぁ……、馬鹿ねぇ。確かに、グランドマスターは貴女達の事に気付いているでしょう。でも、本当にバレてはいけないのは、ギルドなのよ。いくらグランドマスターが貴女達がいると言ったところで、姿を確認できていなければ妄言でしかないの。いくらグランドマスターがギルドの頂点であっても、そんな妄言で処刑を早くしたりは出来ないわ」

「なぜそう言い切れる?」

「今回の処刑の理由は見せしめとマイザー王の威厳の為なのよ。こんな言い方をしたくはないけど、処刑を見に来るギャラリーがいないと意味がないのよ。グランドマスターだってその事は分かっているはずよ」


 はて?

 だからと言って、ベアトリーチェがマイザー王に配慮する必要はないのでは?


「まぁ、貴女達の気持ちもわかるし、私としてもスミスを早く解放したいからね、出来るだけ早く準備をするわ。さて、それまではゆっくりとお話ししていてちょうだいな」


 お話し?

 ラロが家を出ていくのと入れ替わりに、タロウが家に入ってきました。


 タロウはカチュアさんとドゥラークさんを見て、溜息を吐きます。それを見たカチュアさんは、タロウに殺気をぶつけます。

 しかし、タロウは気にする事もありません。

 そんなタロウに激昂したカチュアさんが斬りかかろうとしますが、ドゥラークさんに止められています。

 そして、タロウはドゥラークさんに向かい「そっちのでかいおっさんは話が通じそうだな。悪いがカチュアを黙らせておいてくれ」と苦笑します。


「なんだと?」

「そいつはレティシアが関わるとおかしくなる。だから、黙らせておいてくれと言ったんだ」

「ふ、ふざけるな!!」


 カチュアさんは暴れようとしますが、ドゥラークさんに捕まれていて動けないみたいです。

 タロウはそんなカチュアさんを無視して、私に近づいてきます。


「久しぶりだな。ラロ姉さまの授業の時以来か?」

「そうですね。まぁ、私は会いたくはなかったのですが……」

「はっ! そう言うな」

「それで、今回は私と戦いたいだそうですが、まさか、勝てるとでも思っているのですか?」


 私の見る限り、タロウはかなり強くなっています。だからこそ、タロウは私との実力差に気付いているはずです。


「これは、俺の気持ちの問題だ。その結果、殺されたとしても恨みも何もしないさ……」

「はてさて」


 気持ちの問題ですか……。

 まぁ、いつまでも復讐心を持たれても困りますし、覚悟もあるみたいですから、この件が片付いたら戦ってあげましょう。

 さて……。


 私はジゼルに視線を移します。

 

「私達はお邪魔ですから、後はお二人で話をしてください」


 とはいえ、私達は外に出る事は出来ません。

 しかし、この家には二階があります。私はカチュアさん達を連れて二階で待とうとします。

 階段を上がる途中、「大丈夫なのか?」とドゥラークさんご心配していましたが、大丈夫でしょう。

 どう見ても暴れるようには見えませんし、今のジゼルであれば簡単には死なないでしょう。

 戦いが始まったのであれば私も気づくでしょうし……。

 

≪ジゼル視点≫


 私の目の前に居るのは、かつての私の仲間であり、私が利用した元勇者タロウ。

 あの頃のゲスさは無くなり、今は落ち着いているようだ。

 ふっ……。

 あの頃は私も大概はゲスだったから、タロウの事は強くは言えないな……。


「さて、ラロから聞いたが、私と話がしたいそうだね。言いたい事があるのであれば、恨み言でも罵声でもいくらでも聞くよ」

「恨み言? そんなもんはねぇよ。お前は俺を利用した……、俺もお前を殺したんだ。お前の方こそ、俺を恨んでいるんだろう?」


 タロウに殺された事を恨む?

 あの時は、殺されても当然だと思ったし、そもそも、タロウは恨むほどの存在でもなかった。

 だから、恨みという感情は全くない。


「くくく……。では、和解という事でいいのかい?」

「はっ! 何を言ってやがる。争うつもりもないが、慣れ合うつもりもねぇよ。それよりも、お前……、よくレティシアと一緒に居れるな。お前はいつも言っていただろう? 忌み子はこの世に必要がないと」


 確かにそんな事を言った記憶はある。

 しかし、あの頃の私は見た事もなかった忌み子ちゃんにどうしてあんな感情を持っていたんだろうな……。

 グランドマスターにしても、あの当時は忌み子ちゃんの存在をよく知らなかったはずだ……。

 まぁ、その事はもういい……。

 今の私にとっては……。


「あの子は、私にとって孫みたいなモノだからね」

「ははっ。そんな見た目で孫とか、事情を知らねぇ奴が聞いたら狂ってるって思われるぜ?」

「そのままそっくり君に返すよ。本当は五十代のおじさんだろう?」

「ははは。違ぇねぇな」


 良い顔で笑うようになったモノだ……。

 これもラロのおかげか?

 しかし、私はタロウと一年以上旅をした。だからこそ気付く……。


 タロウの本当の目的はなんだ?


「タロウ。わざわざ談笑をしにここに来たわけじゃないんだろう?」


 私がそう聞くと、タロウは少しだけ困った顔になる。


「ジゼル、あの薬を覚えているか?」

「あの薬?」

「とぼけるなよ……。お前が最後まで俺達に使わなかった薬だ。お前の事だ、今も研究はしているんだろう?」


 もちろん覚えている。

 アレはグランドマスターが、忌み子ちゃん達の戦いで窮地に立った時に使えと言われていた薬だ。

 タロウの言う通り、今もこの薬の研究は続けている。


「研究を続けているのであれば、リスク無く使えないのか?」

「それは無理だね。あの薬は危険なモノなんだ……。もうあの薬の事は忘れてくれないかい?」


 今のタロウはあの頃とは違う。

 だからこそ、死なせるわけにはいかない。

 あの薬は自分の生命力を戦闘能力に変換させる。

 一度でも使ってしまえば、その後に待つのは死だ……。


「いや、それは出来ないな。もし、諦めろと言うのであれば、俺の願いを聞いてくれないか?」

「願いだと?」

「あぁ……。ソレーヌを生き返らせてくれ……」


 こいつ……。

 私では完全蘇生は出来ない。それを知っているから、そんな事を言っているんだ……。

 私が過去に使っていたのは、強欲の力で奪った命を生贄に使った甦生魔法だ。

 今では使えなくなってしまったし、使えたとしても使えない……。


「タロウ……」

「今の俺はソレーヌのいない世界に興味もないし、自分の罪が許されるとも思っていない」

「しかし……」

「ジゼル……。俺はもう引く気はないんだ……」


 チッ……。

 私は収納魔法から薬を取り出し、タロウに投げる。


「一つだけ言っておく。その薬を飲んだとしても忌み子ちゃんには勝てないし、無駄死にするだけだぞ?」

「あぁ……。分かっているさ」


 タロウは静かに笑った後、薬を懐にしまい「ラロ姉さまが来るまではセルカにでも戻っていろ」といい家を出ていった……。

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