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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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21話 ラロの求める条件


 ラロは舐める様に私達を足元から頭までじっくりと観察し、「あのグランドマスターが欲しがるくらいだからどんな子かと思ったけど、見た目は普通で、小さいグランドマスターって感じなのね……」と口角を吊り上げます。


「っ!?」


 ベルの事を知っているという事は……。

 私はベルの前に立ち、殺気をラロに向かって放ちます。それに追随する様に、カチュアさんやドゥラークさんも殺気を放ち始めます。


「ふふ……。流石は天下のリーン・レイね。私でも、レティシアちゃんはおろか、その二人にも勝てそうにないわ……。だけど、勘違いしないで殺気を抑えてくれない?」

「はて? 何も勘違いなんてしていませんよ。貴方がベルの事を知っている時点で、私達の敵です」


 しかし、ラロは目を閉じ首を横に振ります。


「レティシアちゃん。貴女も知っているでしょう? 別に、貴女達の仲間でなく、グランドマスターの手下でもなくても、その子を視れば(・・・・・・・)事情を知る事が出来るのを……」


 視れば?

 もしかして、ラロも持っている(・・・・・)のですね。

 しかし、持っているとはいえどこまで持っているのでしょう。

 アブゾルに以前聞いたのは、神族であるアブゾルでも【過去視】までしか使えないと言っていました。

 それに比べて、エルジュ様は【未来視】まで使えたみたいです。そして、おそらくはその先まで視えていそうです。

 

 ラロは一体どこまで視えているのでしょうか?


「ラロ。貴方がどうやってベルの事を知ったのかは理解しました。しかし、貴方はマイザーの英雄。どちらにしても、私達と敵対するつもりなのでしょう?」


 私の言葉にドゥラークさんはいつでも戦えるように、戦闘態勢に入っています。


「あら? 私がマイザーの英雄だからと言って、リーン・レイ(貴女達)と敵対する理由にならないわよ?」

「そうですか? 私達がやろうとしている事は、マイザーにとって……、いえ、ギルドにとって都合がいい事ではないですよ?」

「そうね。確かにマイザー王からすれば、スミスが殺せなかったら都合が悪いわね。でも、だからどうだと言うの?」


 はて?

 マイザーにとって都合が悪いとなると、マイザーの英雄としては容認できない事ではないのですかね?


「レティシアちゃん。勘違いしているみたいだけど、私はこの国が大嫌いなの。それこそ、滅ぼしてしまいたいくらいに……」


 この国を滅ぼしたい?

 マイザーの英雄と呼ばれているくらいですから、この国で散々いい思いをしたのではないのですか?

 この国が滅びてしまえば、もう、いい思いはできませんよ?


「ふふ……。視ないの(・・・・)?」

「はて? 何を意味の分からない事を言っているのですか?」


 さすがに、【神の眼】持ちは誤魔化せませんが、シラを切っておきましょう。


「ふふ。そう、とぼけるのなら、それでいいわ。私がマイザーに来て百年と少し……、私はこの国を恨んでいるわ。国王だけじゃなく、国民を含めた国全てをね」

「なぜです?」

「私はこの国の生まれなのよ。だけど裕福でもなければ、貧しくもない、普通の平民として生まれたの。でも、当時のこの国の王の気紛れで、私達家族は皆殺しにされたわ。そして、たまたま冒険者として家を出ていた私だけが生き残った」

「はて? どうして復讐しなかったのですか?」

「その当時は力がなかった。だからAランクになって、貴族もろともこの国の王族を殺し尽くすつもりだった。だけど、私はSランクに……、不老になってしまった。そうなれば考える事は一つでしょう?」

「はて?」

「この国を骨の髄までしゃぶり尽くして、そして私を扱えていると勘違いさせ、絶望の中……殺し尽くす。それが私の目的よ。この国の国民には恨みはないけど、マイザー王の怯える姿が見たいから、国民には死んでもらうのよ……」


 ラロは、少しウットリしながらそう話します。

 ドゥラークさんは怒りで顔が真っ赤ですし、カチュアさんも不快感を感じているみたいです。

 しかし、私には少しだけ理解できてしまいます。


「そうですか」

「あら? 止めないの?」

 

 そう言われて、私はドゥラークさんの顔を見ます。

 正直な話、私は普通の人と感性が違います。

 目的の為には手段は選びませんし、その結果人が死のうとどうでもいいです。

 だから、ラロの言っている事はよく理解できます。

 

 私が何かを言おうとすると、ジゼルが前に出ました。


「君がこの国を恨んでいる事は分かった。だが、それならば、どうして私達の前に現れたんだい?」

「魔導王ジゼル……。お久しぶりね」

「英雄ラロ。君とは初めて会うと思ったのだが?」

「ふふ……。記憶を辿ってみなさいな」

「記憶?」


 あ、もしかしてグランドマスターに操られている時に、会ったとかですか?

 それでしたら、ジゼルが覚えていないのも理解できます。


 ラロの言う通りジゼルの記憶の中に、ラロと会った記憶があったのか、納得した様にラロに笑いかけます。


「そうか……。君とは一度グランドマスターの屋敷で出会っているね。あの時の私の記憶では、君と食事をしているね」

「ふふ……。よくグランドマスターの呪縛から解放されたね。どうやら、アブゾルなんかよりもはるかに強力な神によって解呪されたみたいね」

「分かるのかい?」


 どうやら、ラロはサクラ様という女神様を知っているみたいです。

 私も、もしかしたら……。サクラ様の顔を知る事が出来ますかね?

 今度、一度試してみましょう。


「私には【過去視】があるのよ。だから、視えるわ」

「そうなのかい? おかげさまで今は自由だよ」

「そう……。ねぇ、ジゼル。タロウが貴女と話をしたがっていたわよ。貴女は、あの子の人生を狂わせた一人……。恨み言の一つでも言いたいのでしょうね」

「あぁ……。タロウには「いつでも話を聞くから、いつでも来てくれて構わない」とでも言っておいてくれるかい?」


 タロウがジゼルと話がしたいと聞くと、何かを企んでいるのかと勘ぐってしまいますが、ラロは私を見て微笑みます。


「レティシアちゃん、安心しなさいな。ジゼルはたまたま貴女と一緒にいるから、ついでに話がしたいと言っただけなの。そもそも、タロウの本当の目的は貴女よ。レティシアちゃん」

「私ですか?」

「えぇ。タロウは貴女と戦いたがっているわ」


 私と戦いたいですか……。

 いまだに、私に対して復讐心を持っているのですかね?

 それに……。


「タロウは貴方よりも強いのですか?」

「いえ、私は冒険者ギルドのSランクよ。あの子はせいぜい五十年ほどしか生きていないのに対して、私は冒険者を百年は続けている。いくら才能と努力を重ねたからと言って、そんなに簡単に強さを超えられるわけがないわ」


 はて?

 五十年?

 タロウはどう見ても二十代くらいなのですが、どういう事でしょうか?

 私と同じ疑問を持ったであろうドゥラークさんが、その場で大声で笑います。


「おいおい。タロウはまだ二十代だろう? あんな面で俺より年寄りだと言われたら、いくら俺でも、面に自信を無くしちまうよ」

「いえ、ドゥラークさんは年齢よりも遥かに老けて見えるので問題ありません。そもそも、リディアさんとは歳の差がありすぎるとセルカのギルドでも有名ですよ?」

「いや、リディアとは五歳しか離れていないんだが……。お前は本当に冗談というモノが分からないなぁ……」


 とまぁ、ドゥラークさんとカチュアさんが何やらやりとりをしていますが、ラロが五十年の答えを教えてくれます。


「タロウは、向こうの世界では三十代のおじさんだったそうよ。こっちの世界に召喚された時に若返ったんだって」

「召喚というのにはそんな効果が?」

「さぁ……? 少なくとも私は聞いた事は無いわ。タロウを【過去視】で見てもこちらの世界(・・・・・・)に来てからの記憶しか見えないし、タロウがそう言うんだったら、そうなんじゃない?」


 ふむ……。

 これも気になるので、アブゾルに一度聞いてみましょう。


「まぁ、タロウの過去はどうでもいいです。実際に貴方よりも弱いタロウと戦って何の意味があるんですか? 私は今スミスさんを助けるのに忙しいので、タロウ如きに時間を割くのは嫌なのですが?」

「そうよね……。でも、これを見て?」

「はて?」


 とラロは手に何かを持っています。

 アレは鍵ですか?


「それは?」

「スミスの牢獄の鍵よ。ギルドに気付かれずに、スミスを逃がすのであれば、必要なモノじゃない?」


 奪いましょうかね?

 いえ、それ以前に、処刑の瞬間に派手に助けようと思ったのですが……。

 ジゼルは鍵を見て「なるほど……。交換条件というわけかい?」と言い出します。

 交換条件?

 わざわざタロウと私を戦わせる為に?


「ふふふ……。どう? タロウの申し出を受けてくれるのであれば、私達もスミスの救出に手を貸すわよ」


 ……。

 ふぅ……。


「分かりました」

「そう……。タロウにはそう伝え……」

「ただし、私はタロウを殺しませんし、手を抜くかもしれませんよ?」

「えぇ……。タロウは、貴女と戦えればそれでいいんだって」

「そうですか……」


 タロウにも、何かしらの覚悟があるのでしょう。


「分かりました。貴方の申し出を受けましょう」


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