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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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16話 訪問者


「こ、このかわいい子は一体!?」


 私達を出迎えてくれたのはトキエさんでした。トキエさんはベルを見るなり抱きしめます。


 確かにベルは綺麗な銀髪で、顔の整ったお人形さんのような女の子です。

 私もベルはかわいいと思います。

 だけど、トキエさんにかわいがられているのを見ると、少しだけ嫉妬してしまいます。

 そんな事を考えていると、エレンが後ろから抱きしめてくれました。


「レティもかわいいよ」

「ありがとうございます」


 突然でしたが、顔に出ていましたかね?

 でも、いいです。私にはエレンがいます。


「それでレティシアちゃん。この子をどこから連れてきたの?」

「はい。医療大国メディアから連れてきました。ベルはベアトリーチェの搾りかすだそうですよ」

「ちょ、レティシアちゃん!! 搾りかすってどうしてそんな悪口を言うの!?」


 はて?

 私としてはそう自己紹介されたので、そう言っただけなのですが、なぜか怒られてしまいました。

 私が首を傾げていると、ベルが笑顔で「トキエさんでしたっけ? 怒らないであげてください」と言います。


「レティシアさんが言っている事は間違いないです。私はベアトリーチェがいくつかに別けた魂の搾りかすのような存在なのです」

「べ、ベルちゃんがそう言うなら……。ごめんね。レティシアちゃん、嫌いにならないでね」

「はい。大丈夫です」


 こんな事で大好きなトキエさんを嫌いになんてなりませんよ。

 私はトキエさんにギルガさんを呼んできてもらいます。そして、私はベックさんの自室へと向かいました。

 ベックさんはアブゾルの聖女なので、ベアトリーチェに狙われる危険があると、ラウレンさんや枢機卿が、リーン・レイに匿って欲しいと頼んできたのです。

 ですから、彼女は今セルカの拠点に住んでいます。


「ん? レティシアちゃん、帰ってたのかい?」

「はい。ベックさん、アブゾル(これ)を借りていきますね」

「いいよ~。煮るなり焼くなり好きにして~」

「おまっ!? じょ、嬢ちゃん? 煮たり焼いたりせんよな?」

「そんな事はしませんから安心してください。ちょいと見てもらいたい子がいるんです」


 そもそも、お仕置きでもないのにそんな事をするわけがないじゃないですか。

 しかし、ベックさんが今言った事は、とても参考になりました。今度、毛玉で実験してみましょう。

 私がアブゾルを握りしめベックさんの部屋を出ると、リディアさんが話しかけてきました。


「アレ? レティシアちゃん、帰ってたんだね」

「あ、リディアさん。今日は一人ですか?」


 リディアさんは依頼の時も含めて、いつもドゥラークさんと一緒にいるので一人でいるのは珍しいです。


「うん。今日は非番なんだよ。それで、レティシアちゃんがこっちに戻って来てるって珍しいね」

「そうですか? あ、そうです。リディアさんも【神の眼】を持っていますよね? 一緒についてきてくれませんか?」

「え? うん、いいよ。どうせ暇だからね」


 リディアさんはそう言った後、小さな声で「ドゥラークさんもいないし……」と呟いていました。


 階段を下りてベルの待つ食堂に入ると、アブゾルはベルを見た瞬間に騒ぎ始めます。


「ど、どうしてここにベアトリーチェがいるのじゃ!?」


 やはり、アブゾルにはベルの正体を気付かれますか。

 それに対し、リディアさんは「へぇ……。この子も神様の一人なんだ」と言っていました。

 普段から、アブゾルがこの家にいますから、あまり驚かなくなりましたねぇ……。


「嬢ちゃん。ベル(この娘)の事を説明してくれんか?」

「分かりました」


 私はメディアでエルジュ様と話した内容を、一部だけ説明します。

 全てを説明すると、アブゾルにエルジュ様の本当の正体がバレてしまうので、ここに戻ってくる前に、エルジュ様からどこまで話していいかを聞き、ベルの事を説明します。


「なるほど。しかし、ベルという少女の事は理解したが、メディアの女王エルジュは大丈夫なのか? 今の話を聞く限りその部屋とやらにベアトリーチェが攻めてきたら、エルジュは逃げられないんじゃろう?」


 そんな事は、アブゾルに言われなくともわかっていますよ。

 エルジュ様には言っていませんが、あの部屋までの転移魔法は完成していますし、異世界間を転移する文字の意味も理解しました。

 さすがに、二度もあの魔法陣で転移すれば文字の意味を理解できます。

 これはこちらに帰ってから理解したのでエルジュ様にはバレていません。

 それに、エルジュ様から勝手にもう一つの能力(・・・・・・・)も教わりました。

 これはまだ不安定なので、少しずつ実験していきましょう。


「大丈夫です。問題はありません」

「へ? レティシアちゃん何かしたの?」


 危険な人が疑うような目で見てきますが、問題ありません。

 メディアにグランドマスターの気配を感じたら、私が関知できるように魔法をかけたとでも言っておきます。

 実際にメディアにベアトリーチェの神気と魔力を感じたら、分かるようにはしていますが、それ以外は無理にいう必要はないでしょう。


「それで、このベルという子を匿うのか?」

「はい。これは私の勘なのですが、ベルをベアトリーチェに渡してはいけない気がするのです」

「へ? どうしてですか? 私は搾りかすです。私を取り込んだとしても意味がないのでは?」

「ベルはベルなので吸収されるのは嫌です」

「まぁな。こんな幼い姿の子が、ベアトリーチェに吸収されるところはあまり見たくないからな」


 ギルガさんが優しい人で良かったです。

 ベルは自分に価値がないと言いますが、私がそうとは思えません。

 おそらくですが……。


 ベルはベアトリーチェの核。

 もしくは心といったところでしょうか……。

 おそらくエルジュ様もそれに気付いています。


 そうでなければ、わざわざ封印してまでベルを隠しておくとは思えません。

 そして、ベアトリーチェは強固な封印を解いてまでベルを吸収しようとしました。

 だけど、たまたまタイミングよく私達がベルの下へ行った……。


 ……いえ、違います。

 エルジュ様の【神の眼】はアブゾルのそれよりも上です。アブゾルが使うのに苦労する【未来視】も簡単に使えるでしょう。

 エルジュ様は、ベルの封印をコントロールしていたのではないかと思います。

 エルジュ様は私があの部屋に行く事を【未来視】で視たのでしょう。そして、私があの部屋に辿り着く直前に自らベルの封印を解いたのでしょう。


 私をベルと干渉させるために……。


 これも想像でしかありませんが、エルジュ様は自分ではベルを守れないと、私を利用する事を決めたのでしょうね。


 ふむ……。

 利用されるのは気に入りませんが……。まぁ、ベルもエルジュ様も嫌いではないですし、良いでしょう……。


 ベルには部屋を一つ用意して……と思った矢先、ノックの音が響きました。

 トキエさんが「お客さんかな?」と玄関の扉を開けようとするのを私が止めます。


「レティシアちゃん?」

「嫌な予感がします……。トキエさんは下がっていてください」

「へ?」


 私はトキエさんを下がらせ、念のためにベルとトキエさんをリディアさんに任せます。

 扉の先に誰がいるかは分かりませんが、もしかしたら戦闘になるかもしれません。

 危険な人も私の隣に立ちます。

 危険な人は治療師とはいえ、武闘家としても優秀です。もしもの事態に備えられるでしょう。


 扉を開けると、そこには「どうしたのかな? 随分と物騒な出迎えだね……」と、ギルド学校の学長であるシュラークさんが立っていました。


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