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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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7話 刷り込み


 サクラという人が、どれくらい強いかは知りませんが、エレン達に会えなくなるのは嫌なので、不老を作る事は諦めるとします。

 しかし、アセールはグランドマスターに不老にしてもらったんですね。それを聞いたジゼルは紙に汚い文字で、アセールの過去を書き出しています。

 カンダタさんがそれを見て、驚きます。


「お、おい。お前、それで読めるのか?」

「ほんまや。何が書いてあるかまるで分らん」

「ん? なんだい? こんなモノ走り書きだから、私が読めればいいんだよ」


 そういうモノですかね?

 私には波線が書いてあるようにしか見えません。


「ところで、カンダタ殿。さっきまでのアセールが言っていたのだが、カンダタ殿はグランドマスターの命令を無視して逃亡したと聞いた」

「なんやて? グランドマスターの命令やと?」

「アセール。君は覚えていないだろうが、確かにそう言っていた。君と共にいた男も同じ事を言っていた」

「わいと一緒にいた男って誰や?」

「さっき忌み子ちゃんが言っていたノゾスと言う男だ」

「ノゾス?」


 ノゾスはゴスペルヒールを使っていました。だから、治療ギルドのSランクだと思うのですが、アセールはやはり知らないようです。


「治療ギルドのSランクの人の名前を知っていますか?」

「インパクトがあるのは、イラージュやな。確かもう一人おったと思うけど、名前はノゾスや無いはずやで。たしか……そ……忘れてしもたけど、ノゾスって名前や無い事は確かや」


 ふむ。

 アセールが知らないのであれば、危険な人に聞く方がいいかもしれませんね。

 拠点に戻ってから聞いてみましょう。


「それで、カンダタ殿。どういった命令をされたんだい?」

「あぁ……。思い出すのも嫌な命令だった。一つはマイザー王の暗殺。もう一つは、リーン・レイのギルガの殺害だった……」


 ギルガさんの殺害?

 ほぅ……。


 それを聞いたジゼルは「ギルガ殿の殺害はなんとなく理由は分かる。おそらくだが、カンダタ殿に親しいギルガ殿を殺させて、心身が弱ったところを完全な忠誠を誓わせようとしたんだろうな……。と、あわよくば、忌み子ちゃんへの精神的ダメージも期待したのだろう」と言います。


 ふむ。

 そんな下らない命令を出すとは、グランドマスターはよほど死にたいらしいですね。

 やはり、結界をブチ破って殺しに行きましょうか。


「ギルガ殿の事は想像だが、説明がつくとして、腑に落ちないのはマイザー王の暗殺だ」

「はて? アレはカスだったので、死んでも誰も困りませんよ?」

「忌み子ちゃん。マイザー王は、君が改造したと聞いたが、違うのかい?」

 

 はて?

 そんな事しましたかねぇ?

 全然覚えていません。


「私も生き返ってから情報収集はしていたが、今のマイザー王国の王族は、歴代のマイザー王家で成しえなかった程の、善政を敷いているはずだ。そんな王を殺せば、国は混乱するぞ? グランドマスターはそれを狙っているのか?」

「それもあるかもしれないな。その証拠に、グランドマスターはマイザー王の暗殺計画を語っていた時に、「王太子であるプアーは、マイザー王に殺させる」と言っていた……。どう殺させるかは分からないが、もしかしたらレティシアに改造されたマイザー王をさらに改造しているかもしれないな」


 確かに、ジゼルの言う通りマイザー王を改造していたとしても、グランドマスターは精神をいじれるのですから、元のカスに戻す事は可能でしょう。

 しかし……。


「本当にグランドマスターはそんな事を考えているのですかね?」

「なぜ、そう思うんだい?」

「はい。グランドマスターは人の精神や記憶を改ざんする事も可能なのでしょう。そう考えれば、もし、今のマイザーがまともなのでしたら、それを利用しそうじゃないですか」


 少なくとも、もう一度洗脳しなおすよりも、そっちの方が簡単に事を運べそうです。


「ふぅむ……。マイザーで何が起こっているのか気になりますね。一度、行った方がいいでしょうか?」

「そうだね。それには私も同行するとしよう。しかし、その前にアセールにも聞きたい事があるんだ」

「なんや?」

「君が最後にグランドマスターに会ったのはいつだい?」


 はて?

 アセールはSランクです。

 割と簡単にグランドマスターと会えたんではないんですかね?


「せやなぁ……。さっきから話を聞いている限り、わいはグランドマスターに操られていたんやろ? それやったら納得やわ」

「何がですか?」

「今から考えたらおかしいと思った事もあるんや。わいは、Sランクになった時以外に、グランドマスターには会っていないんや。だから、わいの中のグランドマスターは、わいと建築ギルドの連中との仲を仲裁してくれて、わいがSランクになってからも、優先的に仕事を回してくれたってくらいしか接点がないんや。でも、わいの中でのグランドマスターは素晴らしい方なんや。そない慕うほど、会うた記憶が無いのになぜそないな風に感じ取るんやろうな……と思っとたんや」

「それは、お主がベアトリーチェに不老の力を貰ったというのが原因かもしれんな」


 不老を貰ったら、慕ってしまうのですか?

 意味が分かりません。

 ジゼルにも聞いてみましたが、ジゼルも意味が分からないと言っていました。


「レティシアのお嬢ちゃんは聞いた事がないだろうが、ジゼルは聞いた事があるじゃろ?」

「なにをだい?」

「刷り込みというモノじゃ」


 刷り込み?

 確かに聞いた事がないですね。


「まさか、アセールは不老になった事で、グランドマスターを大事な人と認識しているという事かい?」

「ジゼル。刷り込みって何ですか?」

「あぁ、鳥が卵から孵った時に、自分の親じゃない鳥を初めて見て、その鳥を親と思い込んでしまう現象の事だよ。それを刷り込みと言うんだ」

「へぇ……。鳥さんはアホなんですか?」

「いや、別に鳥だけが特別じゃなく、人間でも同じような事が起こりえるんだ。例えばだが、忌み子ちゃんはレイチェルの顔を知っているだろう?」

「はい。お母さんですから当然です」


 お母さんは優しかったですから、忘れるわけがありません。


「もし、レイチェルに育てられずに私が最初から育てていたら、君は私を母親と認識してしまうんだ。それはアホな事でも何でもない。……いや、むしろ仕方のない事なんだ」

「はぁ……?」


 ジゼルが言っている事はよくわかりませんが、アセールの中でも似たような事が起こっていたのでしょう。


「ところでカンダタ殿。グランドマスターの指令を無視した時、アセールはすぐに君を暗殺しに来たのかい?」


 アセールは自分の記憶が曖昧だったとはいえ、カンダタさんを襲ったのは事実だと分かった今、何も言わずに俯いていました。


「あぁ……。比較的早かったぞ。おそらくグランドマスターは俺が指令を無視する事を分かっていたんだろう。だから、俺に依頼する以前に、アセールに命令していたんだと思う。アセール、こうやって俺は生きているからな……。気にする必要はない」

「そう言ってくれると、少しは気が軽くなる……」


 アセールは苦笑いを浮かべていましたが、少しだけホッとした顔にもなっていました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] そう言えばアセール君はグランドマスターへの狂信ぶりを指摘されて妙に動揺してたりもしましたね…あの頃から伏線はあったわけかー。 そして、マイザーのことをまったく覚えていないレティシア…まあ何…
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