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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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1話 神のいない世界

最終章です。

まだ、先は分かりませんが長くなる予定です。


 洞窟の入り口を塞いでいた結界の、最後の一枚がようやく破壊できました。

 沢山あった結界が全て同じだったのなら、一気に破壊する事も可能だったのですが、全て種類が違う、しかも改造された結界だったので、いちいち破壊方法を変えなければいけませんでした。


「ようやくすべての結界を破壊できましたよ。これで洞窟から出る事ができます」


 私が洞窟から出てくると、エレンとカチュアさんが抱きついてきます。


「レティ、大丈夫だった?」

「はい。中にいたリッチキングが弱すぎて何のために作られた洞窟だったのかと困惑しましたが……、どうやら私を閉じ込めておくための洞窟だったみたいですね。しかし……、悪い予感が当たってしまったようです」


 私はアブゾルの神気を確認します。

 やはり、グランドマスターの狙いはアブゾルの命でしたか……。


「悪い予感?」

「はい……。アブゾルの神気が消えています。おそらくですが、グランドマスターがアブゾルを殺したのでしょう。しかし、アブゾルもただでは死ななかったみたいですね。グランドマスターの神気も消えています」


 グランドマスターの神気も消えているので相打ちになったのか……、それとも……。

 私がそう言うと、エレンも心配そうに「で、でも、それってこの世界に神様がいなくなったって事じゃ……」と呟きます。

 神様がいなくなったとしても、たいした事はないと思うのですが……、教会は滅びてしまうかもしれませんね。

 まぁ、それもどうでもいいんですが……。


「どちらにしても一度家に戻りましょう」

「うん」


 神気の消えてしまったアブゾルの事も気になりますが、グランドマスターの居場所が分からなくなったのは少し厄介になりました。

 そもそも、黒いベアトリーチェはまだ生きていると思いますし……。

 どちらにしても、情報を集める必要がありそうです。

 私はギルガさんに明日からの予定を告げて、リビングでアマツと色々話をしていました。

 すると、ここにいるはずのないベックさんが、私を訪ねてきました。


「レティシアちゃんはいる?」

「あれ、ベック司教。アブゾールに派遣されたんじゃないの?」


 トキエさんが対応していたので、私も玄関に行きます。


「ベックさん。アブゾルに何かありましたか?」

「レティシアちゃん……。実は……」


 ベックさんはその場で話を始めようとしましたが、顔に生気はなく、疲れ切っているようなので家に入ってもらい、リビングのソファーに寝ころばせます。

 ベックさんは座って話をしようとしますが、無理は駄目です。私が体を押さえつけ起き上がれないようにします。

 

「そのままでも話はできます。そのままで話をしてください」

「で、でも……」

「大丈夫です。ちゃんと聞きます」


 ベックさんは、私達がアブゾールに帰ってからの事を説明してくれました。


「なるほど……。アブゾルに急に転移させられたのですね。おそらくなのですが、アブゾルはグランドマスターが襲い掛かってくるのを察知したのでしょう」

「そ、それじゃあ、爺は!?」

「どうなったかを確認に行く必要がありますね。分かりましたアブゾールに行ってみます」


 私は転移魔法を発動させます。しかし、アブゾールに転移できません。

 はて?

 一度言った場所には転移できるはずなのにおかしいです。


「……はて? 転移ができませんよ?」

「レティシアちゃんでも無理なのか……。私達も、エラールセの教会からアブゾールへ転移しようと思ったんだが、できなかったのよ……。反応がなかったの……。でも、セルカの教会には転移できたから、転移魔法陣がおかしいというわけじゃないのよ……」

「しかし、ラウレンさんの話では、アブゾールからは転移できても、こちらからは転移できないと聞きましたよ?」

「それは普通の神官達の場合であって、枢機卿や教皇、それに聖女は、どこからでもアブゾールに転移する事ができるようになっているの……。私は先日聖女になったから、転移できなくても仕方ないと思っていたんだけど、教皇や枢機卿も転移できなかったのよ……」


 ふむ。

 確かにベックさんは、アブゾルが嫌がらせの為に聖女にしたから転移できなくとも仕方がないとして、枢機卿や教皇ですら転移できないとなると、間違いなさそうです。


 ベックさんは疲れ切っているようで目が虚ろになっています。ちゃんと、休ませた方がいいかもしれませんね。

 そう思ってトキエさんに頼もうとした時、カチュアさんが連絡用の魔法玉を持ってきました。


「レティシア様。グローリア様から通信が入っております」

「はて? グローリアさんからですか? タイミングがいいですねぇ……」

「ぐ、グローリア陛下のところには、枢機卿が行っているから、アブゾールの事を聞いているはずよ。古い知り合いと言っていたから……」


 ベックさんがか細い声でそう言います。


「なるほど」


 枢機卿から聞いて、連絡をしてきたという事ですね。

 私は連絡用の魔法玉を起動させます。


「はい」

『レティシアか? そっちにベックがいるな』

「はい」

『話は聞いたか?』

「はい。アブゾールに行けなくなったと聞きました。実際にアブゾールにあったはずのアブゾル、グランドマスターの神気を感じなくなりました」

『なに? 神気だと?』


 私はグローリアさんに神気の事を説明します。


『そうか……。何かあったと考えるべきだろうな……』

「グローリアさん。可能であれば、アブゾールに調査員を派遣してくれませんか?」

『どういう事だ? お前は転移できるだろう?』

「いえ、できなくなっているんです。ベックさんがセルカにいるという事は、転移魔法陣や転移魔法が封じられたわけではありませんが、アブゾールには行けなくなっています」

『そうか……。実はな……、俺は部下にグランドマスターを調べるように命令していたんだ。だが、そいつからの報告も途切れている……。よし、分かった。暗部の者にアブゾールの調査に向かわせる。近くの町に転移させるから、一日二日で報告があるはずだ』


 グランドマスターを調べさせていた……ですか。

 その人は、もう死んでいるかもしれませんね。


「ありがとうございます。私の方でも何かわかったら連絡します」

『あぁ、頼む。それでレティシア。ベックの事だが……』

「はい。落ち着いてはいますよ。かなり、顔色は悪いですが」

『そうか。彼女は神アブゾルから強制転移をさせられてから、しばらくは取り乱していたらしいからな……。そちらで落ち着くまで守ってやってくれ』

「分かりました」


 私はトキエさんにベックさんを任せます。しかし、ベックさんは起き上がろうとします。

 

「ベックさん。今日はゆっくり休んでください」

「で、でも……」

「アブゾルは精神体です。今は神気を感じませんが、死んだとは限りません」

「あ……、い、いや……私は無理やり聖女にされたから、あんな爺がどうなろうと……」


 ふむ。

 強がっていますが、かなり心配しているようですね。


「無理はいけません。トキエさん、カチュアさん。ベックさんを休ませてあげてください」

「うん。分かった」「分かりました」


 カチュアさんが【身体超強化】を使いベックさんを抱き上げます。

 そして、トキエさんと共に一階の客間へとベックさんを連れて行きます。

 ベックさんは、口は悪くとも聖女として今まで崇拝していたアブゾルが心配なのでしょう。


 さて、私も今後の事を考えましょうか。


「毛玉、いるんでしょう?」

『あぁ……』


 私の目の前に、毛玉が現れます。


「毛玉。アマツ。神気を感じない理由として、どういう事が考えられますか?」

『そうだな……。単純に考えるのなら、死んだ……、と言えるだろうな。だが、アブゾルは精神体だ。精神体の状態ならば神気が限りなく小さくても理解はできる。だから、感じなくなってもおかしくはない』

「そうですか」


 しかし、普通に考えれば死んでいる可能性の方が高いと……。

 しかし、アマツは考えが違うようです。


「だが、逆に精神体だったからこそ、生き残っている可能性は無いとは言えない。いや、むしろ高いかもしれん」


 なるほど。

 グランドマスターと戦って、負けて瀕死の状態で精神体になってしまっているのでしたら、今はどこにいるのでしょうか?


「分かりました。それならば探してみましょう」

『どうするつもりだ?』

「全神経を集中させて、アブゾルの神気を探ってみます」

『できるのか?』

「知りません。でも、やってみます」


 私は全神経を集中させます。

 わずかな神気も見逃さないように……。


 はて?

 随分と近くにアブゾルの神気を感じますよ。


「いました。ベックさんの傍にいるみたいですね」


 私はベックさんを休ませている部屋へと向かいます。

 部屋の中ではベックさんが寝ていました。


「レティシアちゃん? ベックさん、今寝たよ」

「はい」


 寝ているのならいいのです。

 私が部屋に入ってきた事で、アブゾルの神気が近づいてきます。

 しかし、話はできないみたいです。


「ふむ……。神気が薄すぎて話ができないのですかね?」


 私は部屋を見渡します。

 アレがいいです。


「仕方ありません。トキエさん、そこの趣味の悪い人形を持ってきてください」

「え!? 趣味悪いかなぁ……」

「レティシア様がそういうのならば、悪いですよ」

「カチュアちゃんはぶれないなぁ……」


 トキエさんが持ってきてくれたのは、木でできた老人のような人形でした。

 ふむ。

 趣味が悪いです。


 私はアブゾルの神気を連れ、部屋を出ます。

 ベックさんを起こしては可哀想ですからね。

 トキエさんとカチュアさんには引き続きベックさんを任せます。


 アブゾルと変な人形を持って、私は元いた部屋に戻ります。


『レティシア、どうするつもりだ?』

「当然、話を聞きます。えい!」


 私が魔力を人形に流し込むと、変な人形が動き出しました。

 ……そして。


「お、お主……、何をしたのじゃ?」


 変な人形から、アブゾルの声が聞こえてきました。どうやら成功したみたいです。


「薄い神気を人形に入れて実体化しました。安心してください。あ、ベアトリーチェには見つかりませんから安心してください」

『お前……、本当に何でもありだな……』


 はて?

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― 新着の感想 ―
[良い点] あ、そうか、都市や国ごと消滅すると転移できなくなるのか…もうアブゾールじゃなくてただの更地ですもんね。 ベックさんが強がりながらもめちゃくちゃ動揺してるの辛い…本当に祖父と孫みたいな関係だ…
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