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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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45話 今後のアブゾール


 はぁ……。

 本当にアブゾールは何もないところねぇ……。

 これじゃあ、若い神官達がこの国に来たがらない理由も分かるわね。


 この国には……、娯楽がないのよ。


 私は夕焼けに染まるアブゾールの町の大通りを歩く。

 あんな爺に勝手に聖女にされて、ここに来たのは別に嫌じゃないけど、正直、この国はやりすぎなのよね。


 アレ?

 あそこにいるのは……、教皇? 

 私は教皇を追いかける。そして肩を軽く叩いた。


「教皇じゃない。今、帰り?」

「ん? あぁ、これは聖女ベック様」

「やめてよ。私は聖女なんてガラじゃないわよ」

「ふふ……」


 しかし、本当にイケメンねぇ……。

 この顔で教皇をしているんだから、奥様がいなかったら、各国から婚約の要請がありそうねぇ……。そう考えたら、彼の奥様は幸せねぇ……。


「それで? 教皇が護衛を連れずに町の中を一人で歩くなんて、愛おしい奥様にそんなに早く帰りたいのかしら?」

「ははは。護衛を連れずに歩いているのは、聖女であるベック様も同じじゃないですか。それに、僕は結婚していませんよ」

「ん? でも、指輪をつけているじゃない」


 薬指の指輪は結婚指輪でしょ?

 そう教典に書いてあったけど……。

 そう聞くと、教皇は苦笑する。

 

「あぁ、僕はこう見えて、とある国の貴族でね、教皇になったとたん求婚が増えましてね。だからこうやって指輪をつけて誤魔化しているんですよ」

「へぇ……。どうしてそれを私に? 私は顔のいい男が好きだから、求婚してしまうわよ?」


 まぁ、一人の方が気楽だし、冗談だけどね。

 しかし、教皇は微笑みます。


「ははは。ベック様なら構いませんよ。どうせ本気じゃなさそうですしね。それにベック様もこれからそうなりますよ」


 あ、私の本心もバレているのね……。

 しかし、私もそうなる?


「何でよ」

「だって、アブゾル様の聖女ですよ。数百年ぶりの」


 なるほどね……。

 そういえば、私も特別な存在になったのを忘れていたわ。

 まぁ……、望んでなったわけじゃないけどね。


 そう考えたら、教皇の言う事も理解できるわね。

 私にも言い寄ってくる男でも出てくるかしら……。


 鬱陶しいわねぇ……。

 

「あはは……。本当に偽装結婚でもしましょうか……」

「そうですね……」


 私達は二人で溜息を吐きます。

 こんな時は酒場でも行きたいんだけど、この国には酒場は無いからねぇ……。

 仕方ない。

 私の秘蔵の酒でも出してあげるわ……。


 私達は大聖堂の客間でお酒を飲む事にした。

 頭の固い枢機卿が見れば怒りそうだけどね……。


 教皇は、お酒は苦手みたいで少しずつ飲んで、溜息を吐く。


「どうしたの?」

「ベック様は、このアブゾールをどう思いますか?」

「ん? どういう事?」

「この国は神聖な国とされていますが、あまりにも閉鎖的です」


 閉鎖的ねぇ……。

 確かに、この国はあまりにも他国と交友を持たなすぎるわね。


「そうね……。貴方も知っていると思うけど、熱心な信者でもない限り、若い神官の間で出世してもアブゾールに行きたくないって言っている事を。まぁ、アブゾールの神学校を出ている若い子達なら、そういうのも分かるわね」

「ベック様もそうじゃないんですか? 確か、神学校を出ていますよね?」

「あら? 私が神学校を出ているなんて、どうして知っているのかしら? でも、私はそうでもないわよ。あの爺の相手も面白いから、別に私はこの国に不満はないわよ」


 アブゾルが無駄に顔が良くて高圧的な奴だったら、アブゾル教を辞めたわね。

 

「それは意外ですね」

「そう? 割と楽しそうにしているでしょう?」


 爺をおちょくるのは楽しいからね。


 教皇は私がそう言うと、笑顔だったのが真剣な顔になった。


「ベック様。相談なのですが、アブゾールを変える為に協力していただきたいのです」

「協力? 私にできる事なんて、爺の介護くらいよ? アブゾールを変えるなんてたいそれた事は出来ないわよ?」

「いえ、貴女はアブゾル様に意見ができる。ベック様にはアブゾル様を説得して欲しいのです」

「ん? どういう事?」

「はい。アブゾールの開国に一番邪魔な存在を知っていますか?」


 一番邪魔ね……。


「それがアブゾルの爺って事?」

「違います。僕も初めてアブゾル様と会う事が出来ましたが、あの方は閉鎖的な思考ではなさそうでしたので障害にならないでしょう」


 障害って、一応あの爺ってアブゾル教の神なんだけどね……。

 こいつも結構腹黒いところがあるわねぇ……。


「じゃあ、本当の障害は枢機卿って事ね。確かに、彼は少し頭が固そうだからね」

「ははは……」

「でもね。枢機卿が反対するのもわかるわよ」

「え?」


 これは意外ね。

 教皇は、その辺りの事は考えてなかったのかしら……。


「しかし、このまま閉鎖的では……」

「まぁ、聞きなさい。この国が、今の様に閉鎖的な事が良いとまでは言わないけど、国を開いてしまうと間違いなく今までのような平和な国ではなくなってしまうでしょうね。それに、神アブゾルの加護による神聖な国というイメージが崩壊するだろうね」

「それは……」


 まぁ、それよりも深刻になるのが、今まで秘匿にしていた聖なる灰の事もバレて、魔石の流通を支配する事もできなくなるでしょうね。

 そうなったら、アブゾールの資金源も無くし、一気に崩壊に傾くかもね……。


「どちらにしても、後先考えずに私達で決められる事ではないわね……。障害とはいえ、一度枢機卿と話をする必要があるでしょうね」



 私達は、枢機卿に話をしに行く事にした。

 若干酒臭いけど大丈夫でしょう。


「それで……、お酒の匂いがするのは不問にしましょう。……で、話とは?」

「実は……」


 教皇は、アブゾールの開国の事を熱心に話す。

 しかし、枢機卿はいい顔をしない。

 まぁ、当然でしょうね。


「私は反対だ。この世界は悪意に満ちている。この国に悪意を取り込むわけにはいかない。逆に聞くけど、開国して何かメリットはあるのかい?」

「そうですね……」


 教皇は、必死に開国のメリットを話すけど、他国との交流や、人を呼ぶ。この国でも好きなものを食べられる……と、あまりにも弱すぎる事を熱心に話す。

 これは……駄目ね。


「教皇……。それでは弱いわ……」

「え?」


 教皇は、なぜ弱いと言われているか分からないようね。

 はぁ……。

 これはどっちも説得するのは大変そうね……。


 その時……。


「何を相談しておるのじゃ?」

「「アブゾル様!!」」


 私の隣に爺がいた。

 こいつ、一応神様よね……。


「案外簡単に出てくるのね……爺」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ベックさん、頭軽めのパリピ女子かと思っていたらかなり聡明でビックリしました…お仕置き目的じゃなくても、これは聖女として有能なのでは? 閉鎖的だから開放しますって、失礼ながら何にも言ってない…
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