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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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41話 死霊系の洞窟の調査


 連絡用の魔法玉が光っている……。

 誰からだ?


 オレは魔法玉に写る名を確認する。


 ……エレンか?

 アイツが魔法玉を使って来るなんて、珍しいな。


『ギルガさん。エレンです』

「あぁ。何かあったか?」


 神聖国アブゾール。

 エレン達が今いる国だ。

 エレンの過去を考えれば、あまり近づかせたくはない場所だったが、やはり何か問題があったか?


『今のところは順調だよ。ただ、ジゼルさんが怒ったのと、ジゼルさんからギルガさんに伝言があるの。それを伝えるね』

「ジゼルからだと?」


 ジゼルとはあの後何度か話をしたが、敵だったとは思えないくらいに知的で冷静だったと思ったが……そんなアイツが怒った? 何があった?


 オレは内心焦っていた。

 しかし、エレンの声には焦りはないように聞こえる。だが、あのジゼルが怒ったという事は何かがあったとみて間違いないだろう。


『うん。えっと……。今すぐに冒険者ギルドに行って、死霊系の魔物が出るっていう洞窟の調査を止めさせるよう言って欲しいんだって』

「なぜだ?」

『グランドマスターが関わっているそうだよ』

「な、なんだと!?」


 グランドマスターが関わっているかもしれないなら、レティシアやエレンに何かしらしてくるかもしれない。

 もしかして、ジゼルはそこに怒ったのか?

 彼女はグランドマスターに強い恨みを持っていると言っていたが……、おそらくはレティシアに何かあるかもしれないと怒ったのだろう……。


(忌み子ちゃんは、私が娘のようにかわいがっていた子の娘だ……。いわば孫のようなものだな……)


 あの言葉に嘘はなかったという事か……。

 ……だが。


「冒険者ギルド自体がグランドマスターの手の者のようなモノだが、それはいいのか?」

『分からないけど、ジゼルさんはそう言ってくれって言っていたよ。無理かもしれないけどお願い』


 まぁ、ジゼル(アイツ)がグランドマスターとギルドの関係を知らないわけがない……。それでも……か。


「ギルドがどういった反応をするかは分からんが、今すぐに行って要望を伝えてくる。カンダタさんがいれば、可能性はある。お前はこのまま連絡用の魔法玉を持っていてくれ」

『うん。分かった』



 エレンとの通信を切ったオレは、急いでトキエの部屋に行く。


「トキエ、今すぐ動ける奴は誰だ!?」

「え!? お父さん、どうしたの!?」

「すまん。緊急事態になるかもしれん」

「分かった。オリビアさんとビックスさんの二人は、さっき依頼から帰ってきたよ」


 ビックスも最近Aランクになり頼りになってくるようになった。

 それに、死霊系の魔物が多いのなら、レティシアに改造され、聖女の力を持つオリビアがいるのが心強い。


「そうか。もしかしたら、すぐにカアバの洞窟に調査に向かうかもしれん。疲れているだろうが、準備だけさせておいてくれ」

「お父さんは?」

「ギルドに行く用事ができた。頼んだぞ」


 

 オレは急いで冒険者ギルドに向かった。

 

 ギルドに入ったオレは、受付嬢にカンダタさんを呼び出してもらう。

 あの人は、このギルドのギルドマスターで、冒険者ギルドのシンマスターだ。あの人の権限なら……。

 それ以前に、いてくれよ……。


「カンダタさん……、いえ、シンマスターは今は不在です。何かあったんですか?」


 チッ……。

 やっぱり不在か。

 なら、ダメ元だ!!


「あぁ。少し気になる事ができた。死霊系の魔物が出るカアバの洞窟の依頼を今すぐ中止にしてくれ!!」


 俺がそう言うと、ギルドの受け付け内に変な空気が流れた。

 な、なんだ?


「……っ!? まさか、本当に止めに来るなんて……」

「どういう事だ?」

「グランドマスターから、例え誰であろうと、カアバの洞窟については言う事を聞く必要がない。と指令書がギルマス宛に来ているんです。私達としても、ギルガさん達、リーン・レイにお世話になっているので、話を聞きたいのですが……その……」


 チッ……。

 先手を打たれていたか。


「……そうか、分かった。無理を言ってすまんな」

「いえ……、こちらこそ、すいません」

「いや、お前等がグランドマスターに逆らえない事は知っている。オレも元々ギルドマスターだったからな。カアバの洞窟関連で、何かあったらすぐに連絡してくれ。オレがすぐに動く……」

「わ、分かりました」


 オレは冒険者ギルドを出る。


 やはりダメだったか……。

 しかし、グランドマスターが関わっている事は間違いない。


 オレは連絡用の魔法玉を取り出し、エレンに繋げる。


「エレン。聞こえるか?」

『あ、はい。どうでした?』

「ダメだった。すでにグランドマスターの手が回っていた」

『分かりました。ジゼルさんにそう言っておきます』

「あぁ。それと今考えたんだが、オレ達が洞窟に入ろうと思う」

『え!?』

「お前と同じ、聖女と言うクラスを持つオリビアを連れて行くから、死霊系の魔物が出て来ても問題ないだろう」

『分かった。今、レティ達が戻って来て、明日の朝には、聖水千本受け取れる事が決まったみたいだから、それを受け取ったらすぐに戻るね』

「あぁ。お前達の方も気をつけろよ」

『うん』


 聖水か……。

 レウス殿も、「聖水が足りない」と言っていたからな。千本もあればしばらくは大丈夫だろう。



 オレは拠点に帰り、ビックスとオリビアと話をする事にした。


「カアバ洞窟の調査ね……。ギルガさん。死霊系の洞窟の事は聞いているが、あの洞窟にいるのは、下級ランクの死霊だろ? 俺達が行く理由があるのか?」

「あぁ……。ジゼルの奴がグランドマスターが関わっていると言っていた」

「しかし、そのジゼルって人は元々……」

「お前の言いたい事は分かる。だが、逆に言えば、ジゼルほどグランドマスターの企みに気付く女もいない。現に、洞窟に入る事を中止させようとしたら、グランドマスターにすでに手をまわされていたからな」

「分かった。それで、俺達は何をすればいいんだ? 冒険者達を止めればいいのか?」

「いや、オレ達が洞窟に入る。オリビア、死霊系の魔物が関わっている以上、お前の魔法に頼る事になる」

「はい」

「ビックスはオリビアを守ってやってくれ」

「ギルガさんは?」

「オレには聖剣がある。これで斬れば死霊系を倒せる」


 洞窟に入る事を中止できないのであれば、オレ達が洞窟に入り、元凶を叩けばいい。

 ……そう思っていたが……。



「な、なんだと?」

「だから、今回のカアバ洞窟の調査にリーン・レイの皆さんは参加できません」


 冒険者ギルドに依頼を受けに来た俺達は、受付嬢から依頼を受けられないと、言われていた。


「どういう事だ!?」

「わ、分かりません。ただ、上からそう言う指令が下りてきているのです」


 くそっ!?

 そこまで手を回されているのか!?


「わ、分かった……。怒鳴ってしまって済まなかったな」

「い、いえ……。でも、グランドマスターはなぜこんな事を……」

「さぁな……」


 間違いなくレティシアが関わる事を防いでいるとしか思えない。

 

「チッ。後手に回っているな。ビックス、オリビア。拠点に戻るが、すぐに動けるように準備をしておいてくれ」

「あぁ……。しかし、聖水が足りなくなり、死霊系の魔物を倒すのに僧侶や治療師が駆り出されていると聞いたが、今この町はやばいかもしれないな」

「あぁ……。オレもそれを考えていた」


 今、この町は無防備に近いかもしれない。

 治療ギルドのギルマスのセラピア達は町に残っているが、浄化の魔法が使える治療師は、冒険者達が金で雇い洞窟に向かっている。僧侶も同じだ。

 そいつらがもし死んだら……。

 もしもの時に治療に回れる奴らがいなくなる。

 確かにエレンやオリビア、それにセラピアがいれば暫くは持つだろう。しかし、それも永遠じゃない……。


「とりあえず明日にはレティシア達が聖水を持ってくる。そうなればとりあえずは問題が無くなると思うが……」



 オレ達がギルドを出ようとした時、一組の冒険者達がボロボロになって帰ってきた。


「うぅ……」

「ど、どうしましたか!?」


 受付嬢が、怪我をした冒険者に近づく。


「冒険者が怪我をして帰ってきたみたいだな……」

「あぁ……」


 と、その時オリビアが一人の冒険者のうちの戦士を指差す。


「あの冒険者の一人……。アンデット化しています!!」

「な!?」


 オレはすぐに冒険者達を助けに入る。ビックスも同時に動いてくれたおかげで、アンデット化した戦士から受付嬢と冒険者を守る事が出来た。


「がぁああああ!!」

「え!?」


 アンデット化した戦士は、その場で斧を振り回す。

 その瞬間、オリビアが魔法を唱えた。


「浄化!!」


 アンデット化された戦士は、光に包まれ灰へと変わった。


 仲間の戦士がこんなことになって呆然としている冒険者から話を聞く事にした。


「おい……。仲間があんな事になって混乱しているだろうが、答えてくれ。なにがあった?」


 できるだけ、安心させるように聞く。

 こういう時、ギルドマスターをやっていた経験が生きてくれて助かる。


「ど、洞窟に入ったら……、聖水が真っ黒になったんだ。でも、手持ちの聖水がこれしかなかったから、それを魔物にかけたんだ……。そしたら魔物がパワーアップして、今の奴に噛みついたんだ」


 真っ黒な聖水?

 そういえば先日ドゥラークがそんな事を言っていたな。


「腐った聖水は死霊系の魔物を強化させる……か……」

「ギルガさん!! それは本当ですか!?」


 俺の呟きを聞いて、受付嬢が驚き声を上げる。


「あぁ……。あまりにも事例が少なすぎて、研究も進んでいないそうだが、魔物研究家の中ではその話の真偽が話題になっているとは聞いた事がある。実際に、ドゥラークも黒い聖水……腐った聖水をかけて死霊系の魔物が強化されたと言っていた」

「そ、そういえば、少し前の報告書にそんな事が書かれていた気が……」

「そうか。ドゥラークはあんな顔をして几帳面な性格だからな。ちゃんと報告書にも上げていたか。だが、今の聖水には防腐処理の魔法がしてあると聞いている。腐るなんて事があるのか?」

「わ、分からない。でも、洞窟を進んでいたら持っていた聖水全てが一気に黒くなったんだ……」


 一気に黒くなった?

 どういう事だ?


 どちらにしても異常事態だ。


「おい、洞窟の調査は止められないんなら、今日明日だけ洞窟を閉鎖してくれ」

「しかし……」

「今は聖水が足りない。レティシア達が明日、聖水を持って帰ってくる。聖水がなけりゃ探索は出来んだろ? それが理由なら問題はないはずだ」

「は、はい。サブマスターにそう言ってきます!!」

「頼んだぞ」


 これで、明日まで洞窟を閉鎖できればいいんだがな……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] グ、グラマス、そこまでしますか!?リーン・レイ閉め出しまでやったら露骨すぎて影響でないか?とか思っていたら、まさかのファンタジー世界でバイOハザード展開…機械兵といい、世界観大事にしなさい…
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