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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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30話 枢機卿の謝罪


 エレンに用がある?


 やはり、アブゾルは聖女であるエレンを手に入れようとしているという事でしょうか……。

 そんな事をさせると思いますか?


 私はカチュアさんと目で合図して、一気に殺気を放ちます。


 私達二人の殺気により、今いる部屋の空気が重くなりました。

 ギナさんとラウレンさんは殺気に慣れていないのか、顔を青褪めさせています……。

 しかし、アードフルさんは涼しい顔をしています。


 この落ち着き様……。

 まさか、これがアブゾルですか?


「ははは。できれば殺気を抑えてくれないか? 何を勘違いしているかは分からないが、私がエレン嬢に用があると言ったのは、テリトリオの件だ」


 テリトリオ?

 聞いた事のある町の名ですね。


「そんな関係の無い町の事を言われても困ります」


 私がそう言うと、アードフルさんは困った顔をしています。

 なぜでしょうか?

 私が首を傾げていると、エレンが呆れた顔で私を見ています。


「どうしました?」

「レティ、テリトリオをまた忘れたの?」

「はて?」

「テリトリオは、私達のいた町だよ」

「あぁ!!」


 思い出しましたよ。

 今はもう無くなった町でしたね。


「そのテリトリオがどうしましたか?」

「その前に、二人が放っている殺気を抑えてくれるかな?」

「いえ、それはできません。アブゾルがエレンを狙っている可能性がありますから」

「アブゾル様がエレン嬢を?」


 私は、学校で偽アブゾルに会った時の事をアードフルさんに話します。

 すると、アードフルさんが衝撃の事実を教えてくれました。


「ふむ。アブゾル様から直接聞いた話だと、アブゾル様が聖女と認定している女性は……今までなかったぞ?」

「はて?」

「そもそも、勇者と聖女がセットだと思っている連中もいるようだが、そうじゃない」

「はて? 聖女というクラスは勇者にあって初めて発現すると聞きましたが?」

「わ、私もそう教わりました。まさか、教典に誤りが!?」


 私はラウレンさんからそう聞きました。ラウレンさんもそう思っていたらしく、アードフルさんの言葉に驚いているようです。


「いや、教典に間違いはない。ただ、大司教以下はそう教わっているだろうな。この事は教皇と枢機卿しか知らない事だ。そもそも、先日、アブゾル様が正式にある女性を聖女にしたと神託があった。どうやらアブゾル様がその彼女を気に入ったようだ」

「そうなのですか?」

「あぁ……。君達も知っている女性だ」


 私も知っている?

 いったい誰の事でしょう?


 マリテさんですかね?

 しかし、マリテさんは元々聖女だった気がしますし、もしそうだとしても父親であるラウレンさんが知らないのはおかしいです。


「まぁ、彼女とはこの後に会う事になるだろうが、その前にテリトリオの事だ」


 アードフルさんはまっすぐにエレンを見ています。そして、座ったままですがエレンに頭を下げました。


「え!?」

「エレン嬢。君のご両親の事は話に聞いている。そして、その事で釈明というわけではないが、話しておきたい事がある」

「……はい」


 エレンのご両親は、テリトリオの町の領主でした。

 しかし、馬鹿な神官長と愚かな町の人間のせいで、領主達は殺されて、町は滅びました。

 まぁ、滅びた直接の原因は魔物であり、私ですけど。


「あの町の神官長……。名前も覚えていないが、アレは前教皇スーシオの息子だったんだ。だからこそ、テリトリオの町でのアレの悪行が枢機卿である私には上がってこなかった」


 はぁ、前教皇の息子だったんですか。

 だから、テリトリオの教会では発言力があり、誰も逆らえなかったのですね。


「実際に私自身がテリトリオの事を知ったのは、つい最近だったのだ」

「それはおかしくないかい?」

「ん? どういう事かな。魔導王ジゼル殿」

「前教皇を裁いたのがタロウを召喚した時期なんだろう? 神官長がエレンのご両親を殺したのは数か月前。その間は放置されていたのか?」


 ふむ。

 確かにジゼルのいう事は気になります。

 そもそも父親の不正を裁いたというのに、その子供の悪行に気付かないという事があるのでしょうか?


「いや、勘違いしないでほしいのだが、前教皇を裁いたのは、テリトリオが滅びてからだ。前教皇は狡猾な男でな。自分の不正の証拠を徹底的に隠していたのだ。だから、教皇を裁いたのも、ここ数か月の事で、テリトリオの事を知ったのも、教皇を裁いた後だった……」

「なるほど」

「だが、テリトリオで起きた事は教会の失態でもある。だから、テリトリオの領主のご息女であるエレン嬢には謝罪したいと思っていたんだ。済まなかった……」


 そう言って、アードフルさんとギナさんは頭を深く下げました。


「え? いえ、アレは神官長が自分の欲望の為に行った事というのは分かっています。だから、教会が関係あると思ってはいません」

「そう言っていただけるとありがたい……。彼の行方に関してだが……」


 アードフルさんは今でもその神官長を探しているそうですが、エレンとカチュアさんはジゼルを見ます。


「なんだい?」

「ジゼルさんは知らないの?」

「ん?」


 はて?

 そういえば、エレンとカチュアさんが……。


「大罪の一人が神官長だったと聞きましたね」

「なんだって?」

「はい? ジゼルがなぜ知らないのですか?」

「いや……。確かにエレンやカチュアに大罪を仕向けはしたが、あの時はソレーヌの人格を使ったはずだ……」

「嘘を言わないでください。あの時の大罪は神官長でしたよ。ファビエで死んだ後に貴女に救ってもらったと言っていました」

「い、いや……。そこは記憶にない。本当に私が救ったのか?」

「そう言っていましたね。ジゼル、百年以上生きているからボケましたか?」

「ふふ。カチュア……。君とは一度じっくり話をする必要があるね」

「そうですね」


 ふむ。

 カチュアさんとジゼルはとても仲がいいです。


「む……」


 言い合っているカチュアさんとジゼルを見ているとアードフルさんが何かに気付きます。

 今、一瞬だけ神気を感じました。

 もしかして神託でもおりましたか?


「テリトリオの謝罪も済んだ事だから、そろそろ祈りの間へと行くとしよう」

「祈りの間?」

「あぁ、大聖堂の一番奥にあり、その場所でアブゾル様に祈りをささげる。そうすればアブゾル様を一番近くに感じる事のできる場所なのだ」

「そこに行けばアブゾルに会えるのですか?」

「どうだろうな。しかし、至急、君達を祈りの間に連れて行くよう神託が下りた」


 私達はアードフルさんの案内で、大聖堂一番奥にある祈りの間に行く事になりました。


「ここだ。では、入るとしよう」


 大聖堂の最奥にあった質素な扉を開けると、そこにはセルカの大司教であるベックさんと、優しそうな顔をしたお爺さんが立っていました。

 このお爺さん……。教会にある神像にそっくりです。しかし、それよりも気になるのがベックさんはどうして不貞腐れた顔をしているのでしょう……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あー…聖女、うん、聖女と言っても良いでしょうね、神託受けられますし。まあ格好的には性女って感じですし気に入られているかは…(苦笑)。 そう言えば神官長、あっさり滅び去りましたが思えば味方に…
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