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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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28話 神聖国アブゾール


 私とカチュアさんが機械兵と戦ってからは、追手もなく平和な馬車の旅が続きました。

 平和な馬車の旅は退屈で、よく考えたら、ポインターナイフを使って、毎回セルカの拠点に戻ればよかったです。

 そうすれば、こんな場所で寝なくても良かったのですから……。

 そうジゼルに話したのですが、ポインターナイフの事を詳しく説明すると、あまり教会やほかのギルドの連中に見せない方がいいと言われてしまいました。


 なぜでしょう?

 

 その理由を聞きたかったのですが、ジゼルは機械兵の頭の中を興味深そうに見ていますから、邪魔はできません。

 アマツに聞きましたが、この世界には機械というのは無いそうです。

 まぁ、私からすれば機械というのは、鉄の塊です。

 アマツは機械兵が作られていた世界の事が記憶にあるそうで、ジゼルが聞いた事に一つ一つを説明していました。


 そんな平和な馬車の旅も二週間経ち、ようやくアブゾールに到着したようです。


 馬車が停まり、私達は外に出ます。

 目の前にあるのは高い壁です。その中央に大きな門があります。これがアブゾールだそうです。


「もし、アブゾールが襲われたら、逃げる事ができなくなり全滅しそうですね」


 私は高い壁を見上げながらそう言いますが、ジゼルがそれを否定してきます。


「いや、聞いた話では大丈夫だそうだよ」


 ジゼルが聞いた話によると、アブゾールにある大聖堂には各町の教会に転移する事の出来る転移魔法陣があるそうです。

 はて?

 それを使えば早くアブゾールに到着できたのでは?


 そう思って神官さんに聞いてみると、教会からの転移魔法陣は、アブゾール側が転移許可を取らないと転移できないそうなのです。

 だから、普通の信徒達や神官達は長旅をしてこのアブゾールに来るそうです。

 実のところ、今回の旅に同行してくれた神官さんも初めてアブゾールに来たそうで、これを機に数ある教会を観光してくるそうです。


 数ある教会?


「アブゾールには、教会がたくさんあるのですか?」

「はい。大きな町の教会の支部という形で、アブゾールに小さな教会があるのです。各教会の転移魔法陣は各教会にもあるそうです。こちらも特別な許可を得ないと発動できませんが……」

「という事は、セルカやファビエ王都の教会もあるという事ですか?」

「はい。セルカはありますね。ファビエ王都の教会は……、私も詳しくは聞いていませんが、数年前にとり潰しになったと聞いた事があります」

「はて?」


 数年前?

 ファビエが滅びたのは、つい最近なのですが……。


「おそらくだが、私達がタロウを召喚した時期だろうな」

「なぜです? タロウの召喚には教皇も賛成していたのでは?」

「前にも言ったが、タロウの召喚はファビエの神官長を操って行ったはずだ」

「しかし、ラウレンさんは教皇からの命令もあったと言っていましたよ」

「それはグランドマスターがラウレン殿を黙らせるために用意した嘘の情報だったはずだが……」


 あ、そうでしたっけ?

 そうなればファビエの教会がとり潰された理由が分かります。


 私達は、大門前の建物に入ります。

 普通の入国であれば、ここで手続きをすれば、信徒であれば入れるのですが、私達はアブゾル教の信徒ではありません。

 どうするのかと思っていると、見知った顔の人が部屋に入ってきました。


「ラウレンさんではないですか」

「あぁ。久しぶりだねレティシアさん。それにエレンさんとカチュアさんも……。それに魔導王ジゼルですか……」

「はじめましてではないな。ラウレン殿……」


 ラウレンさんはジゼルをジッと見ています。

 そして大きなため息を吐きました。


「なるほど。ギルガ殿から事前に聞いていましたが、確かに雰囲気が違いますね。何があったのかは知りませんが、今は客人として扱いましょう」

「ところで、どうしてラウレンさんが?」

「枢機卿であるアードフル様に、レティシアさん達の案内をするように言われたのですよ。こちらに来るのは転移魔法陣を使いました」

「そういえば、ラウレンさんは大司教でしたね」

「えぇ……。マリテの事があり、役職を返上しようとしたのですが、教皇様のギナ様に止められてしまいましてね」


 ラウレンさんは、私達に首飾りのようなものを渡してくれます。


「これは何ですか?」

「これはアブゾールへの入国証です。アブゾール内ではそれを常にかけていてください。これがないと不法入国になってしまいますから」


 なるほど。

 ラウレンさんがそう言うのであれば、常につけている事にしましょう。


 私達はラウレンさんに連れられて、教皇と枢機卿がいる大聖堂へと向かいました。

 神聖国アブゾールはアブゾル信者の国というだけあって、町の中は神官やシスターばかりでした。


「この町では、普通の商売をしている人はいないのですか?」

「普通にいますよ。信徒と言っても、神官だけではありませんから、司教以上の教会の者が、許可をすればアブゾールでも普通の職業に就く事ができるんです」

「それならば、料理屋さん等は仕入れをどうしているんですか?」

「それは、先ほどの大門の近くの建物で受け渡しをします。長旅をしてきた商人に対し失礼と思われるかもしれませんが、アブゾールの近くに小さな町もありますから、そちらで旅の疲れを癒してもらう事になります」


 ふむ。

 随分と閉鎖的な国ですね。

 しかし、当の教会がそれでいいと言っているのですから、何も文句はありませんが……。


 しばらく歩くと、前方方向に大きな教会があります。アレはどこの国の教会でしょう。


「アレが大聖堂ですよ。教皇様と枢機卿様がお待ちです」

「そうですか……」


 教会の責任者とついに対談ですか……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラウレンさんは本当に人間できてるなあ…ジゼルの側も何を言われても受け入れるつもりだったでしょうに、本当に今回の教会関係者は当り外れが大きいですね。 いよいよ物語の確信へ…何しろ前の周回との…
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