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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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16話 セルカの教会


 ギルガさんが、セルカの教会の件でカンダタさんに連絡を入れてくれた次の日の朝、私は冒険者としてのお仕事もなかったので、久しぶりに学校に行く事にしました。

 朝ご飯を食べた後、転移魔法でエラールセに行こうとしたのですが、ギルガさんに呼び止められてしまいます。


「レティシア、カンダタさんから連絡があって、明日の昼にベック司教との面会の時間が取れたそうだぞ」

「はい? 昨日、カンダタさんにお願いしたばかりなのに、随分と早く動いてくれましたね」

「あぁ。まさか、たった一日で返答がきて、司教と会う約束まで取ってくれているとは思わなかったよ」


 カンダタさんは今もセルカの町でギルドマスターをしながら、シンマスターとして働いているのですが、シンマスターのお仕事が忙しいのか、滅多にセルカに帰れなくなっているとは聞いた事があります。

 それなのに、こんなにすぐに手配をしてくれるなんて……。

 まさか、すでにグランドマスターに操られているという事でしょうか?


 ……いえ、それはないはずです。

 カンダタさんに精神干渉があった場合は、私が察知できるようにしています。だから、私が気付かないはずありません。

 そう考えれば、かなり無理をしてくれたのでしょうか?


「ギルガさん。カンダタさんに頼む時に、私の名前を出したのですか?」

「あぁ。カンダタさんは、何人もいるお前の保護者の一人だからな。お前がらみの頼みだから、早く動いてくれたんだろうな」


 はて?

 いつの間に、カンダタさんは私の保護者になったのでしょうか?


「どちらにせよ、ありがたい話です。分かりました。ジゼルには、今日の夜に話をして、明日のお昼に教会に行ってきます」

「あぁ」


 私は学校に行くのを止めて、フィーノの村に転移します。


 転移魔法陣から私が出てきたので、ジゼルは驚いていました。


「忌み子ちゃん。どうしたんだい? どちらにしても、患者がいるから、夜にもう一度来てくれないかい?」

「大丈夫ですよ。ジゼルのお仕事を見物していますね」

「見ていても、面白いモノじゃないと思うけどね……」


 ジゼルは立派でした。

 子供やお年寄りには優しく、若い男性には強く言ってでもやる気を出させたりしたり、妊娠中の女性には特に優しくしていました。


 私はたくさんの患者さんをジッと見ます。


 ふむ。

 これがジゼルの作ったという亜人さんの子孫達ですか。

 確かに皮膚には鱗がありますし、筋力も異常に発達しているみたいです。

 しかし……。

 私は特殊能力を見る目で、一人の亜人さんを見ます。


【疑似龍鱗・呪い】【異常筋肉・呪い】【遺伝の呪い】【身体強化・龍鱗・呪い】……。


 この四つですか……。

 この四つを特殊能力を破壊すれば、呪いは解けるかもしれません。これだけで呪いが解けるのであれば、簡単な話です。

 後でジゼルに話をしておきましょう。


 その日の夜。

 ジゼルの仕事が終わった後、ジゼルが作ってくれた食事を食べながら、明日の事を話します。


「カンダタ殿もシンマスターの仕事が忙しいというのに、随分と早くに行動してくれたものだね」

「はい。ギルガさんの話ではカンダタさんは私の保護者の一人だそうで、早く動いてくれたんだろうと言っていました」

「はは。忌み子ちゃんは、良いも悪いも放っておけないからね。カンダタ殿もいつまでも待たせるわけにはいかないと思ったんだろうね」


 確かに、ゆっくりと待っているのはいいのですが、あまり時間が経ちすぎて、グランドマスターに先手を打たれるのは嫌ですからね。


「話は変わりますが、この村の人達の呪いを消す事が可能かもしれませんよ。【破壊】で何とかなりそうです」

「な、なんだって?」


 先ほど見た特殊能力の事を、ジゼルに説明します。

 ジゼルはその話を聞いて、驚きこそしていましたが「そうか……。忌み子ちゃんにお願いすれば、私の役目が終わるな……」と困ったように笑います。

 はて?

 それは死ぬという事ですか?


「ダメですよ」

「何がだい?」

「役目が終わったからといって、死ぬのは駄目ですよ。もし、呪いを解く事で役目が終わるというのであれば、私は協力しませんよ。貴女が自分で【破壊】を習得してください」

「な!?」


 ジゼルに死なれても面白くないので、こんな条件を付けておきます。


「もし、死なずに私達の為に生きるというのであれば協力しますよ」

「なぜ、そこまでするんだい? 私は君達の敵だったんだよ?」

「そうですね。でも、それが何ですか? 仮に昨日敵だったとしても、もう敵対しないのであれば問題ありません」

「そんなモノかい?」

「そんなモノです。それに呪いを解けば別の問題も出るんですよ」

「別の問題?」

「はい。呪いによる亜人さんの力がこの村を守る事になっていたのですから、呪いを解いてしまえば、この村を守る者がいなくなってしまいます」


 それは当然です。

 呪いを解いたからと言って、この村の価値が無くなるわけではありません。むしろ、守るべき者がいなくなったとすれば、今まで以上に狙われる事になるでしょう。


「そ、そうか……。安易に呪いを解くわけにはいかないのか……」

「いえ、一つだけ方法がありますよ」

「そ、それは!?」

「貴女が守ればいいんです」

「私が?」


 ジゼルは魔導王です。

 しかも、魔神を一度取り込んだのであれば、きっと精神力も強くなっているはずです。

 そう考えれば、私にとっても面白いおもちゃになりそうですね……。

 それを伝えると、ジゼルは呆れていましたが、この村を守る事には同意してくれました。

 ジゼル自身が、「死なない」と言ったので、呪いを解く事には協力はします。

 ですが、それもグランドマスターとの問題が終わった後です。


 次の日。

 私達は、セルカの教会の前にいました。

 中に入ろうとすると、ジゼルに止められてしまいます。


「なんですか?」

「私が神官達の対応をするから、忌み子ちゃんはできるだけ口を挟まないでほしい」

「なぜです?」

「忌み子ちゃんは教会にあまりいい感情は持っていないだろう?」


 確かに、私は教会が嫌いです。

 ですが、時と場合を考える事くらいはできますよ。

 ……それに。


「ジゼルも勇者タロウの関係者なのですから、教会に嫌われているでしょう?」

「くく。そう考えたら、聖女であるエレンも一緒の方が良かったかもしれないね」

「そうですね」


 私達が教会に入ると、神官やシスターが一斉にこちらを見ます。

 あまり良い目ではありませんね。恨みや恐怖がこもった目です。


「……っ!? ま、魔導王、ジゼル。貴女が来るとは聞いていましたが、本当に来たのですね」


 近づいてきた神官さんが、ジゼルを見て怯えた顔になっています。


「怖がらせて済まないね。だが、今回の忌み子ちゃんのパートナーに指名されたからね。司教のベック殿との面会なのだが、大丈夫かい?」

「……はい」


 神官さんはあまり気分のよさそうな顔をしていませんでした。まぁ、当然と言えば当然でしょう。


「悪いね。君達が私に対してあまりいい感情を持っていないというのは分かっているよ。だがね……、今回は別件という事で納得してくれないかい?」

「わ、分かっています」


 私達が奥の部屋に案内されていると、見た事のあるお爺さんが声をかけてきました。


「やぁ、久しぶりですね。レティシア嬢」

「はて?」

「ほほほ、覚えていないようですな。それにそちらは勇者タロウをこの世界に解き放った魔導王ジゼルじゃありませんか。よく教会に顔を出せましたね」


 ふむ。

 早速の嫌味ですね。だから教会は嫌いなんです。

 しかし、当のジゼルは気にもしていないようです。


「確か、神官長のレウス殿と言ったかな。あぁ、そうだね。私としても教会とは二度と関わるつもりはなかったんだけどね。だけど、忌み子ちゃんがどうしても私と一緒がいいと言ってね。仕方なくだよ……」

「へぇ……。まぁ、良いです。今から司教のベックに会ってもらいますが、彼女(・・)は気難しい性格なので、ジゼル(貴女)に嫌味を言ってくるかもしれません。話を聞くのが目的なら、何を言われても腹を立てない事です」

「ふふ。それなら安心してくれ。教会の名を使って、タロウを召喚したのは事実だ。教会関係者から、何を言われても仕方がないと思っているよ。ただ、司教が忌み子ちゃんに嫌味を言った場合は、私には何もできないよ」

「ほほほ……。そ、それは……」


 ジゼルは私と敵対した事もあり、私の性格をよく知っているみたいですね。


 私達は教会の一番奥の部屋に通されました。


 この部屋にベックという人がいるんですね。

 部屋に入ると、法衣という服を着崩した若い女性が、緊張した様子で座っていました。

 そして……。

 

「は、初めまして、私がベックと言います!!」

「はて?」

「ん? 随分と聞いていた話と違うのだが?」


 私とジゼルはベックという女性の態度に、少しビックリしてしまいました。

 しかし、一番驚いていたのは、レウスさんでした。


「ほほ……?」


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