14話 鬼の呪い
予約投稿入れるの忘れてた(汗)
「俺はお前がアブゾールに行く事に反対だ」
「なぜです?」
ドゥラークさんに止められたのは、本当に意外でした……。
いつもは面倒くさそうな顔をしながらも、陰で支えてくれていたのですが……。
意味もなくドゥラークさんが反対するとは思えません。今回は理由をちゃんと聞いた方がよさそうですね。
「まず最初に言っておく事がある。レティシアではアブゾールには入れない」
「あぁ、アブゾールへはアブゾル教の信徒以外は入れないんでしたっけ?」
これは、アセールが教えてくれました。
アブゾールに入るためとはいえ、アブゾル教に入信するのも嫌ですし……。
それに……。
「お前もわかっていると思うが、入信したばかりの信徒ではアブゾールには入れない。それに、一年以上の信徒と一緒だとしても信徒以外は入る事ができないんだ。ただ、例外があるとしたら、教皇や枢機卿から呼び出しを受けた者はアブゾールに入る事ができるらしい……。この二人から呼び出されるという事はただ事ではない」
ふむ。
信徒でもない者がアブゾールに入ると、それだけで厄介ごとになりそうですね。
そういえば、アブゾールはエラールセよりも強力な強国だとも聞きました。
そう考えれば、無理に潜入してしまえば、グローリアさんやギルガさんに迷惑が掛かりますね。
しかし、何としてでもアブゾルと話をしなければ、ベアトリーチェの事は聞けません。
「困りましたね……。アブゾルとどうしても話をしたかったのですが……」
「お前は教会が嫌いだったはずだろ? どうして、アブゾルとそこまで会いたがる?」
「ベアトリーチェの事を聞こうと思いまして……。神が二人というのも詳しく聞きたいですし……」
「ちょっと待て! お前の言い方じゃ、ベアトリーチェがまだ生きているかのような言い方じゃないか!?」
そうでした。
ベアトリーチェの生死に関してはまだギルガさん達には話していませんでしたね。
とはいえ、あくまで私の推測なのですが……。
「エスペランサで戦ったグラーズとの会話から、ベアトリーチェが生きている可能性が出てきました。そして、ここからは完全な推測なのですが、ベアトリーチェとグランドマスターは同一人物とみています」
「な、なんだと!?」
私の言葉に驚愕の声を上げたのはジゼルでした。
確かにジゼルは、意識がなかったとはいえ、二人と認識のあるジゼルが驚いているのも無理がありません。
「ベアトリーチェの話はあくまで私の想像です。だからこそ、真実を知るためにアブゾールに行きたいのです。ジゼルに協力してほしいのは、アブゾールに入る方法を相談したかったんです」
「忌み子ちゃん。信徒でもない者がアブゾールに入るのは難しい……。確かにアブゾールからの要請があればギルド経由で入国する事はできる。だが、その場合はグランドマスターに直接話が来る。つまりバレてしまう。正攻法では無理だ……。仮に、侵入して、それがバレてしまえば、今後はどの国の教会にも入れなくなる。つまりは神敵になるという事だ。そうなれば、一々面倒な事になる」
面倒ですか。
もし、アブゾールで暴れでもしたら、絶対にアブゾルと会う事はできなくなるでしょう。
それは本当に困りますね。
「では、どうすればいいでしょう?」
「そうだね。まずはセルカの教会の責任者に話を聞いてみるのがいいんじゃないのかい?」
「責任者ですか……」
「ギルガ殿は、冒険者ギルドのシンマスターであるカンダタ殿とは仲がいいのだろう? それならば、シンマスターを通して、セルカの教会の責任者とアポを取ってもらえばいい。そうすれば、アブゾールに質問状を送れるかもしれない」
「質問状?」
そんな事をしていては、時間がかかってしまうではありませんか。
「忌み子ちゃん。時間がかかると思っているね。確かに一週間くらいは時間がかかるだろう。だが、質問状の内容によっては、教皇か枢機卿が質問に答えてくれるから、アブゾルの神託に辿り着くかもしれないよ。アブゾールに入れない私達からすれば、それが一番アブゾルと接触できる可能性があるんだ」
「そうですか……」
面倒ですが、そうするしかありませんね。
「分かりました。それよりも、先ほどの話なのですが、ドゥラークさんが反対の理由は入国問題に対してですよね?」
「いや、それもあったが、反対する理由はお前の体を考えているだけだ」
「私の体を?」
「あぁ、俺が知る限り、お前はグラヴィとの戦闘、グラーズとの戦闘で頭から血を噴いて倒れている。フィーノの村でも倒れていたそうじゃないか。そうだろう? ジゼル」
はて?
なぜジゼルに聞きますかね?
「あぁ、その通りだ。それと、これはリーン・レイの全員に言っておかなくてはいけない。忌み子ちゃんの怪我は、外傷ではなく、内部から血が噴き出しているような傷だった。忌み子ちゃんは危機意識能力が全くないからこそ言っておく事がある」
「言っておく事だと?」
「あぁ……。あの時、私がグランドマスターに操られたままだったなら……忌み子ちゃんを殺せていたんだ」
ジゼルがそういうと部屋の皆さんが殺気立ちます。
大丈夫ですよ。ジゼルは私を殺すつもりはありません。
「落ち着いてくれないか? 誰も忌み子ちゃんを殺そうなんて思っちゃいないよ。しかし、今後はありえない話じゃない」
ジゼルの言う事は尤もです。
そして、ジゼルは私の頭の上に視線を移します。
「毛玉殿。これがおそらく【鬼神化】の呪いなのだろう?」
『あ、あぁ……。おそらくだが間違いない』
突然私の頭の上に現れた毛玉を私は地面に叩きつけました。




