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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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8話 魔物を集める能力


 ある日、レイチェルを連れて研究所の近くの森に散歩に行った日の事だった。

 この森は、元々、弱い魔物しか生息しておらず、さらに私が結界を張っているので強力な魔物は入ってこれないはずだった。

 しかし、この日は何かが違った。


 私はレイチェルの身の安全を考慮して早めに散歩を切り上げだ。


「所長。何かありましたか?」

「あぁ、今日は魔物の活動が活発なようだ」


 結界を張っているとはいえ、確実に魔物が入ってこないとは言いきれない。

 だから、魔物に襲われるのは想定内だったのだが……。


「レイチェルは無事だったのですか!?」

「所長である私よりも、レイチェルを心配するとは君もなかなか生意気に成長したものだね……」

「はは。冗談ですよ。魔物については警備部の方に伝えておきます。人工魔物にも、森に入った魔物の排除を命じておきます」

「頼むよ……」


 魔物に襲われるのはいい。弱い魔物しかいないとはいえ、魔物の生息場所だからな……。

 しかし、あの数は異常だ。しかも、レイチェルに向かって魔物が集まろうとしていてた節がある。


 そういえば……。


 私は一か月前に研究員から気になる報告が上がっていたことを思い出す。

 

「彼がレイチェルを散歩に連れて行った時も少し強力な魔物に襲われたと言っていたな……」


 あの時はその魔物一匹だったから、それほど気にしていなかったが、魔物の生態については気になる事がある。

 強い魔物が現れると、弱い魔物は強い魔物から逃げる……。

 つまりは、その報告があった時は森に元々生息する魔物が逃げていたと考えたら……。

 私は、レイチェルの母親……、被検体十四号の能力一覧を確認する。

 被検体十四号は、アマツの能力は持っていなかったが、特別な能力を持っていた。

 それは【魔物寄せ】という能力で、ベアトリーチェが捕まえてくるまでは、被検体十四号はこの能力で魔物狩りの餌として使われていた。


 ベアトリーチェが被検体十四号を助け、周りの人間を皆殺しにしたと言っていた。

 結局、被検体十四号はこの研究所でアマツの細胞を埋め込まれ、レイチェルを産んで死んだ……。

 どちらにしても、不幸だったとしか思えないな……。


「まさかと思うが、レイチェルも【魔物寄せ】の能力を持っているのか? アマツの力は再現できなかったが、余計な能力だけは遺伝してしまった可能性はあるな」


 これは由々しき事態だ。

 私は研究員達を集めた。

 そして、研究員達にレイチェルの能力について書いたレポートを見せる。

 

「所長……。これに書いてあるのは本当なのですか?」

「分からない……。だが、今日の昼にレイチェルを散歩に連れて行った時は、魔物に何度も襲われた。私だったから魔物を返り討ちにできたが、君達ならどうなっていた事か……」


 私がそういうと、研究員達は黙ってしまう。

 いや、彼らは研究のために集められただけだからな。戦闘能力がなくても仕方がない……。

 森の弱い魔物であれば、撃退はできると思うが、森の外から来た魔物には対処できないだろう。

 それでも、防衛魔法を埋め込んだ魔導を持たせてあるので、逃げ切る事は可能だろう。

 しかし、研究員達の心配は自分達の事じゃなかった……。


「じゃあ、しばらくは散歩に連れて行ってあげれないですね……」

「レイチェル、散歩が好きだったから、悲しそうにするだろうな……」


 彼等にとって、レイチェルは娘のように思っていたのだろう……。


「あぁ、レイチェルに散歩をさせる為に、私も今日この瞬間から、【魔物寄せ】を無効化する為の研究を始める。君達も協力してほしい」

「しかし、どうやって研究すれば……」

「弱い魔物を連れてくる。能力を消せるかを研究してくれ。もしくは能力を消せたという史実がないかを徹底的に調べてくれ」

「「はい!!」」


 なんだかんだと言って、ここの研究員達はレイチェルの事をかわいがっているので、私の研究の手伝いをしてくれるだろう……。


 そう思っていた……。



 一年後。

 レイチェルの【魔物寄せ】を完全に消す事は出来なかったが、ある程度は制御できるようになっていた。

 しかし、もしもの事があるといけないので、あまり散歩には連れていけなくはなっていた。

 そんな時……。


「所長……。これを……」


 私の秘書が持ってきたのは魔術ギルドからの手紙だった。

 私は手紙を開いて絶句する。


「グランドマスターからの呼び出しか……。ベアトリーチェにも最近は連絡が取れない……。これは切られた可能性があるな……」


 グランドマスターの力は未知数だ。正直な話、勝てるかは分からない。

 いや、私もこの数年でかなり強くなった。

 仮にラロを連れてきたとしても負けやしないだろう……。


「たとえ、この研究所がなくなったとしても、レイチェルだけはどこかに避難しないとな……」


 私は秘書を呼ぶ。そして、レイチェルと研究員を数人呼んでもらった。


「君達にレイチェルを任せたい。もし、今日私が帰らなかったら、レイチェルを連れて遠くに逃げろ。その能力封じの腕輪があれば【魔物寄せ】の効果を八割がた防げるはずだ

「帰らないとは?」

「グランドマスターから呼び出しを受けた。おそらく戦闘になるだろう。帰れなかった時はそういう事だ」


 そう。

 グランドマスターとの話が決裂した場合、間違いなく殺しにかかってくる。

 だから、私も準備が必要だ。


「グランドマスターは超越者と聞きます。敵対するのは愚策では?」

「そうかもな……。だが、レイチェルや君達をグランドマスターの思い通りにはさせたくはない……。私のようにグランドマスターの為に悪事に手を染めさせたくはない」


 確かにこの研究所も最初は悪趣味な実験を繰り返してきた。しかし、今は研究内容が全く変わっている。

 グランドマスターの要望も、ベアトリーチェの注文も適当にかわしてきた。しかし、それも限界か。


「私は君達を信じている。レイチェルを頼んだよ」


 私はグランドマスターが指定した場所に転移した。

 グランドマスターが指定した場所ははるか昔に滅びた神殿跡だった……。


 こんなところで戦うとは……、悪趣味だな……。


 グランドマスターが現れるまで一時間。私は様々な罠を張り、グランドマスターが現れるのを待つ。


 しかし、いつまで待っても現れない。

 どういう事だ?


「ま、まさか!?」


 私は転移魔法を発動させようとする。しかし、発動しない。


「な、なんだと!?」


 くそっ。

 なぜ転移魔法が発動しない!?


「こうなったら……」


 私は飛翔魔法で空を飛び、研究所へ向かう。

 グランドマスターの狙いは……。


 急いで飛んで十時間。

 グランドマスターがこの場所を指定したのは、私が早く帰ってこれないようにするためだったか。


「み、皆、無事でいてくれ」



 私が研究所に辿り着いたときには、研究所は崩壊していた。何人もの研究員が死んでいた。


「こ、これは……何があった!? れ、レイチェル!? レイチェルはどこだ!!」


 私はレイチェルを探した。

 しかし、見つからない。


「くそっ。レイチェルの魔力を探るんだ……。っ!?」


 くそっ!?

 レイチェルの魔力が把握できない。


 ぐっ!?

 こ、これはあの時の……。

 い、今意識を失ったら、レイチェルを探せない……。

 あ……が……が……、た、耐え……ろ……。


 れ、レイ……チェル……。


 

 ……。

 はっ!?


「どうした? ジゼル」

「……」


 この男は誰だ?

 それにこいつ等は……。


「悪い、気分が悪い。今日は宿で休ませてもらう」

「あ? わぁったよ。今日は町で女を漁っているよ」

「ちょっと、タロウ。私がいるのに他の女を見るなんて……」


 こいつらは恋人同士なのか?

 しかし……この男、この世界の人間じゃないかもしれないな……。


 私は宿に帰り、今までの事を思い出していた……。


 くそっ。

 あれから三十年近く経っている!?

 しかもアイツが勇者だと!? ふざけるな!!

 レイチェルはどうなった!?

 

 こ……殺されたのか?

 呪い子だと? 

 レイチェルには……、娘がいるのか?


 その子まで忌み子と呼ばれて……。

 

 ……許さん。

 グランドマスターもベアトリーチェも……。


 どんな手を使ってでも、絶対殺してやる……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 間接的にですが、 レティシアはグランドマスターを助けてるんですよね。 しかもベアトリーチェはまだ存命らしい……
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