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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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6話 壊れ始める心


 ここはどこだ?

 私はどこにいるんだ?


 私の周りには何人もの人間がいる。それに私の目の前に獣人の死体が置いてあった。


 私は近くにいた男に話を聞く。


「き、君。ここはどこだ? それに今は……」

「え? 所長。何を言っているんですか? 今は……」


 しょ、所長?

 か、彼こそ何を言っているんだ?

 しかも、グランドマスターに会ってから二十年経っているだと!?

 ……うっ!?


 な、なんだ?

 頭の中に様々な記憶が……。こ、これは私の記憶なのか!?

 

 私の頭の中に流れたのは、私がSランクとして魔術ギルドに加入して、二十年の間、グランドマスターの為に様々な研究をしている記憶だった。


「な、なんだ……? 私はなぜギルドに属しているんだ?」

「ジゼル所長。何を言っているのですか? ジゼル所長は魔術ギルドのSランクじゃないですか。もう二十年もギルドの為に研究をしているでしょう?」

「あ、あぁ……」


 彼の言っている事は何も間違っていない。

 私は、魔術ギルドで様々な人体実験を繰り返してきた。

 記憶の中の私は、残酷だ……。何人殺してきたんだ?

 目の前にいる獣人もそうだ……。


「すまない。この獣人を手厚く葬ってやってくれ」


 私は近くにいた研究員にそう言うが、研究員は動かない。

 私が怪訝な顔をしていると、研究員は顔を青ざめさせる。


「どうしたんだい?」

「い、いえ……。ジゼル所長が獣人を殺して連れて帰ってきたのに、手厚く葬れとはどういう事ですか? ギルドに獣人の死体を届けるという依頼はどうするのですか?」

「……」


 獣人の死体?

 そんなモノをどうするんだ?

 私は死体をどう使うかを思い出す……。


 そうか……。

 人間に獣人の筋肉組織などを埋め込む為か……。


「私は以前に亜人を作り出した事がある。その時に獣人の死体を人間にも埋め込んだが、無意味だった。ギルドにもそう伝えておいてくれないかい?」

「え? で、でも……」


 私自身が獣人の村を襲い、村一番の強さを持った獣人を殺して持ってきた、そんな私が手厚く葬れと言っているんだ。研究員()が不思議に思うのも当然か……。

 しかし、こんな意味のない実験をしても時間の無駄だ……。研究員が動かないのであれば、私自身が獣人を葬るとしよう……。


 私は浮遊魔法で獣人の遺体を浮かび上がらせる。すると、研究員が焦りだした。


「しょ、所長? いったい何を?」

「私がこの獣人を葬るだけだよ。すべては私の責任にすればいい」

「し、しかし、それではギルドの依頼を放棄する事になりますよ!?」


 私は研究員の言葉を無視して、転移魔法で獣人の村に戻る。

 私が殺したのだが、自分の村に埋められた方がいいだろう……。

 私は土魔法で穴を掘り、そこに獣人の遺体を入れて埋める。


 しかし、あれから二十年も経った?

 精神操作か? アイツか……ん? いや、アイツとは誰だ?

 思い出せない……。

 そもそも、私はなぜギルドにいるんだ?

 私が魔導を研究していたのは……。思い出せない……。


「とりあえず、一度研究所に戻ろう……」


 私は転移魔法で研究所に戻る。

 そもそも、転移魔法を使えなかった私が、いつの間に転移魔法を覚えたんだ?


 研究所に戻ると、冒険者達が研究所に集まっていた。

 そのうちの一人が、私に近づいてくる。


「ねぇ……。貴女が魔導王ジゼルね」

「君は?」

「私は冒険者ギルドのSランク、ラロというの。魔導王ジゼル。貴女を評議会に連行させてもらうわ」

「評議会とは?」


 私の記憶にもそんな場所はない。初めて聞く単語だな……。


「ギルドの頂点であるグランドマスターの直接の部下よ。各ギルドのシンマスターと評議会のメンバーですべてのギルド運営をしているのよ」

「そんな大層な連中が、私に何か用かな?」

「貴女はギルドの依頼であった獣人の死体を勝手に持ち去った。それが理由でね、貴女を査問にかける事になった」


 査問ね……。


「断ると言ったらどうなるんだい?」

「そうね……。力づくでも連れて行く事になるわね」


 ラロという男……? は剣を構えている。冒険者ギルドのSランクと言ったな……。

 まったく隙がない……。逃げ切るのは不可能と考えた方がいいだろうな……。


「分かった……。抵抗するのは止めておくよ……」

「それが一番賢いわね」


 私はラロに連れられ、ギルドの総本山へと連れて行かれた……。そして評議会に連れて行かれて、()と会った。

 そして、私の意識は飛んだ……。



 今度は何年経った?


「……っ!?」


 私の目の前にいる女の死体……。これは……人間か?

 いや、違う。これは人間じゃない。


「こ、この女は一体?」


 ズキンっ!!


 頭が痛む。

 また何年か分の記憶が一気に流れてきた。


「さ、三十年……。そして、コレは鬼神アマツ……。連れてきたのは、ベアトリーチェか……」


 ベアトリーチェ?

 いったい誰の事だ?

 ベアトリーチェがアマツの死体を持ってきたのは確かだ……。だが、ベアトリーチェが誰かが分からない……。


 私は周りを見回す。誰もいない……。

 そうだ。

 この部屋は、私にしか入れない部屋……。

 グランドマスターに不信を持って、この部屋を作り、魔人について研究を始めた。


 そして……。ベアトリーチェは自身の部下を作るために、アマツの死体を持ってきた。

 アマツは……、神でありながら……【神殺し】というクラスで【創造】【破壊】【再生】という能力を持っていた……。

 きっとベアトリーチェはその三つの能力を持った配下が欲しかったのだろう……。

 それだけは……、思い出す事ができた……。

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