1話 償い
六章、教会編始まりです。
「魔神サタナスを復活させたね……。不完全とはいえ、この世界の理に反したのは間違いない。それは許される事ではないね」
誰だ?
いや、そもそもここはどこだ?
私は、タロウに殺されたはずだ。それなのに、私は生きているのか?
「いや、死んでいるよ。言葉を発する事ができないし、体を動かす事もできないでしょ? それが死だよ」
そうか……。
タロウのやつ、私を殺し切れたんだな。中々、やるじゃないか。
という事は、この目の前にいる少女は死神か?
「死神とは失礼だね。こう見えても神々の王なんだよ?」
神々の王?
ふふっ……。
死んだ後でも、こんな冗談を聞く事になるとはね……。
「いや、冗談じゃないんだけど……。まぁ、いいや。魔導王ジゼル。君が起こした罪は決して軽いモノじゃない。本来ならば、永遠の罰を下される。しかし、君の意志ではない事も私達は知っている」
私の意志じゃない?
いや、自分の意志だったはずだ……。
この少女は何を言って……。
私は将来……。魔法でみんなを幸せにする!!
この村に……軍隊が迫っている……。私一人じゃ守れない……。
もう人には戻れないんだよ!?
わかった……。
なんだ、この記憶は?
私は……。
「まぁ、いいよ。君にはもう少し生きてもらうよ」
……。
生きる?
なぜだ?
私は大罪人のはずだ。
「生きて、この世界で苦しむといいよ……」
苦しむ……?
「さぁ、君がどうやってこの世界で償うかは知らないけど、今度こそ自分の足で歩くんだね……」
そう言って、少女はまぶしく光り始める。
……そして……。
ん……。
ここはどこだ?
私は忌み子ちゃんに殺された後、生き返って、あの男に殺されたはずだ……。
「起きたかね?」
誰だ?
私が起き上がると、少し離れたところに白衣を着た亜人の壮年の男性が座っていた。
「貴方が助けてくれたのか?」
「あぁ……。君は、村の外れの森で倒れていた」
「村の外れ? この村の名は?」
まさかと思うが、そんなはずはない。
もし、この村があの村だったのならば、いったい誰が私をここに運んだんだ?
「この村はフィーノの村だ。君の様な綺麗な女性がなぜこんな村に?」
「やはりフィーノの村か……。なぜここにいるのかは、私はわからない。だが、一つ聞きたい事があるんだが……」
「ん? 聞きたい事?」
「あぁ……。私が誰か分かるんだろう?」
「そうだな……。爺さんに聞いていた通りの顔だからな……。帰ってきたみたいだな……魔導王ジゼル」
そう……、この村は私の故郷……。
そして、私が実験に使った村だ。
だからこそ、この村は隔離された。この村に攻め込んできた国の兵士達はこの村の住民を化け物と呼び、この村は化け物の村と呼ばれていた……。
「私を恨んでいるだろう?」
「なに?」
「貴方がいま何歳で、どういった生活をしているかは知らないが、そのような姿になった根本的な原因は私だ」
その証拠に、彼の顔は人間だが、顔に鱗がついている。確かに防御力は上がっているが、見た目は最悪だ。
「何を言っている? 貴女が私達を改造しなければ、今頃私達はこの場にいなかった。感謝こそすれど、恨むなどという事はない……。さて、まだ目が覚めたばかりで気分もよくないだろう……。ゆっくり休むといい……」
そういうと、男は外に出て行ってしまった……。
私に感謝?
あんな姿になってしまったのにか?
この村は私の罪……。
あの少女は私がどう償うかと言っていた……。
私は一晩悩んだ……。
しかし、答えは出なかった……。
次の日の朝。
男性が再び私を訪ねてきた。
「答えは出たかね?」
私は黙って首を振る。何も考えつかない。
男性はそんな私を見て、笑った。
「行くところがないのならここにいればいい。この村は君の故郷なのだろう? この村でゆっくり休めばいい。そして、ゆっくりと自分のやりたい事をやっていけばいい……」
自分のやりたい事……。
そうだな……。
私が生きていれば、いつかは忌み子ちゃんが……、いや、アレが私を殺しに来るだろう。別に生に縋るつもりはないが、生きている間は……、何ができる?
「もしやる事がないのなら、この村で医者をやってくれないか? 治療魔法を使えるのだろう?」
医者を?
この村をこんな形にした私が?
「もちろん、治療魔法と医療は違う事は知っているが治療魔法だけでも充分だ。やってくれないか?」
……。
そうだな……。
彼は治療魔法しか使えないと思っているが、私は医療も研究していた。だから、どちらの治療もできる。
こんな事で償えるとは思っていないけど、最期の時まで、医者として静かに暮らすのも悪くないかもしれないな……。
ジゼル復活ですww




