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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
5章 魔国エスペランサ編

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30話 ゴブリンキング


≪マジック視点≫


 圧倒的だ。

 ゴブリンの力を得たハヤイの動きはとんでもなく速く、俺では反応して受け流す事は可能でも、避ける事は不可能だと思う。

 しかし、ケンはハヤイの攻撃を全て見てから反応して、避けている。しかも、わずかな隙を狙い反撃をしている。


「ぐ、ぐはぁ!? な、なぜだ!? なぜ四天王になれずに逃げただけの奴が、ここまで強くなっているんだ!?」


 四天王になれずに逃げたね……。

 ケンがエスペランサ軍を辞めて、冒険者になると聞いた時、シーラが止めていなかったら、俺がケンを説得していただろう。


 ブレインは「実に勿体なかった。ケンの実力があれば、四天王筆頭になる事も可能だろう。冒険者になりたいとは聞いていたから引き止められなかったがな」と言っていた。俺も同じ気持ちだ。


 ケンが冒険者になった後も、知り合いの冒険者に様子を聞いていた。ある意味、息子の様に思っていたのかもな。

 もし、冒険者として苦労をしているようならば、連れ戻すつもりだったのは、クランヌ様にも内緒だ。

 しかし、ケンは冒険者としても、順調に地位を高めていった。


「ハヤイ。下らない力を手に入れても、お前程度を倒すのに大罪を使う必要すら無かったよ」

「ふ、ふざけるな!? 俺はエスペランサ四天王にして、ゴブリンキング・ハヤイ様だ!! キサマの様なエスペランサから逃げ出した奴に負けるはずがない!!」

「何言ってんだ? 現に負けてんじゃねぇか」


 ケンは、軽口を叩いているが、一切隙を見せていない。しかもだ……。ケンは本気を出していない。先程、アイツも言っていたが、大罪の力を使っていないのだ。


「そもそも、エスペランサから逃げたカスが、どうしてここにいるんだ!?」

「冒険者として依頼を受けたから来たに決まってんだろう。それで、今、お前と戦ってるのは、クランヌ様から依頼されたからだよ」

「ふざけ……、ぎゃあぁああ!?」


 ケンの奴、容赦が無いな。

 コレも、レティシア嬢の教育の結果か?


「お前はクランヌ様を裏切ったんだ。ここで死ね」

「や、やめろ……」


 ケンの魔剣がハヤイの胸を貫く。あの場所は心臓だ……。

 しかし、ハヤイは苦しがることはない。まさか、心臓を貫いても死なないのか?


「痛くはないが……死んでしまう。お、俺を助けろ!!」


 ハヤイの言葉で生き残ったグランドゴブリンが、ケンを襲いかかる。

 しかし、そんな事は俺達が許さない。


「はぁ!!」「うらぁ!」


 俺とレッグ殿はグランドゴブリンを斬り伏せる。


「ケン!! 雑魚は俺達に任せて、その馬鹿を倒せ!!」

「あぁ……」


 ケンはハヤイを蹴る。


「くそっ!! てめぇ、どこまでも俺の邪魔をしやがって!!」

「そうだな。そろそろ、終わらせてやるよ」

「ふざけるなぁああああ!!」



≪ハヤイ視点≫


 クソっ。

 俺は新たな力を手に入れた。

 それなのに、コイツには全く通用しない。

 グラーズが俺の部下にと置いておいてくれた、グランドゴブリンも全く役に立たない。

 どうしてこうなった!?


「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」


 俺は、グランドゴブリンの斧を拾い、ケンに斬りかかるが、全く当たらない。

 クソっ。

 俺の速さはエスペランサで一番だ!!

 それなのに、なぜ当たらないんだ!!


「お前、気付いていないのか?」

「な、なんだと!?」

「ゴブリンキングに進化した結果、肥大した筋肉でスピードが殺されているんだ。元々、お前には戦闘技術はない。だから、同じ筋肉肥大したパワーとは圧倒的に違う。それすらも分からないんだな……」

「ふざけるな!!」


 俺は力任せにケンを斬りつけるが、素手で斧を止められる。


「さて……。せめてもの慈悲だ。苦しまないように殺してやるよ」


 ケンの体からどす黒い魔力があふれ出す。

 な、なんだ? このおぞましい力は……。


「【大罪・憤怒・焼殺】」

「あ……が……は、離せ……」


 ケンが俺の首を掴む。

 く、首が熱い!?


「死ね」

「ぎゃあああああ!! 体が燃える!?」


 ケンが何をしたのかは知らんが、俺の体が燃える。

 しかし、不思議な事は熱くない。

 掴まれている首は熱いのになんだ!?


「言っただろ? 苦しまないように殺してやると」

「は、離せ……。俺を助けろぉおおおお!!」


 その時、城の瓦礫から何かが飛び出してきた。


「あ?」


 ケンもそれに気づき、飛び出してきた何かを斬ろうとするが、避けられる。

 そして、そいつはケンから俺を助け出してくれた。


 このゴブリンはなんだ?


「な、なんだ……? このゴブリンは……」


 俺を抱えるゴブリンは普通のゴブリンのような大きさだが、放つ魔力が禍々しい。


「マジック様!! レッグ!! グランドゴブリンを倒せていたら、今すぐ手助けしてくれ!!」


 え?

 な、何を言っている!?


「このゴブリン……。今までの奴とは、明らかに違う」


 そ、そうなのか?

 俺は助かるのか?


 俺を抱えたゴブリンは、ケン達には目をくれずにその場から逃げ出す。

 こ、これは空間魔法!?


「馬鹿め!! この空間はレティシアによって固定されている。逃げられ……、な、なんだと!?」


 ケンが何かを言っていたが、俺達は空間の裂け目に逃げ切る事ができた。


 俺達は、氷に覆われた大地に立っていた。そして、ゴブリンは俺を無造作に投げつけた。

 くそっ。

 もう少し、丁寧に扱え……。


「し、しかし……。助かった……」


 ゴブリンは、俺に近付く。

 な、なんだ?


「お、お前はもう要らない。ベアトリーチェ様の顔に泥を塗ったお前はもう必要ない」

「え?」


 このゴブリン……喋るのか?


「ま、待て!? 俺はベアトリーチェ様の顔に泥なんて塗っていない!?」

「だまれ……。おで、グルメだからそのままではお前は喰えない。ちゃんと調理する必要がある……」

「ちょ、ちょっと待てよ……」


 ゴブリンはどこかから出した赤い斧を振り上げる。


「粉微塵にしてから喰う事にした。じゃあな」

「や、やめて……。ぎゃ、ぎゃあああああああああああ!!」

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