19話 シーラの力
定刻投稿遅れました。申し訳ないです。
シーラさんを助けてくれ……ですか。
幼馴染の紫頭がそう言うのですから、これは、シーラさんや他の人の話も聞いた方がいいかもしれませんね。
「シーラさんは、今の能力を嫌っているのですか?」
「あぁ。あんな姿になるんだ。しかもあの姿には性別すら無くなってしまう。でも、この力が無いと、四天王ではいられないんだ」
性別すら無くなるですか……。確かに筋肉を使っていないシーラさんは程よく胸が出ていて女性らしいラインです。
そして、パワー状態のシーラさんは胸筋が大きすぎて女性らしいラインが完全に消えてしまいます。
「例え、この力を嫌っていても、この力のおかげで私はエスペランサの為に戦える。確かにブレイン様から、君の力の噂は聞いている。力を消す事ができるんだろう? でも、力を失った私には、何の価値もないんだ……」
シーラさんは四天王を続けたいみたいですね。それには理由でもあるのでしょうか?
「シーラさんはどうして四天王を辞めたくないんですか?」
「私は……」
シーラさんは紫頭をチラッと見ます。ただそれ以上は何も言わなくなりました。
どうやら辞めたくない理由に紫頭が関係しているみたいですね。
「レティシア、単刀直入に聞きたい。シーラのこの筋肉体質をどうにかする事は可能か?」
「【破壊】の力を使えば可能ですよ。でも、そうすれば、シーラさんの力はなくなってしまいます」
「そんな事は当然だろう。それで? 【創造】で何を作るんだ?」
「え? 【創造】?」
シーラさんは私の【創造】の力を知らないみたいですね。正直な話、【破壊】の力を知られていたのには驚きましたけど……。
「そうですね。まず、呪いの様な筋肉能力は完全に破壊します。その前に一つだけシーラさんにお願いがあるのですが」
「いや、消されると困るんだが……。それで、頼みとは?」
「私と一度戦ってください。確認したい事があります」
「な!? か、確認!?」
シーラさんは紫頭をジッと見ます。
「安心しろ。お前がどれだけ強くなっていたとしても、レティシアに一撃も与える事はできねぇよ。あ、勘違いするなよ。別にお前が弱いと言っているわけじゃない。俺でも一撃を与える事は無理だ。こいつが異常なだけだ」
「誰が異常ですか」
「ケンがそう言うなら……」
シーラさんは魔力を高めパワー状態になります。
ふむ。
確かに、姿が大きいので威圧感はありますが、こんなに筋肉が肥大してスピードはどうでしょう?
「シーラさん。いつでもいいですよ。遠慮なく攻撃してきてください」
「……分かった」
私はシーラさんの攻撃を避け続け、そして、五分後……。
「はぁ、はぁ……。あ、当たるどころかかすりもしない……」
シーラさんは元の姿に戻っています。
てっきり筋肉を最大限に生かした攻撃だと思っていたのですが、実に洗練された流れが奇麗な攻撃でした。
と、言う事は、シーラさんは筋肉が無くなっても、技術で戦っていけるのでは?
「レティシア。お前は筋肉の呪いがどうとか言っていたが、その中に【桃色筋肉】というのが無かったか?」
「ありますよ。これだけ筋肉の呪いを感じないです」
紫頭が重要視しているという事は、これを主体に能力を作れば、かなり強い能力になるかもしれませんね。
しかし、その前に解決するべき問題があります。
「シーラさん。クランヌさんと話がしたいのですが、可能ですか?」
「……。今は忙しいから、もしかしたらダメかもしれないが、一度掛け合ってみる。しかし、なぜだ?」
「貴女の事で相談がしたいんです。出来れば早急にお願いしたいのですが?」
「わ、分かった……」
シーラさんは再びパワーの姿に戻り、部屋を出ていきました。どうやら、お城を歩く時はあの姿じゃないとだめなのでしょう。
シーラさんの部屋には私と紫頭の二人になりました。
「レティシア。どうするつもりだ?」
「そうですね。とりあえず筋肉の呪いは全て破壊します。ただ、そうすると戦闘能力が無くなってしまいます。そうです。さっき【桃色筋肉】の事を言っていましたが、どういう意味があるんですか?」
「あぁ。俺も詳しくは知らないが、【桃色筋肉】というのは、普通の筋肉よりも優れていると聞いた。もしかしたら、それさえ残しておけば、シーラの力になるんじゃないかと思っただけだ。シーラは幼い頃は、筋肉肥大は無かったんだ。でも、常人よりも身体能力が高かった。今じゃ、筋肉肥大によって身体能力の高さは表に出なくなったがな……」
なるほど。
その力をベースにしますか。
どちらにしても、シーラさんが四天王を辞めなくていい状況を作っておかないといけません。その為にはクランヌさんと話をする必要があります。
私は紫頭と、シーラさんの力について話し合いを続けています。すると部屋の扉が開き、クランヌさんとシーラさん。それと知らない男の人が入ってきました。
クランヌさんは、疲れた顔をして私を見てため息を吐きます。
「私に話があると聞いたのだが、今はあまり面倒事は起こしたくないんだが……」
そうですか。
私、イコール、問題ごとですか。
おそらくですが、グローリアさんが余計な事を言っているのでしょう。
「面倒事という訳ではありませんが、その前にお聞きしてもいいですか?」
「なんだ?」
「そこにいる男の人は何ですか? 初めて見る人なのですが……」
「あぁ。彼が四天王の筆頭、マジックだ。名前の通り魔法のエキスパートなんだ。しかし、それ以上に彼の剣技はエスペランサ軍の中でも群を抜いて素晴らしいんだ」
確かに、一目見ただけで強者と分かります。
ハヤイは論外だとしても、パワー状態のシーラさんでもブレインと比べれば、強さが全然違いましたが、マジックという人はそれ以上です。これはグローリアさんに匹敵するのでは?
しかし、紫頭が四天王になってしまえば、きっと紫頭が筆頭になってしまいます。
「それよりも、私に何か用事があったと聞いたのだが?」
「はい。クランヌさん達はシーラさんの事を知っているのですか?」
「あぁ」
クランヌさんは一度頷いて、シーラさんの事を話し始めます。
シーラさんがパワーになるまでの話を事細かく教えてくれました。
クランヌさんも、シーラさんがこの筋肉の呪いのせいで困っているのを知っていたのでしょう。ですが、パワーの力も必要と言ったところでしょうか。
「では単刀直入に聞きます。シーラさんが筋肉の力を無くせばどうなりますか?」




