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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
5章 魔国エスペランサ編

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9話 サボるスミス


 エスペランサから帰って来た後、私は一度家に戻ります。


「少し疲れましたね。体は洗浄の魔法を使っていましたから、綺麗だと思いますが、シャワーだけ浴びておきますか」


 私はシャワーを浴びた後、聞きたい事ができたので、教会に行く事にします。


「シャワーを使う音がすると思ったら、レティ、帰ってたんだね。帰ってきているのなら、そう言ってくれたらいいのに……」

「あ、はい。ただいま戻りました」

「もう、髪の毛がちゃんと拭けてないよ。それに乾かさないと風邪ひいちゃうよ」


 エレンはタオルを持ってきて髪の毛を拭いてくれました。そして、風魔法と炎魔法を混ぜて、温風が出る魔法で髪の毛を乾かしてくれます。


「ありがとうございます。では、行ってきます」

「え? 帰って来たばかりなのに、どこに行くの?」

「教会に行こうと思っています。少し、用事があるんです」

「え!? だ、ダメだよ! 今は教会と敵対していないんだから、襲いに行っちゃダメだよ!?」

「はて? 別に襲いに行きませんよ。私はただ、聞きたい事があるだけです」

「聞きたい事?」


 私はエスペランサで出会った魔王クランヌさんやブレイン、それに門番さんの話をします。

 テリトリオ……でしたっけ? エレンの両親が領主をしていたあの町の教会は魔族を忌み嫌っていました。

 そう言えば、私の事を魔族扱いした神官もいましたね。


「アブゾル教が魔族を敵視している理由が聞きたいんです。少なくても、エスペランサの魔族を見た印象としては、敵視する必要が無いと思いましたから」

「うーん。私もテリトリオにいた時に、教会の教えやアブゾル教の歴史などを学んだんだけど、アブゾル教には魔族を敵視している表現は全くなかったよ? でも、テリトリオの神官は確かに魔族を忌み嫌っていたね。あの理由ってレティだと思うよ」

「はて? 私なのですか?」

「ほら。あの町の神官長って、レティの事をすごく嫌っていたじゃない。魔族扱いしてまで……」

「そうですね。今思い出してもムカつきます。カチュアさんとエレンがあの神官長を倒してくれたと聞きました」

「うん。カチュアさんの一撃でアッサリと消えちゃったけどね。テリトリオでは、あの神官長の権力が強かったから、下の神官達もレティを魔族扱いしていたから、魔族を嫌っていたんだと思うよ」


 なるほど。

 あの神官長ならあり得ますね。


「そうだ。レティから前に聞いていたけど、エスペランサにネリー様と一緒に行くのは三週間後だっけ?」

「はい。表向きはヘクセさんの護衛です」

「はは。ヘクセさん緊張しているだろうね」

「グローリアさんに会いに行った時、緊張していました。カチュアさんは出かけているんですか?」

「うん。今、レティの代わりにお城に行っているよ。何か、鍛冶ギルドの人が来て、お城のドワーフさんがどうとか言っていたよ。レティがいなかったから、カチュアさんが代わりに行ったの」


 鍛冶ギルドの人ですか。

 そう言えば、スミスさんの助手を鍛冶ギルドから呼ぶと言っていましたね。


「カチュアさんはまだ帰ってきていませんし、私もお城に行ってきます」

「うん。でも、もう三時間くらい経つから、そろそろ帰ってくるかもしれないよ」

「そうですか? では、待っていましょう」


≪カチュア視点≫


 レティシア様がエスペランサに行かされて三日後、私達の家に、お城から鍛冶ギルドの職員の人がやってきました。

 どうやら、鍛冶ギルドのSランクのドワーフが、五日もサボっているみたいです。


「エレン様。レティシア様がいないので、私がスミスというドワーフの鍛冶場まで行ってきます。もし、レティシア様が帰ってきたら、ドワーフの話をしておいてください」

「分かったよ。カチュアさんも気を付けてね」

「はい」


 私達の家から、お城までは意外と近いです。何度も来ているので迷う事はありません。

 お城に入ると、鍛冶ギルドの職員がドワーフの所まで案内してくれました。

 

 重厚な扉を開けると、一人のドワーフが床に座り込んでいました。あれがスミスですね。


「もし、ヒヒイロカネの盾を作れと依頼があったはずです。何をサボっているのですか?」

「……」


 ふむ。

 無視ですか。


 私は、ドワーフに近付き大きな声で呼んでみます。しかし、まったく振り向こうとしません。

 ん?

 ドワーフが何かを呟いています。

 じっと聞いてみましょう。


「……」

「……」


 鉱石の機嫌を取ろうとしているのでしょうか。鉱石をとても褒めています。何をしているのでしょう?


「何をやっているのですか?」

「……」


 無視ですか。

 一度、殴ってみましょうか。

 私が殴ろうとすると、鍛冶ギルドの職員が私を止めます。


「あ、あの……。手荒な真似は控えてくれませんか?」

「なぜですか? 話を聞いて貰えないのであれば、殴って話を聞かせるに決まっています。」

「し、しかし……。もし、殴られて腕を怪我をしてしまったら、盾が出来ないかもしれません。そうなれば……」

「確かにその通りですね。分かりました。殴るのは止めておきましょう」


 その後も、ドワーフに話しかけ続けましたが、まったく反応はありませんでした。

 三時間過ぎましたが、まったく反応してもらえませんでした。もういいです。

 今日は帰って、レティシア様が帰ってくるのを待つ事にします。


 しかし、イラージュ先生からあのドワーフは変態だと聞いていましたが、どうやら、編隊ではないみたいです。まぁ、別の意味で厄介な性格かもしれません。

 レティシア様なら、力加減の出来ない私と違い、怪我をさせずに殴る事も可能でしょう。もし、帰って来ていたら、相談してみましょう。


 家が近付いてくると、愛おしい匂いがします。レティシア様が帰ってきています。

 もう三日も会っていないので、早く会いたくて、急いで家に入りました。


≪レティシア視点≫


 私はエレンが用意してくれたご飯を食べながらカチュアさんを待ちます。

 暫く待つと、カチュアさんが嬉しそうな顔で帰ってきました。


「ただいま戻りました。レティシア様、エレン様!!」

「お帰りなさい。カチュアさん」「お帰り、カチュアさん」


 カチュアさんは、私に抱きついてきます。いつもはエレンが間に入り邪魔をしようとするのですが、今日は何も行動しません。


「お城に呼び出されたと聞きましたが、何がありました?」

「あ、はい。あのスミスというドワーフがサボっているようなので、鍛冶ギルドの連中が助けを求めてきたのです」


 カチュアさんは、鍛冶場でのスミスさんの行動を教えてくれます。

 どうやら、スミスさんがヒヒイロカネの盾を作ろうとせずに、ヒヒイロカネの前でジッとしてブツブツと何かを言っているみたいですね。

 カチュアさんが何度話し掛けても全く反応を示さなかったみたいです。


「もう五日間もヒヒイロカネの前でジッとしているそうで、話しかけても全く無視されていました」

「そんなにジッとしているのですか? サボっているみたいですね。一度、どつきに行きましょうか」

「はい。私では力加減をできないので、怪我をさせてしまいます。レティシア様に殴ってもらった方がいいです」

「分かりました、私が一度行ってみます。しかし、ヒヒイロカネの前でジッとしているとは……イラージュ先生が言うように、よほどの変態なのですね……」


 イラージュ先生から聞いていましたが、そこまで酷いのですか? これは、この件が終わったら、スミスさんとは関わらない方がいいですね。


「私もイラージュ先生からそれは聞いていましたが、今日の呟きを聞く限り、性癖ではなく、もしかしたら意味のある行動かもしれません」


 意味のある行動ですか。

 どちらにせよ、一度会いに行きましょう。


「まぁ、ヒヒイロカネの盾を作るのなら早い方がいいです。今からお城に向かいます」

「あ、グローリア様は少し忙しいそうなので、お城にいないそうです。だから、今回は直接鍛冶場に行ってください」

「分かりました」


 私は、スミスさんにやる気を出してもらうために、エラールセ城の鍛冶場へと向かいました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前作の魔族は何やかんやで尊敬できる面はありつつも戦わざるを得なかったですからね。クランヌ陛下旗下の今作の魔族の皆さんとは…現状は上手くやれそうですね。 スミスさん、これが作成スタイルなのか…
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