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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
5章 魔国エスペランサ編

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6話 恐怖のお嬢ちゃん


 わしはもう数百年生きておるが、見た目の幼いお嬢ちゃんがこんなに怖いと思ったのは初めてじゃ。

 そもそも、こんなに恐怖を覚えたのは、小娘を一度だけ怒らせた時以来じゃ。

 こ奴も、あの小娘と同じ部類の人間なのか?


「レティシア、お前の剣をスミスに見せてやってくれないか?」

「はい」


 剣じゃと?

 グローリア陛下がわしに見せろと言うくらいじゃ、恐らくはこの鉱石で出来ておるのじゃろう。

 む?

 そんな剣があるのなら、わしが作らんでも盾を作る鍛治師がいるんではないのか?

 

 お嬢ちゃんが取り出したのは、赤黒い刀身のお嬢ちゃんの身長以上の大きな剣じゃった。こんな剣をこんな幼子が扱えるのか!?

 わしは、その剣に近付きじっくり見てみる。


 む?

 刃をそこまで鋭くはないな。むしろ、刃が丸く、斬る為の剣ではないな。これは、鈍器の類か?


「やはり、あの鉱石を使っておったか」

あの鉱石(・・・・)ですか。なぜヒヒイロカネとは言わないのですか?」

「そうじゃな。お嬢ちゃんには悪いが、本物のヒヒイロカネを見たわしとしては、これを本物とは言えんのじゃ」


 これはわしのプライドの問題なのじゃが、良い例えはないかのぉ……。


「例えばじゃが、お嬢ちゃんと容姿がほぼ似た人物がいるとするじゃろう? その人物にお嬢ちゃんの名前を呼ばないじゃろう? それと同じじゃ」

「はぁ……。全く意味が分かりませんが、もういいです」

「お嬢ちゃん。もう一度この剣を見せてもらっていいか?」

「いいですよ」


 わしはお嬢ちゃんから剣を渡される。

 この剣、見た目以上に重いな。恐らくじゃが、これは聖剣の類じゃ。持ち主以外が持てば重くなるようになっているのじゃろう。

 美しい剣じゃ。装飾は全くない。これを一言で言うなら、武器以外の役割の無い武器じゃ。

 しかし……。


「実によくできておる。グローリア陛下。こんな武器を作れる鍛冶師がおるのなら、わしに盾を作らせなくてもよいじゃろう?」

「そうなのだが、それを作ったのはレティシアだ」

「なんじゃと!?」


 グローリア陛下の話では、このお嬢ちゃんには、自分の望むモノを作り出す能力があるらしい。

 そんな能力、他の国がエラールセを滅ぼしてでも欲しがるぞ!?


「やはり、ヒヒイロカネの盾は作らん方がいいんじゃないのか?」

「なに?」

「こんな盾を作ってしまえば、お嬢ちゃんの存在が世界各国に広まってしまう。グローリア陛下がこの娘を独占したいのであれば……「ちょっと待て」なんじゃ?」

「お前は何を言っているんだ?」

「なんじゃと?」

「俺がレティシアを独占? そんな事できるわけないだろうが。そんな事をしてみろ……。エラールセが滅んでしまうわ」


 陛下は何を言っておるんじゃ?

 このお嬢ちゃんを独占したら、エラールセが滅ぶ?

 ま、まさか……。すでにこのお嬢ちゃんはどこかの国の御付きなのか!?

 しかし、エラールセ以上の強国となると……。アブゾール以外に思い浮かばん……。


「安心しろ。レティシアはどこの国にも縛られないってだけだ。信じられないと思うが、こいつは一人で国程度なら簡単に滅ぼせる」

「安心してください。エラールセは住みやすいですし、リーン・レイもセルカの街を拠点にしていますから、滅ぼしませんよ」

「そうか。そう言ってくれると安心する」


 こ、この二人は何を言っておるのじゃ? 会話についていけん……。

 困惑するわしの肩をイラージュが叩く。


「慣れてね……」


 慣れろと言われても、目の前の会話は明らかに異常じゃぞ?

 しかし、イラージュはため息を吐いて、もう一度、肩を叩いてくる。

 ……。

 そうか、触れちゃいかんのだな。


 しかし、わし自身が、この鉱石に魅力を感じているのは確かじゃ。

 ヒヒイロカネとは言えんが、ヒヒイロカネの様な魅力がある。


「グローリア陛下。一つ聞いていいか?」

「なんだ?」

「盾を作った報酬は何なのじゃ? 希少な鉱石とは聞いていたが、もしかしてと思うが……」


 本来であれば、この偽物を世に出させるのは良くない。しかし、この鉱石を手に入れたいというのが本音じゃ。そのくらいこの鉱石には魅力がある。


「レティシア。報酬の為にヒヒイロカネを創造してくれるか?」

「まがい物と言われて少し腹が立ちますが、別にいいですよ。スミスさん、何か鉱石を一つ用意してくれんか?」

「む? なぜじゃ?」

「その鉱石をベースに創造しますから」


 鉱石をベースにか……。だから、

 わしは道具袋から、ミスリル原石を取り出す。

 こ奴はわしが一番大事にしている鉱石じゃ。

 人間も化粧で自分を飾る事があるじゃろう。今回の事を、わしはそれと同じじゃと考えておる。


「大事に扱うんじゃぞ」

「えい」


 おぉぉおおおい!?

 なんでいきなり地面に落とす、いや、投げつけるんじゃ!?


「あはははは。少し嫌がらせをしてやりました」

「おいおい」

「な、何て事をしよるか!?」


 わしは、大事なミスリル原石を拾い上げる。


「グローリアさん。報酬は盾を作った後です。このおかしな人が、ヒヒイロカネを持ち逃げするかもしれないですからね」

「そんな事はせんわ!」


 このお嬢ちゃんの中で、わしはどういう人間に見えているのか……。いや、わしはドワーフじゃった。

 長く生きていると、自分の種族を間違えてしまうな。


 もしかして……。


「お嬢ちゃんの小ささ、もしかして同族、ドワーフか!?」

「違いますよ。あんな小さな種族と一緒にしないでください。殺しますよ」

「お、おい。グローリア陛下。このお嬢ちゃんのわしの扱いが酷くないか!?」

「そうだな。レティシア、スミスの事はどうでもいいが、ドワーフには罪はないんだぞ。ドワーフの悪口はよせ」

「あ、そうですね。ドワーフのみなさんに失礼な事を言ってしまいました」

「そこではない!! わしの扱いじゃ!!」


 くそっ。

 ここにはわしの味方がおらん。


「イラージュ。このお嬢ちゃんは少しおかしいぞ。そもそも、グローリア陛下と親し過ぎやせんか!?」

「そこは否定しないけど、さっきも言ったけど、慣れてもらわないと困るわよ。この子からすれば、これが普通の日常なんだから……」


 何を言っておるんじゃ?

 やはりこの娘は……グローリア陛下の娘なのか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] スミスさん…グラマスすら小娘扱いする貴方でも、レティシアに関してはもう…慣れてくださいとしかいいようが(笑)。 レティシアの危険性を見抜けている辺りは流石のSランクですが、尺度の一番上がグ…
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