44話 グラヴィの最期
「レティシアぁあああああ!! 僕を馬鹿にしただけでなく、ベアトリーチェ様をも愚弄するとはぁあああああ!!」
トカゲの表情を見分ける事はできませんが、恐らく怒っているのでしょう。グラヴィは目を血走らせて私に襲いかかって来ます。
馬鹿ですねぇ……。
なんの攻撃をしようとしているかは知りませんが、ただ突進してくるだけなら、攻撃を当てるのは簡単な事です。
私は突進してくるグラヴィの鼻っ柱に、ファフニールを叩き込みます。
顔も龍鱗に覆われているので、直接ダメージは与えられないかもしれませんが、グラヴィの突進の速さと、私の斬速がぶつかれば、普通よりも威力が大きくなると思います。
余程威力が大きかったのか、グラヴィは思いっきり飛んでいきました。
今ので顔面が潰れましたかねぇ?
「くそがぁああああ!!」
あ、潰れていないみたいです。残念です。
しかし、あの速度で斬りつければ、斬れるのも期待したのですが、ファフニールではやはり斬る事はできないのでしょう。では、突き刺すのはどうでしょう?
私は起き上がろうとしたグラヴィを蹴り倒し、胸に剣を突き立てます。
「ぐぼぉおおお!!」
おや?
やはり、漆黒の龍鱗は硬いみたいですね。打撃としてのダメージを与える事はできるみたいですが、突き刺せません。
でも、私は諦めません。
私は腹部をもう一度、突き刺します。
「貫けませんから、何度も突き刺してみましょう」
「ぎゃあああああ!!」
おや?
グラヴィがダメージを受けているみたいです。
あ、そうです。ついつい忘れていました。
私はグラヴィの首を絞めます。
「あ……が……が……」
「貴方のお腹を貫けるまでにダメージが回復されるのは嫌ですから、超回復を破壊しておきましょう」
「!?」
グラヴィは少し苦しそうにしながら、必死に足掻こうとしています。
そこにベアトリーチェが、私を睨んで怒鳴ってきました。
「馬鹿め!! 神の作った力を、たかが人間風情が破壊できるとでも思っているのか!?」
「え? できないんですか?」
「できるわけないだろう!!」
そうなのでしょうか?
ベアトリーチェからすれば、私はただの人間と思っている様ですが、それは勘違いですよ。
私は【神殺し】です。【神殺し】というくらいですから、神の力をも殺せると思っていますよ。
それに、もう一つのクラスは【鬼神】だそうですよ。一応、神という言葉を使ったクラスですから、神の力を破壊できる自信があります。
「そうですか? じゃあ、試してみますか?」
私は【破壊】をグラヴィに使います。
魔力を込めると、グラヴィの中で何かが割れる音が聞こえました。
その瞬間、グラヴィの顔が青褪めた気がしました。
グラヴィは【破壊】の力を使っていましたから、グラヴィの中の【超速自然回復】が壊されたのが分かったのでしょう。
「あはははは。神の力とやらを破壊出来ましたよ。あはははは。グラヴィはもう回復しません」
「な!?」
私はグラヴィの胸を突き刺す作業を再開します。
しかし、硬いですねぇ……。
「いつまでたっても突き刺せません。ムカつきますねぇ……」
私は【身体超強化・剛】を使います。これで力だけは十倍まで上がりました。
これで突き刺せると思うのですが、それでは面白くありませんので、今度は顔面を素手で殴りましょう。
私はファフニールを一度しまって、グラヴィの顔面を殴り始めます。
あははははは。
どんどんと、グラヴィの顔が変形していきますよ。
普通の人間ならば、死んでいるくらい殴っていますが、漆黒の龍鱗のせいでなかなか死ねないようです。でも、それは仕方ありませんし、簡単に死なれても面白くありません。
しかし、グラヴィはまだ余裕ぶっているのでしょうか? 顔しか殴っていないのですから五体満足だと思うのですが逃げないのですかね?
も、もしかして、死んでしまいましたか?
死んでしまったのなら面白くありません。
あ、そうです。
まだ生きているか、腕を引き千切って確認を取ってみましょう。
「えい!」
ブチィ!!
「ぎゃあああああああ!!」
おぉ。
まだ生きていましたよ。
でも、逃げる事も無く転げまわっています。
うーん。
ゴロゴロと鬱陶しいですね。動けないようにしておきましょう。
私はグラヴィの四肢を全て引き千切りました。これでグラヴィは、もう何もできません。
いえ、まだ翼がありますから、逃げる事は可能だと思います。
まぁ、今更逃げられても困りますから、翼を潰しておきましょう。
私はファフニールを取り出し、翼に突き刺しておきます。
はて?
翼には痛覚はないのでしょうか?
痛がらないので面白くありません。
どちらにしても、もう反撃できないでしょう。そう思っていたのですが、グラヴィは口を広げてブレス攻撃をしようとしてきます。
あ、さっきも思ったのですが、口の中は龍鱗で守られていませんね。
私はグラヴィの口の中にファフニールを突き刺します。
「がっふぅううう」
「ふふふ。これで貴方は何もできなくなりました。さて、もういいですか?」
グラヴィは何を言っているんだ? という目をしていますが、意味が分かりませんか?
と、言うよりも、まだ戦えると思っているのか、目が死んでいません。まぁ、もう終わりですが……。
「もう、満足しましたか?」
ここまで言って初めて理解したみたいです。
グラヴィは暴れようとしますが、手足もないので動けません。
「さて、ベアトリーチェ。もういいですよね。これ以上はグラヴィを生かしておいたら、可哀想ですよ?」
「……」
ベアトリーチェは苦虫を噛み潰したような顔をしています。
無言という事は殺していいのでしょう。
「さて、グラヴィ。お別れの時間です」
「!?」
私はファフニールに【破壊】の力と炎魔法を纏わせます。するとグラヴィの体が激しく燃え上がり、塵となってしまいました。
「グラヴィ。貴方はしつこかったです。……さようならです」
私はベアトリーチェに向き合います。
「さて、貴方の自慢のヨルムンガンド……ぷっ。失礼。グラヴィは殺しましたよ? これで神たる貴女と戦う権利を得たわけですよね」
「そうだね……。所詮グラヴィも私の期待には答えられなかったみたいだね……」
「そうですね。まぁ、もともと貴女の無知で間違えて作られたのだから、仕方ないでしょう」
私がそう言うと、ベアトリーチェから殺気があふれます。
「さて、貴女と戦う資格を得たので答えてもらいましょう」
「何をだい?」
「先程の質問です」
「なに?」
「一つずつ答えてくださいね。まず、アブゾルが世界をどうこう言っていましたが、具体的にアブゾルが何をしたんですか? どう世界を危機に陥れているんですか?」
「ふん。勇者タロウ。それだけ言えば答えになるだろう?」
確かに、タロウを勇者にしたのはアブゾルの失策です。
でも、本当にその行動にアブゾルが関係していたんでしょうか?
「私からも聞いていいかい?」
「なんですか?」
「君はどうして世界を混乱させようとするんだい?」
「はて?」
私が混乱させようとしているのですか?
「私が混乱? 何を言っているんですか?」
「そうだね。例えばその剣。ヒヒイロカネは伝説の鉱物。簡単に作り出してはいけないんだ。それを君は簡単に作り出してしまっている」
「はぁ……? それが何か?」
「ふん。反省の色は無いという事だね……」
「反省ですか? なぜ反省を?」
「ふふふ。やはり、君をここで殺す事にするよ」
はて?
もともと貴女とは殺し合いになるのですよ。いまさら何を言っているのでしょう。
「さぁ、かかって来るといい。お前を殺して、世界を救済するとしよう」
「まだ、聞きたい事はたくさんあるのですが、まぁ、貴女が戦いたいのであれば、良いですよ」
私はファフニールを構えました。




