33話 新しい武器の構想
私の剣が魔法剣ですか?
魔法剣というのは、刃部分に魔力や属性を乗せるモノでしたっけ?
「じゃあ、私の二本の剣は魔法剣なのですか? 私は聖剣、魔剣のつもりで作ったのですが?」
「そうだな。だが、お前が俺達に作ってくれた武器にはある特徴がある。しかし、この剣にはその特徴がない」
「特徴? それは何ですか?」
「さっきのドゥラークの武器もそうだが、お前が作った武器は成長する。それも、使用者の理想通りに成長する武器だ。それと、お前の作った武器は傷ついても勝手に修復される」
「はい? でも私の武器は直っていませんよ」
「あぁ。だから、お前の剣は全く別物なんだ。俺の聖剣もそうなんだが、刃がかけても数分で修復されているんだ。折れたとしても次の日には直っているはずだ」
ふむ。
アレスさんが言う事は分かります。
確かに、私以外の人の武器が進化しているのは確かです。しかし、私の剣が魔法剣かどうかと聞かれれば、首を傾げてしまいます。
私の知っている魔法剣と言えば、冒険者になったばかりの時に受けた盗賊退治の時のボスが、魔法剣士でしたから魔法剣と言えばアレしか思い出せませんが、アレの使っていた剣と私の剣が同じですか?
いえ、いくら何でもアレと同じと言われると複雑です。
「あんなのと同じにされるとは心外です」
「おいおい。一体何と比べたんだ? そもそも、魔法剣は習得の難しい技術の一つなんだぞ」
「はて? 盗賊の頭でも使えるくらいでしたから、簡単なモノなのでしょう?」
私がそう言うと、ギルガさんも誰の事か気付いたそうで「アイツだって、Aランクだっただろう? アイツですら苦労して習得したと言っていたぞ?」と口を挟んできました。
「はて? そうでしたか? 弱すぎて覚えていませんよ」
そもそも、Aランクにも色々いるのです。
リーン・レイのみなさんのような素晴らしいAランクもいますし、あの盗賊のボスのように役に立たないAランクもいます。
私がそう言うと、アレスさんが苦笑いしています。
「ははは。リーン・レイである俺達と比べるのは酷というもんだよ。俺達はレティシア、お前に鍛えられている。だから、ここまで強くなったんだ」
「そうですか?」
「それとな。お前に一つアドバイス……。いや、お前は俺よりも強いから、アドバイスなんて必要ないと思うんだがな、一応言っておこうと思うんだ」
「はい?」
アドバイスですか。
アレスさんは勇者としても冒険者としても経験は私よりも上です。そんな人のアドバイスなら喜んで聞きますよ。
「是非とも教えてください」
「あぁ。お前は二本の剣を使っていたが、剣技は使えないよな」
「はい。ギルガさんやアレスさんのように使えません。ただ、斬るだけです」
だからこそ、ナイフで斬るのと剣で斬るのは、長さが違うだけになってしまいます。
「そう。お前の剣の振り方は、ただの力任せだ。もし、武器を変えても、お前の戦い方に支障が出ないのなら、ロブストのような槌やドゥラークの元々の武器のような斧がお前には合っていると思う。それに小型ではなく、大型の方がより似合うかもしれないな」
「似合うですか?」
「あぁ。お前は気にしているだろうが、お前は見た目が幼女だ。そんな幼女が自分よりも大きな武器を持ってみろ。相手はお前を馬鹿にして油断する。そして、それを振り回したら、相手は恐怖を感じる」
「そうですかね?」
私は大きな武器を持った私を想像します。
ふむ。
怯えた相手を痛めつけるのは楽しそうです。
それに、グラヴィの龍鱗を相手にするのなら、剣では斬れないので鈍器の方が良いのでしょうか?
あ、そう言えば……。
「ギルガさんは鉄も斬れますよね。私も斬れますが、斬った時と違い、断面も綺麗ですし……。どうしてですか?」
「ん? あぁ、さっきもアレスが言っていた通り、オレは剣技を学んでいるからな。アレスはどうかは分からないが、オレの剣技には斬鉄という技術もある。だから斬れるんだろうな。お前の場合は斬るというよりも、裂いたという表現の方が正しいかもしれんな」
「裂く……ですか」
「あぁ。それが力任せという事だな」
「なるほど……」
そう考えれば、私の武器は鈍器の方がよさそうですね。
別に斬れなくても、物理的に引き千切ればいいだけですし……。
「分かりました。私の武器を創造し直します。ありがとうございました」
私が帰ろうとすると、ドゥラークさんに呼び止められます。
「はい?」
「レティシア、結局、お前があのドラゴンと戦っていた時のあの状態は一体なんだ? なぜ頭から血を吹き出して倒れた?」
「はて?」
確か、あの時はグラヴィに攻撃が通用しない事が楽しくなってきて……。ふと、気づいたら、物凄く体が動きやすくなったんですよね。
それから、グラヴィの攻撃が物凄く遅く感じました。
「……ふむ。要するに強化の代償なんですかね? 私も無意識だったので何とも言えませんが……」
「レティ、今はどうもないの?」
「はい。別に普通ですよ。お腹が減ったくらいです」
「お腹が減ったのなら、すぐに帰ってご飯にしようね。ギルガさん、もう帰っていい?」
「あぁ……。その前にレティシア、一つだけいいか?」
「はい」
「レティシア、あまり無理をするなよ」
「え?」
「お前は今エラールセにいるが、セルカの町がお前の帰る場所なんだ。無理をするくらいなら、帰って来い。これ以上、学校に関わりたくないのなら、別にグローリア殿への義理はもう果たしているだろう?」
「はて……?」
「まぁ、今が楽しいなら止めはしないが、何かあったらオレ達を頼れって言っているんだ。分かったな」
「……」
ふむ。
今回の問題はあくまで私の問題ですし……。
「返事がないな……。分かったな」
「はい」
ギルガさんがいつになく真剣な顔をしていたので、私は素直に頷きました。




