31話 武具の進化
「うーん……」
ここは……?
この天井は……エラールセの自分の部屋です。
……はて?
私はどうして寝ているのでしょうか?
……ふむ。
少しずつ思い出していきましょう。
私はグラヴィと戦っていたはずです。
それで、攻撃が通用しないのに、ものすごくムカついたのを覚えています。そしたら、力があふれてきて……。
この後は、とても気分が良かったのを覚えています。
それと同時に、グラヴィに攻撃が通じるようになりました。
その後は自分の体がとても軽く、グラヴィの攻撃がとても遅く感じる事ができました。
今までは、理想通り動けなかったのですが、あの時は全て理想通りの動きが出来ました。
しかし、斬撃の威力に剣が耐えられず、剣が折れてしまったのを覚えています。
……。
思い出せるのはここまでですか。
「……ふむ。しかし、グラヴィはどうなったのでしょう? 殺しきったのでしょうか? そもそも、どうやって帰って来たんでしょうか? 誰かに話を聞きましょう。その前にお腹が減りましたね……」
私はベッドから降りて、身体を動かします。
はて?
なぜか全身が痛いです。なぜでしょう?
ともかく今は食事です。
食べ物を求めてキッチンに入ると、カチュアさんが掃除をしていました。
「レティシア様!? 起きられたのですか!?」
「はい。今目覚めましたよ」
私がそう答えると、カチュアさんが抱きついてきました。どうしたのでしょうか?
「何故泣いているのですか? 誰かに苛められたんですか?」
「違います。レティシア様はグラヴィと戦い、三日間ほど意識不明だったのです」
はて?
意識不明ですか?
「私は、グラヴィに負けたのですか?」
「違います。ドゥラークさんの話では、自爆に近いと言っていました」
「自爆?」
「私も詳しく分かりませんが、どうやら力を使いこなせなくて、自分の体に反動がきたんじゃないかと、ドゥラークさんは言っていました」
力を使いこなせない?
なんの事でしょうか?
「ところでエレンはどこですか?」
「はい。今はリーン・レイの拠点で会議中です」
「会議? 私も行った方がいいのですか?」
「いいえ。まだ目覚めたばかりなので、今はゆっくりしておいてください」
ふむ。
カチュアさんの気遣いは嬉しいのですが、腑に落ちない事があります。
私が意識を失ったという事は、グラヴィに負けたとも取れるのに、どうやってここに戻って来たのか。
いえ、ドゥラークさんがやけに私の状況に詳しいみたいなので、私を連れ帰ったのはドゥラークさんなのでしょう。
しかし、なぜあの場にドゥラークさんが?
「カチュアさん。ドゥラークさんはなぜあの場にいたんですか?」
「エレン様がドゥラークさんにレティシア様の加勢を頼んでいたんです。」
なるほど……。
しかし、私に何があったのでしょう?
「カチュアさん。ドゥラークさんからはどう聞いていたんですか?」
「いえ、先程話した事くらいで、それ以上の事は聞いていません」
なるほど。
となると、ドゥラークさんに直接聞いた方が良いでしょうか。
「どちらにしても、現場にいたのはドゥラークさんという事ですね」
「はい」
「カチュアさん。ドゥラークさんもギルガさんのところにいるのでしょうか?」
「そう聞いています」
「そうですか。カチュアさん、行きましょう」
「しかし、レティシア様は今起きたばかりです。もう少し休んでいただけた方が……」
「心配してくれてありがとうです。でも、休むにしても私自身がスッキリしたいので……付いて来てくれますか?」
「はい!」
私達はセルカにあるリーン・レイの拠点へと転移します。とりあえず驚かれるとあれなので、玄関に転移しておきます。
えっと……。会議室は……地下でしたね。
私が会議室の扉を開けると、ギルガさん達みなさんが集まっていました。
「え!? レティ、起きたの!?」「レティシア、お前体はどうもないのか!?」
エレンとギルガさんが私に駆け寄ってきます。そして、姫様が私を後ろから抱きしめてくれます。
「レティ……。意識が戻ってよかった」
姫様は辛そうな顔をしています。ふむ、心配させてしまいましたね。
「それで、ドゥラークさん。あの場で私に何があったんですか?」
「覚えてないのか?」
「はい。グラヴィと戦って途中から意識を失いましたので、どうやって家に帰ったのかも分からないです」
「そうか……」
ドゥラークさんは、私を連れて帰ってくれた時の事と、グラヴィとの戦闘中の事も説明してくれます。
「あの時のお前は異常だったぞ。動きはとてもじゃないが人間とは思えなかったし、身体から、大罪の様な暗い魔力があふれていた。何より異常だったのが、お前の戦い方だった」
「戦い方ですか?」
「あぁ。お前は今まで、攻撃が効かない場合などは、特殊能力や魔法を作って対処していた。でも、あの時のお前は全てが力技だった」
力技?
はて?
そう言えば、私の剣は折れてしまったのにどう戦っていたんでしょう?
すると、折れた剣の話を聞いて、アレスさんが剣を見せてくれと言ってきました。
「これです」
アレスさんは折れた二本の剣を見て、ため息を吐きます。
「そうか……。この剣もレティシアが作ったんだよな」
「はい。ヒカリはエレンをイメージして作りました。そして、ヤミは私です。ただ、初めて作った聖剣なので、未熟だと思っていますが……」
そうです。
私の剣とみなさんの武器とでは出来が違うと思います。
「いや……。そうじゃない。このヒカリという聖剣は俺達に作った聖剣とは根本的に違う」
これに反応したのは、ドゥラークさんです。
「どういう意味だ?」
「ドゥラーク、お前の斧を見せてくれないか?」
「……それはできない」
「なぜだ?」
ドゥラークさんは一つの小手を取り出します。いえ、小手というよりもガントレットと言ったところでしょうか?
このガントレットはとても強そうで、第三段階の時と同じように、緑色に光り輝いています。まるで、ドゥラークさんに作った龍斧ティアマトみたいです。
「レティシア、驚くなよ。これが龍斧ティアマトだ」
「はて? どう見ても、斧ではなく、これは小手……、いえ、ガントレットですよ」
流石に斧がガントレットになるとは思えないのですが……。
私が不思議そうに見ていると、アレスさんが呆れています。
「お前が驚いているのに驚いているんだが……。お前が作ってくれた、数々の武器は全て形を変えているのに、お前の武器だけが何も形が変わっていないんだ」
確かに、私の知る限り、カチュアさんの剣は良く大きさが変わっていますし、他の人の武器も形が変わったというのは話に聞いているので知っていますが……。なぜ私のは変わらないのでしょうか?
「この剣は聖剣じゃない。これは魔法剣の類だ……」
はて?
魔法剣ですか?




