29話 魔族化第一段階
今回は後半で残酷な表現が含まれています。お気を付けください。
「どうした!? 僕の攻撃など喰らっても、たいしたダメージじゃ無いんだろう!? 逃げてばかりとは、お前らしくもないな!」
「そうですか? 敵の攻撃を避けるのは別におかしい事ではないでしょう? それと、鬱陶しいのでいちいち【破壊】の力を込めるのは止めてくれませんか?」
グラヴィの攻撃は、一撃一撃に【破壊】の力を込められているので、もし、かすりでもすれば、何かの能力を破壊されるでしょう。
まぁ、私には【創造】と【再生】がありますので、無意味と言えば無意味なのですが……。グラヴィの思い通りになるのは気にいりませんね。
……よし。
私も同じ事をしてみましょう。
「えい!」
「チィ!?」
私の拳とグラヴィの攻撃がぶつかります。つまりは【破壊】と【破壊】のぶつかり合いです。
この場合、何が破壊されるのでしょうか?
ぶつかった瞬間、激しい衝撃波が私達を中心に発生します。
「くそっ!? やはり、化け物のような強さだな!?」
「そうですか? 私はまだ本気を出していないのですが?」
「ふん!?」
グラヴィの魔力がさらに大きくなります。
はて?
この魔力は……。
「魔神と同じ魔力ですか?」
「ほぅ……。僕の魔力を感知するか。あぁ、あの御方の話では、お前は出来損ないとはいえ、魔神を倒した事があるんだったな」
「はい?」
はて?
グラヴィは第三勢力と言っていましたが、なぜその事を知っているんですかね?
「まぁ、いい。僕の魔力を感じた事があるのなら、もう隠しておく必要はないだろう」
「はい?」
「はぁああああああ!!」
グラヴィは禍々しい魔力を放ち始めます。そして、グラヴィの体が黒く変色していきました。
「これが【魔族化・第一段階】だ。そう言えば、貴様のところにドゥラークという奴がいるらしいな。それと同じ力だ」
「同じ? 馬鹿にしないでください。ドゥラークさんはそんな汚い色になりませんよ。綺麗な緑色になるだけです」
「くくく……。そう言えば、アイツの場合は半龍化だったか……。僕の場合は完全な魔族化だ。質も格も僕の方がはるかに上だ」
魔族化?
魔族になるという形で、ドゥラークさんの【身体超強化】を再現したのですかね?
しかし……。
「一応聞いておきますが、その力は何段階あるのですか?」
「そうだな……。二段階だ」
ふむ。
ドゥラークさんよりも段階数は少ないですねぇ……。
つまり、まだ力を隠していると……。
舐めているのですね……。
そうですか……。
「貴方の気持ちは分かりました」
「なに?」
私を相手に余力を残して戦おうという事ですね。
あはははは。
少しだけ、イラっときましたよ。
後悔させるくらい、痛めつけましょうか……。
「くくく……。さぁ、絶望を与えてやろう!!」
「そうなのですか?」
私は、ヒカリとヤミを取り出します。
さて……処刑の時間です。
「さぁ、頑張ってくださいね」
「なに!?」
私はグラヴィの体を斬りつけ始めます。今は避けられるほどの速さです。
「ふんっ! その程度の速さで僕を傷付けられると思っているのか!?」
「思っていますが?」
グラヴィが無防備になったところで、腕を一本いただきます。
普通の人間よりは少し硬いみたいなのですが、まぁ、簡単に斬れました。
「くっ。しかし、僕の再生能力を舐めるな!!」
グラヴィは斬れた腕を拾い、斬り口同士を合わせます。すると、腕がつながりました。
これは便利ですね。そして、面白いです。
ならば……。
「えい!」
私は光魔法でグラヴィの太ももを撃ち抜きます。
「ぐぅ!?」
あははは。
太ももに穴が開きましたよ。どうせすぐに再生するんですよね。ならば、何度も撃ち込んでやるだけです。
「えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい、えい!!」
光魔法はグラヴィの体を貫いていきます。
すぐに穴がふさがり再生しますが、グラヴィの顔を見る限り、痛みはあるみたいですね。
「く、クソっ!?」
グラヴィは私の光魔法の速さに対応できずにいるみたいで、動けないみたいです。
当たり前ですよね。
動き難くするために、ただでさえ避けられないのに、足ばかり狙っていますから。
しかし、この戦い方は面白くありませんね。
光魔法は止めです。
魔法を撃つのを止めた私に、グラヴィはニヤケつきます。
「くくくっ。再生能力を持つ僕には、魔法攻撃は無駄と気付いたかい?」
「そうですね」
「ぐっ!?」
私はグラヴィの額を鷲掴みします。そして、そのまま地面に叩きつけます。
「ぐはぁ!?」
さて、何回くらい耐えられますかね。
私は何度も何度も地面にグラヴィを叩きつけます。
「は、離せ!?」
「分かりました」
やはり、再生能力があるのでダメージは負っていませんか……。
しかし、グラヴィの心を殺す事は可能のようです。
一度、脳を破壊してみましょうか?
「くくく……。こ、ここまで攻撃を喰らうとは思いもしなかったが、こちらはお前の攻撃ではダメージを負わない。いや、通用しない……」
「そうですね……」
ふむ。
まぁ、殺せないだけで、痛みを感じているみたいなので、どうとでもなりそうですか。
しかし、殺す事ができないとなると……封印でもしましょうか?
しかし、それでは面白くありません。
とはいえ、脳を破壊するのも面白くありません。
「さぁ、かかって来い。お前の体力はいつまで続くか楽しみだな」
「そうですね。しかし、貴方の方が持ちますか?」
「な、なに?」
「私は貴方を痛め続けますが、それに耐えられますか?」
「なに?」
今までは、殺す事だけを考えて攻撃してきましたが、ここからは拷問するつもりで攻撃していきましょう。
私はグラヴィの両腕を斬り飛ばし、腹を斬り裂き、内臓を抉り出します。
「ぎゃあああああ!!」
「どうですか? 痛いでしょうね。でも、死ねませんよね?」
そのまま左胸を二本の剣で突き刺します。
この位置は心臓があるのでしたかね?
そのまま心臓を取り出すように左斜め上に斬り上げます。剣先には血まみれの心臓が突き刺さっていました。
「死にましたか?」
「あ……が……が……」
「おや? 心臓を抉り出したのに、やはり生きているんですか? あはははは。面白い体ですねぇ……」
「ぼ、僕の……心臓を……返せ……」
返す?
あはははは。
返すわけないじゃないですか。
私は心臓を焼き尽くします。
「あ……が……。く、クソっ……。無くなった部位の再生は……時間が……」
「はて?」
何か面白い事を言っていますねぇ……。
部位を無くしてしまうと、より長く苦しめるのですねぇ……。
ついつい、楽しくなってきて、笑顔になってしまいます。
「な、何を嗤って……」
「へ? 楽しいじゃないですかぁ……。あははははははははははははは!!」
「ひ、ひぃ……。く、狂っている……」
誰が狂っているのですか?
失礼ですねぇ……。
さぁ、拷問の始まりですよ。




