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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
4章 レティシアの学校生活

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28話 グラヴィ再び


 深夜一時。

 荒いノックの音が響いています。

 

 はぁ……。

 乙女はもう寝る時間なのに、一体誰ですか?


「どちら様ですか?」

「俺だ。タロウだ。緊急事態が起きた、開けてくれ」


 タロウがどうして家に?

 それに緊急事態とは何でしょうか?


「緊急事態と言うならここで話をしてください。貴方のような下衆な男を家に入れるわけないでしょう?」

「自分の立場くらいわかっている。俺は家に入らない。ただ、怪我人がいる。重症だ。聖女であるエレンの力がいる」


 怪我人?

 誰の事ですか?

 そして、どうしてこの家に連れてきたのでしょうか?


 疑問を感じますが扉を開けると、そこには傷付いたイラージュ先生とタロウが立っていました。イラージュ先生は右腕と左足が無くなっていて、今にも死にそうです。


「イラージュ先生。何がありましたか?」

「詳しくは後で話す。今はこの大男……いや、大女の傷を癒すのが先だ!」

「分かりました」


 私はエレンにイラージュ先生の治療をお願いします。そして、タロウを家の中に入れ話を聞く事にしました。


「タロウ……。イラージュ先生をあんな目に遭わせたのは貴方ですか?」

「違う。俺はお姉さまに頼まれて、イラージュをつけていたんだ」

「なぜですか?」

「お姉さまの話ではイラージュはお前に関わっているから、命を狙われるかもしれないと危惧していた。だから、影から守ってくれと言われたんだ」


 つまり、護衛ですか。

 しかし、護衛していたにもかかわらず、イラージュ先生はこれ程の怪我を?


「貴方の怠慢ですか?」

「いや。俺もおかしな気分だったんだ。イラージュが突然立ち止まり、誰かと話をした……。それが誰かも分からなかったが、一瞬だが、お前の力と同じ力を感じた」

「私の力……。どういう事ですか?」

「あぁ……。魔神に乗っ取られた俺に使っていただろう? 俺も薄っすらと覚えているんだが、【破壊】だったか? 特殊能力を消す能力だ。それと同じような気配を感じた。そして、このままじゃイラージュの命が不味いと思い、集中してイラージュの気配と魔力を探り、助け出す事には成功したが、相手は分からなかった」

「そうですか……」


 実際にタロウは、サタナスに人格を乗っ取られていたとはいえ、【破壊】を自ら受けたタロウだからこそ、気付けたし、イラージュ先生を助けられた……という事ですか……。

 しかし、【破壊】の力を使う者ですか……。心当たりがあるとすれば……。


「グラヴィですか……」

「グラヴィ?」

「はい。学校で生徒会長をしていた人で、私とは一度戦っています。ただ、その後、学校から存在が消えた人です。やはり、生きていましたか……」

「殺したのか?」

「いえ、逃げられてしまいました」

「ほぅ。お前が敵を逃がすとは珍しいな。しかし、なぜ死んだと思っていたんだ?」

「はい。私の予想では、雇い主のグランドマスターに切られたと思い込んでいたのが、間違いでした」

「そうか……。グランドマスターが関わっているのなら、お姉さまにも報告しておくか……」


 それだけ言って、タロウは席を立ちます。


「ここにいればイラージュは安心だろう。俺は帰る……」

「そうなのですか? 正直な話、貴方の事はどうでもいいですけど、このまま外に行けば、貴方も殺されてしまうんじゃないんですか?」

「大丈夫だ。ここまで来たのも隠ぺいの魔宝玉もあるからな。それにグラヴィというのが襲ってきても、勝つ自信もあるし、もし、勝てないとしても、逃げ切る自信はあるさ……」

「そうですか」


 随分な自信家になったモノだとは思いますが、今のタロウはハッタリを言っているようには見えません。

 まぁ、帰るというならそれでもいいでしょう。


「分かりました。イラージュ先生は責任をもって匿うとしましょう……。あ、待ってください」

「なんだ?」

「貴方はファビエ城の秘宝を知っていますか?」

「あ? そういえば、ネリーに聞いた記憶があるな。確か、ヒヒイロカネの盾だったか? それがどうした?」

「ファビエ城には無かったそうなのですが、知りませんか? もしくはジゼルがその盾を持っていたとかはないですか?」

「いや、知らないな。少なくとも、俺は聖鎧を持っていたし、俺の仲間もそれぞれジゼルが用意していた武具を使っていた。前衛職だった俺達が知らないという事は、ジゼルもその盾の所在を知らなかったと思うが、そこまでは俺も分からないな」

「そうですか……」

「じゃあ、イラージュを頼むな。お姉さまにとってイラージュは仲が悪いと言っても大切な友達みたいだからな。死なれたら後味が悪い……。頼んだぞ」


 タロウはそれだけを言って帰っていきました。

 しかし、あの下衆でどうしようもなかったタロウが成長したものです。

 あのラロという人は凄いですね……。



 次の日。

 イラージュ先生が目を覚まします。


「こ、ここは? アレ? レティシアちゃん?」

「はい。イラージュ先生、昨日の出来事を覚えていますか?」

「昨日の事……」


 イラージュ先生は、頭を押さえています。


「ラロと会って……その後……。おかしいわ……。覚えていない……。どうやって帰って……。誰かに襲われて……。誰だったかしら……うっ!?」


 イラージュ先生は苦しそうにします。その姿にエレンが私を止めます。


「レティ、これ以上は駄目」

「はい。イラージュ先生、無理に思い出そうとしなくていいです。今はゆっくり休んでください」


 私はイラージュ先生をエレンに任せ、確認しに行く事にしました。


「カチュアさん。少し出てきます。イラージュ先生をお願いしますね」

「分かりました」


 私が外出しようとすると、エレンが心配そうな顔をして部屋から出てきました。


「イラージュ先生は?」

「さっき寝たよ。……どこに行くの?」

「そうですね……。決着を付けに行く……と言ったところですか?」

「決着?」

「はい。私がでていけば、間違いなく襲ってくるでしょうから……」


 グラヴィなら、邪魔な私を消しに来るはずです。

 それにグランドマスターがグラヴィを強化しているかもしれません。


「私もついていきましょうか?」

「大丈夫です。どちらにしても、私一人で行かないと、出てこないと思います」

「そうですか……」

「では、行ってきますね」

「はい」「行ってらっしゃい。怪我をしないでね」



 私は家を出て、外門を出て、何もない草原へと歩いて行きます。

 ここなら邪魔は入らないでしょう。


「いるのでしょう?」


 私がそう聞くと、空間が揺らぎ始めます。そして、見覚えのある顔が現れます。


「久しぶりだな。レティシア」

「そうですね。しかし、生きていたとはビックリですね」

「ふん。お前を殺すのは僕だ。それまでは死なない」

「それで? グランドマスターに私を殺すように言われましたか?」


 グラヴィにそう聞くと笑い始めます。

 もしかして……。


「そうだな。確かに命令はされたが、グランドマスターではない。まぁ、お前が知る必要はないがな」


 なるほど。

 グラヴィとグランドマスターはつながっていなかったという事ですか。

 という事はアブゾル? いえ、そうじゃないです。第三勢力ですか……。

 

「さて、始めようか」


 グラヴィは以前に戦った魔神と同じような魔力を放ち始めました。

 ふむ……。サタナスを超えていますね……。


「そうですね」

「僕の【破壊】でお前を消して見せる!」


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