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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
4章 レティシアの学校生活

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27話 暗躍


 私の特別授業が終わったその日の夜、イラージュの自室で話をする事にした。

 イラージュは、私からの話という事でかなり警戒しているみたいね。


「さて、仲の悪い私と話をしたいなんて、何を考えているのかしら?」

「そうね。結構重要な話になるから心して聞いて欲しいのよ」

 

 私との仲は悪いけど、だからこそ、ある意味イラージュを信用しているところがある。

 もし、イラージュがグランドマスターよりならば、この話をするのは危険だと思うけど、こいつはレティシアちゃんと仲が良いように見える……。だからこそ、それに賭けようと思っている。

 

 タロウが私達の為にお茶を淹れてくれた。そんなタロウの姿を見てイラージュは嫌な笑みを浮かべる。


「あら、ありがとう。今は違うとはいえ、噂の勇者であるタロウ様にお茶を淹れて頂けるなんて光栄ね」

「あら? それは嫌味かしら?」


 まぁ、タロウはこのくらいの嫌味は聞き流せるようになっているけどね。


「ふふっ。それよりラロ、話って何かしら? レティシアちゃんの事?」

「そうね……。その前に、この魔道具を使わせてもらうわ」


 私は隠ぺいの魔道具を砕く。

 コレのおかげで、外からは私達の話を聞く事はできなくなるわ。

 この魔道具は、どこぞの強欲な女神が開発したと言われていて、決して破る事はできないと言われているわ。

 以前に、グランドマスターで危険な実験をしたんだけど、見事に気付かれなかったわ……。


「隠ぺい? 誰に聞かれたくないのかしら?」

「グランドマスターよ。貴女だって疑っているでしょう?」

「そうね……」


 イラージュは意外そうな顔をしていたわ……。恐らく、私を疑っていたんでしょう。

 イラージュは私と同じでSランクに自力で到達した男……いえ、女……。そんな私達だからこそ、グランドマスターが胡散臭く感じてしまうのよね……。


「貴女もSランクならグランドマスターに会った事もあるでしょう? アレを前にして何を感じた?」

「そうね……。言うならば……神かしら……」

「そうよ……。アレは神の類よ」


 これは間違いないわ。

 【神の眼】を持っていれば、グランドマスターの正体が神だという事に気付く。


「という事は、グランドマスターの正体がアブゾルという事?」

「……」


 【神の眼】を持っていない者ならば、当然そう思うでしょうね……。

 確かに、グランドマスターがアブゾルならば、色々と説明がつく事がある。……でも。


「どうしたの?」

「いえ……。グランドマスターとアブゾルが同一人物というのを決めつけるのは良くないわ。それに……、私の知っているアブゾルとこの学校に現れるアブゾルの姿が完全(・・)に違うのよ……」

「なんですって? 貴方はアブゾルに会った事があるの!?」

「会った……と言っていいのかしら……。でも、私が見たアブゾルは老人だったわ。少なくとも、この学校に現れる仮面をつけた青年では無かったわ」

「そ、それって……!?」


 確かに、神ならば姿を変える事くらい簡単だと思うわ。本当はこんな不確定な情報をイラージュに教えるのは良くないけど、決めつけてしまった結果、レティシアちゃん達が不利になるかもしれないからね……。

 今後、間違いなくレティシアちゃんは……アブゾルともグランドマスターとも対峙するはずだからね……。

 

 それから一時間ほど話をして、解散する事になった。

 ……。

 別れる前にこれだけは言っておいた方がいいわね。


「イラージュ。あんたにこんな事を言うのは不本意だけど、帰り道に気を付けなさい」

「どういう意味かしら?」

「そのまんまの意味よ……。今、この学校では様々な勢力が聖女……、いえ、神の巫女であるエレンちゃんを手に入れる為に動いているわ……。イラージュ、貴女は良くも悪くもレティシアちゃんに気に入られている……。エレンちゃんを手に入れたい勢力からすれば、学校でそれなりの支持を得ているわ。それだけでも充分に貴女は邪魔になる」

「邪魔……ね」

「そう。いつ命を狙われてもおかしくないわ……。気をつける事ね……。貴女は強いと言っても私達と比べれば、少し劣るのだから……」

「……。忠告はありがたく受け取っておくわ……。じゃあ、帰るわね」


 学校から出て、イラージュを見送った後、タロウにイラージュの護衛を影から頼んでおく。

 今のイラージュよりもタロウの方が強いはずよ……。


「タロウ……。イラージュはこの先のレティシアちゃんには必要になるはずよ。隠ぺいの魔道具を使って後をつけて」

「あぁ……。自信は無いがイラージュの命だけは守ってやるよ」

「お願いね……」



≪イラージュ視点≫


 意外だった……。

 ラロはグランドマスターの犬だと思っていたのに……。正直な話、驚いたわ……。


 しかし、ラロの言葉……。私の命を狙ってくるね……。レティシアちゃんにとって私はそこまで重要ではないはず……。そんな、私なんか狙って何の意味があるのかしらね。

 ……っと。

 本当に誰か付いて来ているじゃない。

 まったく……。


「それで? 貴方は一体何者かしら?」

「お前の顔は心臓に悪い。こっちを向かなくてもいいぞ……。それに、出来れば抵抗しないで死んでくれ」

「!?」


 この声は……。

 どうしてここにいるの?


「ふーん。いきなりいなくなったと思えば、こんな闇討ちみたいな事をしているなんてね……。学校一番の優秀な生徒も堕ちたものね……」


 私は、警戒しながら振り返る。

 そこには、禍々しい魔力を放つ……グラヴィが立っていた。


「ほぅ……。僕を覚えているのか?」

「えぇ……。貴方のような性悪はそう簡単に忘れられないわ……。それで、なぜここにいるの?」

「さっきも言っただろう? 大人しく死んでくれ……」


 ふーん。

 死んでくれ……ね。


「随分と物騒な事を言うじゃない。そういえば、犯人がまるで分らない殺人があったわね。生徒達には秘匿にしてあるけど……。生徒会の子達を殺したのも貴方ね……」

「そうだ……。邪魔だったからな」

「邪魔……ね……」


 この子はグランドマスターの指示で動いているの?

 グランドマスターは学校の生徒の命を粗末に扱う事は無い……。それなのに……。

 ……!?

 グラヴィからは殺気があふれ出ている。

 ど、どちらにしても……本気のようね。


「さて、死んでもらおうか……」

「やれるものならやってみなさい」

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