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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
4章 レティシアの学校生活

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20話 タロウのお姉さま


「なに!? タロウがこの国に来ているだと!?」

「はい。前に話していた通り、タロウは見た目こそそのままですが、中身は魔神サタナスでした。しかし、昨日会ったタロウは元のタロウでした。どうやら害虫並みにしぶとかったみたいです。しかも、お姉さまという正体不明の人物がタロウの性格を去勢したようです」


 はい。

 今までのタロウは、性格も下衆でどうしようもない生物でしたが、今は少しだけまともになった気がします。嫌いなのは変わりありませんが……。


「何もされなかったの?」

「何もって、何をですか?」

「だって、勇者タロウってレティを恨んでいたでしょ?」

「そうですね。いつか復讐してやると言っていましたよ。まぁ、放置しておいても問題ないでしょう」


 今のタロウは何の能力も無いはずです。

 でも、雑魚とは言いません。むしろ、能力にかまけていた以前よりも強いかもしれませんね。

 あのタロウをここまで成長させたお姉さまとは、一体何者なのでしょうか?


≪ラロ視点≫


 私はラロ。

 マイザーでは英雄と呼ばれているわ。

 私の性別は男。だけど心は女のつもりよ。

 私のランクはSランクで、こう見えても百八十六歳。もう百五十年以上も冒険者として生きているわ。


「タロウ。買い出しご苦労様」

「あぁ……。お姉さま。買い出しの途中でレティシアと会った……」

「なんですって?」


 タロウが恨んでいるレティシア……。

 グランドマスターが寄越した情報では不完全(・・・)とはいえ、魔神と化した魔導王ジゼルを倒した幼女。

 幼女と言っても彼女もSランクだから、本当の年齢と見た目が違うのは仕方ない。だけど彼女はまだ十六歳。

 最初、あの女から、レティシアがジゼルを倒したと聞いた時は鼻で笑ったわ。

 ジゼルと言えば、百年以上魔導について研究していた私と同類だったはず。グランドマスターが作り出したSランクとはケタが違ったはずよ。


「あんた……。戦いを挑んでいないわよね」

「あぁ……。挑んでいたら、俺はここにいないさ……」

「そうね……」


 タロウは以前よりも強くなったはず。

 ……いえ、タロウが前に持っていた能力はジゼルにより強化されていた……。だから、今の方が強いという事は無いけど、それでもタロウは強くなったわ。

 レティシアが普通のSランクならば、そこそこの戦いができるでしょう。

 でもレティシアは違う。

 アレは化け物の類ね……。


「タロウ? 今は戦ってはいけないわよ」

「分かっているさ。今のアイツには勝てる気がしない……」

「そう……。今日は休んでいいわ……」

「あぁ……」


 本当に成長したモノね……。

 こんな私を一応慕ってくれているようだし、私にとってもかわいい弟分だしね……。

 しかし……グランドマスターは、何故レティシアを放置するのかしら?

 レティシアは、話を聞く限り放置すればするほど危険になっていくわ。

 まさかと思うけど、今の段階でもグランドマスターはレティシアに勝てない?

 いえ……それはないわ。

 私の【神の眼】で見る限り、あの女は神の類よ……。そしてレティシアもいずれは神の類に足を踏み込むでしょうね……。


 コンコン。


 今は夜の十時過ぎ……。

 

「こんな時間に誰かしら?」


 私が部屋を出ると誰もいずに手紙が床に置かれていた。


「指令かしら?」


 手紙には『明後日の冒険者ギルドの授業に出てくれたまえ。レティシアの弱点とエレンを手に入れる手段が欲しい。実際に彼女達と対面して何かを探って欲しい。 グランドマスター』と書かれていた。


 エレンと言えば聖女だったかしら?

 グランドマスターには【神の眼】はない。神の類だが、アレにはその力は無いはずだ……。


「グランドマスターもエレンを欲しがっているか……。それにアブゾルもエレンを欲しがっている」

「何をブツブツと言っているんだ?」

「タロウ……。今日は好きにしたらいいのよ」

「あぁ……。だから鍛練をしていたんだ。少しでもお姉さまやレティシアに近付きたいからな」

「本当に良い男になったわねぇ……。初めて会った時のように抱かせてくれないかしら?」

「……断る。お姉さまの事は尊敬しているが、俺は男だ。男に抱かれる趣味はない……」

「そう? 残念ね……。そうだ、タロウ。エレンという子を知っているかしら?」

「エレン? あぁ……。レティシアと一緒にいる女だろう? 確かテリトリオの神官が俺が勇者をしている頃に貢ごうとしていたな。だから、直接の面識はないと言った方がいいかもしれないな」

「そうなの?」

「あぁ……。あの頃の俺はジゼルが作り出した力におぼれ、女は俺の思い通りになると思い、今はもう存在しないファビエの町で好き勝手やっていたからな。いまさら反省などする気も無いが、あの頃の俺は正真正銘の屑だった……」

「ふふ……。まるで、今は屑じゃないみたいじゃない」

「ははは……。そうだったな。今も屑なのに変わりはないさ……」


 私はタロウに手紙を見せる。どう反応するかしら?


「成る程……。グランドマスターがエレンを欲しがっているんだな。これはレティシアの逆鱗に触れるかも知らないな。お姉さまはグランドマスターと共にレティシアと戦うのか? 俺は正直反対だ」

「それは何故?」

「今日レティシアと話をして実感した。アレはお姉さまの言う所の『この世の理』とやらを逸脱している。俺は生きる目標がアレに対して復讐する事だから、俺はアイツを超える為に鍛練を続けるが……おそらく無駄になるだろう。だが、お姉さまがわざわざアイツと敵対する必要はない」

「そう……? 私も強いわよ?」

「分かっているさ……。だがな、アイツは今も成長している。その意味をお姉さまが分からないはずがないだろう?」

「そうね……」


 私の直接の部下に調べさせた限り、レティシアは今でも成長している。

 全くジゼルも余計な事をしてくれたわ……。


「タロウ。明後日からギルド学校で仕事よ。明日は一日フリーにしてあげるからゆっくりしなさいな」

「あぁ……。そうさせてもらう」


 タロウは自分の部屋へと帰っていく。

 確かにタロウは罪を犯した……。被害に遭った家族はアイツが憎いでしょう……。

 でも……。


「安心しなさい。あんたは私が守ってあげるから……」


 しかし、レティシアと対峙か……。


「グランドマスターも愚かなモノね……。アレには決して手を出してはいけないのにね……」


 そう……。

 【神殺し】の本当の意味……。

 神を殺す者……という意味も当然あるけど、その本当の意味は……。


 神を殺し、神になり得るモノ……。



 さて、あの子はどういった神になるのかしらね……。

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