19話 再会
私達のやる事ですか……。
学校を破懐するのは駄目と言われましたし、一番怪しい学長を殺す……というのも却下されそうです。
そう考えたら、倒す相手はアブゾル……つまりはグランドマスターという事になります。
しかし、相手は表に出てきません。
学校で暴れれば出てくるでしょうか……。
セデルさんを送り届けた後、少し考え事があったので、エレンはカチュアさんに任せ、一人で町中を歩いていました。そんな時、ある男に目が止まりました。
なぜ、アレがここに?
そう言えば、マイザーに一時いる気配がしましたね。エラールセに来たのでしょうか……。でも、今のアイツは力もないただの魔神崩れです。
「サタナス。なぜここにいるのですか?」
サタナス。
タロウの体を乗っ取った元・魔神です。
タロウの意識は既に殺されたモノだと思いますが、振り返ったその顔は見覚えのある気に食わない目でした。
「サタナス? 誰の事だ?」
「もしかして……タロウの人格が生きていたのですか?」
「レティシア……。そう言えば学校に通っているとお姉さまが言っていたな」
お姉さま?
こいつはこんなキャラだったでしょうか……。
「どうでもいいですけど、なぜここにいるのですか? エラールセには私がいると知っていたでしょうに。わざわざ殺されに来たのですか?」
「ふん。お前にはいつか復讐してやるつもりだが、今回はお姉さまに付いてきただけだ……。お前とは会うつもりは無かった」
「そうですか。しかし、いつかと言わずにここで決着つけませんか?」
そう言ってナイフを取り出します。今のコレならば剣を使わなくても殺せるでしょう。
「ふん……。今は戦わんと言ったはずだが?」
ふむ。
初動が今までとは違いますね。
能力は何も感じませんが、技術を高めたという事でしょうか?
「そうですか。貴方はつまらなくなりましたね……。では、さようなら」
私はタロウに背を向け去ります。
襲ってきますか? いえ、殺気を感じませんね。残念です……。
「レティシア……一つだけ忠告しておく。グランドマスターを信じるな……」
「はい?」
「勘違いするな。お前を殺すのは俺だ……。お姉さまがグランドマスターを支持している事が間違いなんだ……」
お姉さまがグランドマスターを支持?
という事は……。
お姉さまというのはSランクかシンマスターのどちらかですかね。
「忠告をありがたく聞いておきます。貴方も私に復讐をするのなら、今よりも遥かに強くなってくださいね。あと、簡単に死なない事ですね……」
「ふんっ」
タロウは一切振り向かずに人混みに消えていきました。
しかし、あのタロウからは悪意を全く感じませんでした。まぁ、私個人はアイツが嫌いなので認める事はありませんが、少しだけ真人間になったかもしれませんね。
しかし、グランドマスターに気を付けろですか。
何故タロウがそんな事を言うのか不思議ですが、忠告だけは受け取るとしましょうか……。
「まぁ、良いです。タロウの言うお姉さまが何者かは知りませんが、今の私には関係ありません」
その日の夜、ギルガさん、ドゥラークさん、リディアさんの三人が話をする為に私達の家にやってきました。まぁ、やってきたと言っても転移魔法陣に乗っただけですけど……。
「レティシア、リディアに色々と頼んでいたみたいだが……、何かあったか?」
「はい。少し気になる事がありましてね。リーン・レイのみなさんのクラスとランクを知りたかったんです」
「クラスとランクを?」
「はい。先日の事なんですがエレンとカチュアさんがSランクになっていました」
「なに!? 二人共Sランクなのか!? レティシアとカチュアはともかくエレンは問題児じゃないだろう!?」
はい?
ギルガさんもいい度胸ですねぇ……。
「ギルガさんもアセールの話を聞いていたでしょう? 不老になるとSランクになると……」
よくよく考えたらその話はおかしいんですよね。
ある一定の技術とアセールは言っていましたが、それでは基準が曖昧です。それに、イラージュ先生の話ではアセールはグランドマスターにSランクにしてもらったはずです。それなのに一定の技術とは……。
「ギルガさん。私は疑問だったのですよ。そもそも冒険者カードは誰が作り出したんですか?」
「ん? グランドマスターじゃないのか?」
グランドマスターが作ったのならおかしいです。
確かにグランドマスターはカチュアさんが【神騎士】になっていたのも知っていましたし、Sランクの存在も知っていました。という事はグランドマスターがランクを作り出したと言ってもいいはずなんです。ここまでならグランドマスターが冒険者カードを作ったと言われても納得はできます。
しかし、もしグランドマスターがSランクや冒険者カードを作ったのならば、私達のように自然にSランクになっている者が現れるのはおかしくありませんか?
「リディアさん。皆さんのクラスはどうでしたか? それにSランクはいましたか?」
「Sランクはいなかったよ。あ、ネリー様もAランクになっていたよ。それとそれぞれのクラスを書き写したのがこれだよ」
手渡された紙を見てみると、それぞれのクラス……職業が書いてありました。
ふむ……。
「ギルガさん。この書かれている職業で知らないモノはありますか?」
「ん? そうだな……。サジェスの【賢者】、オレの【侍】 、ドゥラークの【龍闘士】は珍しいが聞いた事はある。後はアレスの【勇者】、マリテの【聖女】もそうだな。それ以外は特に聞いた事が無いモノはないな……」
「そうですか。リディアさん。次は私達三人のクラスを見てくれませんか?」
「うん」
リディアさんの目が優しく光ります。
リディアさんの特殊能力に【神の眼】というモノがあります。これは私が作ったモノじゃなく、リディアさんが元々持っていた特殊能力の【魔導の目】が強化されたモノでした。
この【神の眼】は人のクラスとランクを正確に読み取る事ができます。更には人の悪意を見る事ができる為、かなり貴重な特殊能力となっています。
私も真似て作ってみようと思いましたが、これも相性が悪かったのか、再現できない特殊能力の一つでした……。
「本当に三人ともSランクになっているね。アレ? エレンちゃんのクラスが聖女じゃなくなっているよ?」
「はい?」
「エレンちゃんのクラスが【聖女】から【鬼神の巫女】になっているよ。それにカチュアちゃんも【鬼神騎士】になっているし……」
はて?
カチュアさんは【神騎士】だったはずですが……。鬼? それにエレンも【鬼神の巫女】という良く分からない神の巫女さんになっていますよ?
「なに!? 二人のクラスは聞いた事がない!? もしかしてレティシアも変わっているのか!?」
「え? レティシアちゃんは……は? どういう事?」
「どうかしましたか?」
「クラスが……【神殺し】なのは一緒だけど……もう一つ追加されている……」
「つ、追加だと!? クラスは一人に対し、一つのはずだ!?」
「でも……【神殺し】の横に【鬼神】って書いてあるよ」
はて?
私が【鬼神】ですか?
ついに神を殺す者から神になってしまいました……。
全く意味が分かりませんね……。




