18話 甦生
「セデルちゃんを生き返らせるのね……。そうね。……エレンちゃん達はセデルちゃんが生き返った直後の姿を見ない方がいいと思うわ……」
「どうしてですか?」
ちゃんと視認しないと生き返ったかどうか確認できないじゃないですか。
それなのに見るな……とはなぜでしょうか?
「私も準備をするわ。少し待っていてね……」
イラージュ先生は部屋の中央部分をカーテンで囲んで見え無くします。そして服を一式そろえています。
……はて?
「エレンちゃん。この中で生き返らせる事はできる? 見えなくても大丈夫?」
「はい……。大丈夫だと思います」
エレンが甦生魔法の準備を始めます。
まずはカーテンで仕切られている場所を囲むに様に四本のナイフを突き刺しました。
そして、アレは何かの粉をナイフの外側に撒き始めます。
「エレン、それは?」
「魔石の粉だよ。これで魔力を増大させるの……」
魔力の増大ですか。エレンには無限の魔力があるのに魔力を増大させる必要があるのでしょうか。
そして、エレンは詠唱を始めます。
ふむ。
何を言っているか分かりません。この世界の言葉ではないのでしょうか?
暫くすると、エレンに金色の羽が生えました。まるで女神様みたいです。
「セデルさんの魂を補足しました。コレで甦生は可能です。肉体を……。一度、魔力に変換して再構築……。失敗。周囲の魔力を使い再生……。成功……。禁術【甦生魔法】を使用します」
エレンから膨大な魔力が発せられ、カーテンの中が光り始めます。
そして、光が止むとそこになかったはずの人間の反応が現れます。
エレンはその場で座り込みました。私達はエレンを支えようと駆け寄ります。
「甦生成功しました」
エレンは疲れ切った声でそう言うと、その場に倒れそうになります。
「エレン、大丈夫ですか?」
「うん。この魔法は膨大な魔力が必要でね……。無限の魔力でもギリギリなの……。ヨルムンちゃんのお母さんは普通に使っていたと言っていたし、これとは別モノかもしれないね……」
エレンは疲れ切っているようなので、ソファーに寝かせます。その様子を見ていたイラージュ先生が立ち上がりました。
「さて、セデルちゃんには私から説明するわ。少し待っていてね……」
イラージュ先生はそう言ってカーテンの中に入ります。
そして……。
「うわぁああああ!? い、イラージュ先生!? なんで俺は裸なんだ!?」
「それはね……ふふ。食べちゃいたいくらいねぇ……」
「な、何を言っているんだ!? 俺には嫁も子供もいるんだぞ!?」
「ふふ。冗談よ。さて、セデルちゃんの今の格好も魅力的だけど、外には女の子が三人いるのよ。まずは服を着なさい」
「わ、分かったから……イラージュ先生も出て行ってくれ」
「私はここでちゃんと見張っているわよ。良ければ手伝うわよ」
「いらねぇよ!!」
なるほど……。生き返ると裸で生き返るわけですね……。確かにエレンに男の裸などという汚らしいものを見せるわけにはいきません。カチュアさんも納得しているみたいですが、カチュアさんは私を見ています。
私ですか?
男の裸くらいで取り乱しませんよ。不快ならば潰せばいいだけですから。
何を……ですか?
分かっているでしょう?
五分ほどでイラージュ先生と男の人がカーテンから出てきました。この人がセデルさんですね。
「まずは今までの経緯と貴方のこれからを説明するわ。そこに座って」
「あぁ……」
セデルさんもなぜ自分がここにいるかが良く分かっていないようで、素直に座り話を聞こうとします。
「まずは……」
イラージュ先生はセデルさんに今までの経緯を事細かく話します。
「そうか……。お前がレティシアなんだな……」
「そうですよ。私を知っているのですか?」
「あぁ。俺が殺される直前に生徒会室で議題に上がっていたのがお前の事なんだ。生徒会の役員共はお前を問題視していたが、グラヴィだけはお前を庇っていた……。俺はその真相を聞こうとしてグラヴィに殺された……」
グラヴィが私を庇った?
彼は私を敵視していたはずです。
初めて会った時から妙な目で見ていましたし、アイツは最初から私を敵として認識していたはずです。
「どちらにしても、このままここにいても危険です。グローリアさんの下へと転移しましょう」
「レティシアちゃんは転移魔法が使えるの?」
「使えますよ」
私が魔法を使うと、一瞬で部屋の景色が変わります。ここはグローリアさんの執務室です。
「あ、貴方……」
そう言って一人の女性がセデルさんに駆け寄ります。
「ハトゥナ!?」
ハトゥナと呼ばれた女性はセデルさんに抱きつきます。どうやらこの人がセデルさんの奥さんの様です。でも、どうしてここに?
「ようやく帰って来たか」
「グローリアさん。これはどういう事なんですか?」
「セデルを生き返らせた後に家族を呼び寄せたなら、シュラークに情報が洩れるかもしれなかっただろう? だから、先に呼び出しておいた。お前はシュラークに情報が洩れるのは避けたかったんじゃないのか?」
「確かにそうですけど、なぜグローリアさんにそれが分かったのですか?」
「うん? 俺もシュラークを……ギルド学校をそこまで信じていないからな……」
「そう言えば、グローリアさんもグランドマスターを疑っていましたよね」
「あぁ。あんな胡散臭い奴を崇拝する方がおかしい。レティシア、セデル達の事は俺に任せておけ。お前等はお前等のやることに専念しろ」
私達のやる事ですか……。
そうですね……。
「学校を潰してしまいましょう」
「なんでそうなる!?」
私がそう宣言したのに、グローリアさんに頭を叩かれてしまいました。




