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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
4章 レティシアの学校生活

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7話 続・建築ギルドのお仕事


 建築現場の見学に来ていた私達は、現場監督という建築ギルドの職員さんに話を聞く事になりました。

 おや?

 私達のクラスは三十人くらいだったはずなのに、見た事のない人達もギルド職員さんの話を聞こうとしています。どういう事でしょうか?

 ナガル先生に人が増えている事を聞こうとしたのですが、現場監督さんの話が始まりそうでしたので、考えるのを止めました。



 現場監督さんの話は一時間ほどで終わりました。

 今の話を要約すると、この場での建築ギルド職員の仕事は大工さんを監視するというモノでした。

 

「ナガル先生。建築ギルドは大工さんを信頼していないんですか? それとも、ここにいる大工さんは監視されないと仕事をサボるのですか?」


 監視というのは、時に人のやる気を出させる事はできますが、そのせいでやる気を失くす人もいます。あまりにも度が過ぎた監視は仕事を遅らせる事にもなりかねないと思うのですが……。


「それは違うぞ。確かに現場監督の話を簡潔にまとめると監視になってしまうが、実際は仕事の進捗具合を確認しているんだ」

「進捗具合?」

「あぁ。普段の大工の仕事はあくまで個人の仕事だ。個人である以上、それぞれ技術も経験も人それぞれなのは分かるな。それなのに同じ仕事量を振り分け、同じ給金を払っていたらどうなる?」

「技術のある人は仕事が早く終わってしまいますし、技術の伴わない人はいつまでの時間がかかってしまいます。しかも同じ給金ならば技術のある人はやる気を失くしてしまうでしょうね」


 これは冒険者も同じです。

 単純な話、CランクのレギールとAランクのドゥラークさんに同じ依頼料、同じお仕事を依頼すれば、どちらが早く終わるかなど考えるまでもありません。

 それがレギールは雑魚魔物退治、Aランクには大型魔獣退治を同じ金額で依頼したとすれば、普通のAランクならば依頼事態を断るでしょう。うちのAランクであるドゥラークさんは引き受けてしまいそうですが……。


「そうだ。大工を招集した時点では大工個人の能力は分からない。だから、数日間仕事をさせて、ギルド職員の目で判断して給金と仕事の振り分けを考えるんだ。これが結構大変でな。現場監督に選ばれる職員は建築ギルドの中でも地位の高い者が就くんだ」

「現場監督というのはそれほど凄いのですか?」

「あぁ。例えば一つの能力が秀でた大工がいるとしよう。そいつは他の仕事は普通の大工よりも劣る。そういう場合は、現場監督がその大工に合った場所を宛がうのも現場監督の仕事だ」

「そうですか……。大変そうですね」


 監視するだけなら簡単なモノだと思ったのですが、思っているよりも大変そうです。

 生徒の中にも建築ギルド志望の方が何人かいるみたいで、私とナガルさんの会話の内容を必死にメモしていました。


 話が終わるとナガルさんは外に出ようとします。今日の授業は終わりなのでしょうか? そう思っていたのですが、ナガルさんは私達にヘルメットという頭防具を渡してきました。


「みんな、ヘルメットは被ったか? 次は現場の見学だ」

「はい? 現場は大工さんだけがいるんじゃないんですか?」

「いや。現場にも建築ギルドの職員はいる。例えばアイツ。アレは建築ギルド専属の治療師だ」


 ナガルさんが指差した先では、白衣を着た女性が怪我をしたと思われる大工さんに治療魔法を使っていました。


「凄いね。あの治療師の人……治療院にいたらかなり上位の治療師だと思うよ」

「良く気付いたな。建築ギルドに派遣される治療師はBランク以上となっている。例えば……。あんな高所の柱から落ちたらどうなると思う?」


 ナガル先生が指差した先を見ます。結構高いですね。

 しかし、あの程度の高さでしたら、多少痛い程度で済むはずです。間違えても怪我はしないはずです。

 しかし、他の生徒達は「あんな高さから落ちたら怪我では済まないぞ」と喚いていました。


「はて? みなさんはあの程度の高さで怪我をするんですか?」


 私が生徒に向かいそう言うと、ナガル先生がため息を吐きます。


「確かにお前のような特殊な人間ならば怪我はしないのかもしれないが、普通の人間があの高さから落ちたら、間違いなく怪我をする。下手をしたら死ぬ可能性だってある」

「そうなのですか? 人間は脆いですねぇ……」


 私が呆れて大工さんを見ていると、大工さんが足を滑らせ落下します。


「あ、大工さんが落ちました。助けますか?」

「いや、大丈夫だ」


 はて?

 大丈夫?

 先ほど普通の人間は死ぬと聞きましたが、嘘でしたか?

 もしかしたらナガル先生は、レギールのようなアホな生徒の為に脅しをかけたんですね。確かに、効果的かもしれません。

 私の想像通り、大工さんは地面に激突した後、何事も無かったように立ち上がり、仕事に戻ります。


「やはり、怪我をしませんでしたね。ナガル先生、嘘はいけませんよ」

「お前……。何かを勘違いしているようだが、アレは衝撃吸収の魔法を高所作業の大工にかけているんだ。だから落下しても無傷だったんだ」


 はて?

 確か……。

 

「あれ? 肉体強化魔法は他人に使う事は不可能なんじゃ……」


 流石エレンです。私と同じ疑問を持ったみたいですね。


「よく勉強しているな。その通りだ。肉体強化を他人に使う事はできない。だから、身体の周りに魔力……、魔法を纏わせているんだ。この魔法を〈緩衝魔法〉という」


 なるほど。

 この魔法は便利かもしれません。


「その〈緩衝魔法〉というのは学校で教わる事はできるのですか?」

「あぁ。建築ギルドの授業で、かなり後にはなるが〈緩衝魔法〉の習得の授業もある。使えるかどうかは別としてな」


 覚えられるならそれでいいです。

 もし、エレンやカチュアさんにその魔法を使えれば安心して戦えます。


「さて、次に行くぞ」


 次に案内されたのは、大きな木の柱が何本も置いてある資材置き場という場所でした。

 大工さんは重そうな柱を片手で持ち上げています。これは正直凄いです。私でも片手でひょいっと持てるか分かりません。

 これには他の生徒も驚いている様です。一人の生徒が感心しながら大工さんを見て呟きます。


「大工というのは凄いな。あの大きな柱も片手で持っている」

「アレにも魔法をかけている」

「魔法を?」

「そうだ。今度は柱に〈軽量化〉の魔法をかけているんだ。あの魔法は物質を一時的に軽くするんだ。便利な魔法だが、習得難易度が高い。だから、建築ギルドの中でも上位の職員にしか使えない。とはいえ、個人経営している凄腕の大工はこの魔法を習得している」


 そう考えれば凄腕の大工さんというのは凄いですね。アセールも凄いという事ですね……。認めたくはありませんが……。


「便利だな。これは冒険者にも使えるな」

「それは無理だな」

「え?」

「この魔法の持続時間は三時間ほどだ。冒険者の仕事は数時間で片付かない事も多い。その度に魔法をかけ直すのもいいが、戦闘中には魔法をかけ直す事はできない……そうなれば無理に重い武器を持っていれば殺されてしまうぞ。リスクが大きすぎる」


 確かにその通りですね。

 もし、自分でこの魔法が使えれば便利ですがね……。

 私はレギールの姿を見て、ある疑問を思い出します。


「そう言えば、今日はクラスの人以外にも授業を受けているんですね」

「そうだな。今日は見習い大工達も授業を受けている」

「はて?」


 見習い大工?

 ギルド学校の生徒でもないのになぜでしょうか?


「建築ギルドには他のギルドと違う制度があってな、見習い大工に建築ギルドの授業を受けさせる事もあるんだ」

「ちょっと待て。という事は、冒険者ギルドだけの授業を受ける事も可能なのか!?」

「可能だな。ただし、授業一回に付き金がかかる」

「な、なに!?」

「結構かかるぞ? お前等に払いきれるか?」


 ナガル先生が言った金額はかなりの金額でした。

 ふむ。かなり良い剣が一本買えるだけの金額ですね。これを毎回ですか……余程のお金持ちじゃないと無理ですね。


「く、クソっ」

「だから言ったろ? 建築ギルドには特別な制度があるとな……。それも金がかからないわけじゃないが、それでもかなり格安だ」


 文句を言っていたレギール達も結局は何も言えなくなり、黙ってしまいました……。

 

 ふむ。

 今日の授業は建築ギルドの授業だったので役に立たないと思っていましたが、思いのほか役に立ちましたね……。


 こういう知識を得られるならば、学校生活も意外と悪くないモノです。


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