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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
3章 マイザー編

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32話 マイザーの過ち グローリア視点 

今回もグローリア視点です。


 グランドマスターの突然の出現から三日が経ち、俺はレティシアを呼び出していた。

 執務室にいるレティシアは不貞腐れているようだ。一緒に来てもらった、ギルガが事前に説明してくれたみたいだな。


「急に呼んですまんな……」

「それで、お話とは?」

「あぁ。マイザーの件から手を引く」


 不本意だがな……。

 案の定、レティシアは不服なようだな……。また顔に出ていやがる……。


「一応聞いておきましょう。なぜですか?」

「今回は相手が悪すぎる(・・・・・・・)


 あのグランドマスターが絡んでいるのなら、ここは静観が正しいだろう。


「じゃあ、マイザー王を殺しに行きましょうか?」

「マイザー王などどうでもいい。それ以外の要因だ。今回は引いておけ……」


 とはいうモノの、俺はすぐにマイザーに関わるという事を確信している。

 その時はレティシアに動いて貰わなければならん……。


「はて? それ程の相手ですか?」

「あぁ。下手をしたら、お前も冒険者を続けられなくなる」

「……それは困ります。私はエレンとカチュアさんと冒険者をするんです」

「困るんなら、納得してくれ。今回はギルドの大物がでてきている」

「まぁ……納得しましょう」


 納得いってねぇって顔しているがな……。

 レティシアが今の生活を気に入っているのは知っている。だから、そこを突かせてもらうしかない……。

 それとレティシアにはもう一つの仕事をしてもらわねばならん……。


「そうだ。レティシア、俺の部下の一人の能力を強化してやって欲しい」

「どういう事ですか?」

今後(・・)の事を考えて諜報機関の部下を強化して欲しい」

「……別にいいのですが、一度会わせてくれませんか?」


 会いたい?

 なぜだ?


「なぜか聞かせてもらっていいか?」

「そうですね。いくら私でも私が気に入らない人間には力を作りたくはありません」

「そうか……」


 レティシアが上を向く。まさかな……。

 まぁ、当然と言えば当然だな。アイツは誠実だし大丈夫だろう。


「わかった。シェン、居るんだろう?」

「ハッ」

「な!?」


 いきなり現れたのは二十代の灰色の髪の毛のやせ型の男だ。こいつは俺の部下の中でも上位の強さに入り、エフェットと同じで俺が最も信頼している男でもある。

 ギルガはいきなり現れたシェンに驚いているようだ。


「ギルガさん。気付きませんでしたか? 最初からいましたよ」

「オレには全く気配を感じる事はできなかった……」

「そうなのですか? まだまだですね」


 やっぱり、お前は気付いてたのかよ!?

 というか、グランドマスターよりもこいつの方が危険に見えるな……。ギルガの奴は少し落ち込んでいるし……。


「いや。ギルガ落ち込むな。レティシア(そいつ)がおかしいんだ……」

「はて?」


 レティシアの恐ろしいところは無自覚なところだな……。


「コイツはシェン。俺の諜報員の中で一番腕利きの部下だ。コイツにはマイザーを調べて貰おうと思っている」

「はて? マイザーから手を引くと言っていませんでしたか?」

「あぁ。だが、もしもの時の為にマイザー王の弱みを握りたいと思ってな……頼めるか?」

「分かりました……」


 レティシアはシェンの胸辺りに手を置く。そして、目を閉じ魔力を注ぐ。


「えい」


 レティシアが声を出すと同時にシェンの体が光る。


「できましたよ。強化した能力は【隠密】で、元々あった【すり足】を作り変えたのが【無音】、最後に新しく作ったのが七つの美徳【堅固・忍耐・生体完全断絶】です。何のための能力かは知りませんが、見つかる事はほぼないと思います」

「完全じゃないのか?」

「私は気付きますよ。私以外はほぼないと思います」

「そうか……」

「では、私は帰りますよ」


 そう言って不貞腐れたレティシアは部屋を出て行ってしまった。


「アイツ……無茶苦茶不機嫌だったな……。シェン、お前には二つの任務を与える……。一つはマイザーの情勢。一つはグランドマスターの事を調べてくれ」

「ハッ」


 俺がシェンに二つの命令を出すと、ギルガが驚いていた。


「陛下! グランドマスターを調べるのか!?」


 ギルガの驚きも無理はない。

 グランドマスターは本当に危険だ……。アレを敵に回すのは得策ではないというのは分かる。だが、このままではレティシアがいつ喧嘩を売るか分からない。


「ギルガ……これは必要な事だ」

「……あ、あぁ……」


 一応ギルガには納得してもらい、シェンに声をかける。


「危険な任務だと思う。レティシアに強化してもらった力を最大限に有効活用してくれ」

「分かりました」


 シェンが部屋を出た後、俺とギルガはため息を吐く。


「しかし、レティシアは不服そうだったな……。マイザー王を殺させないと言った時のアイツの顔……分かりやすいんだよ。どうにかアイツには人の心を取り戻して欲しいモノだ」

「ギルガ……。アイツを暫く一人にするな。エレンとカチュアのどちらかに常に一緒にいるよう言っておいてくれないか」

「あぁ……」



 二週間後。シェンが報告に現れた。無事に帰って来て何よりだ……。

 

「陛下。戻りました」

「あぁ。ご苦労。報告があるのか?」

「はい。マイザーとギルドの争いは激化するでしょう」

「どういう事だ?」

「ギルドから数人の使者をマイザーに送ったようです。その使者をマイザーは殺しました」


 なに?

 使者を殺しただと?

 国の中枢にいる者なら、それは絶対してはいけないのは分かるはずだ……。


「アホだアホだと思っていたが、そこまでアホだったのか?」

「いえ、ギルドの送った使者も大概だったと聞きました」

「どういう事だ?」

「ギルドからの使者はマイザー王を挑発していました。まるでギルドが、最初から処刑させるつもりで送り込んだとしか思えませんでした」


 そうか。

 マイザー王に使者を殺させるのが目的か……。

 使者を殺せばギルドがマイザーを攻め込む理由にもなる。それを狙ったのか?


「そうか……。マイザーの事は俺に任せておけ……。グランドマスターの事はどうだった?」

「まったく悪い噂を聞きませんでした。それどころか、ギルドの上層はグランドマスターを崇拝している様でした。アブゾールでの奉仕活動にたびたび参加もしている様です。俺の目から見ても、素晴らしい人物としか思えませんでした」


 なんだと?

 今まで正体不明だったんじゃないのか?

 アブゾールで奉仕活動? どういう事だ?


「そうか……。危険だと思うが引き続きグランドマスターを調べてくれ……」

「分かりました……」

「シェン。命の危険があったらすぐに逃げ出して来い。自分の命を最優先にしろ」

「ハッ」


 そう言ってシェンは消えた。


 俺は一人で天井を見上げる。

 アブゾールで奉仕活動か……。うさん臭く感じるのは俺だけか?

 俺の勘違いだったら一番いいんだけどな……。

 はぁ……。マイザーに行くために、またレティシアを呼ぶしかないな……。

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