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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
3章 マイザー編

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31話 グランドマスター グローリア視点

今回はグローリア視点です。


 この女がグランドマスターだと?

 仮面をしていて顔は分からないが、若いというのは分かる……。こいつも不老という奴か……。

 だが、こいつが本物のグランドマスターだとは限らない。表に姿を現すという事は影武者の可能性もある。


「あんたが本物(・・)のグランドマスターなのか?」

「そうだよ……。ただ、それを信じるも信じないも、お前達次第だ……」


 声は低い。

 体つきは女……声は男か? いや、声の低い女か?

 どっちだ?

 いや、今はそれはいい……。


「あんたが本物と信じて……こんな所に一体何の用だ? あんたは人前に滅多に現れないと聞いたが?」


 そもそも、その存在すら疑問視されてきたのに、いきなり目の前に現れられても信じる事はできない。ただ……。


 こいつからはレティシアと同じ気配がする……。

 レティシアからは独特の危険な気配……ドス黒い殺意の気配を感じる時がある。それと同じモノをこいつから感じる。


「なに、君達が私の事を調べようとしているから釘を刺しに来ただけだよ」

「なんだと?」

「君達が私の正体を探ろうとしている事についてだね。まだ……死にたくはない(・・・・・・・)だろう?」


 グランドマスターは仮面をつけているから表情は分からない。しかし、嗤ったのは分かる。そして、グランドマスターが殺気を放ち、机の上に何かを置いた。


「「「な!!?」」」


 人の頭?

 この男は何者だ!?

 俺がアセールを見ると、アセールは頭を見て青褪めている。知り合いか?


 俺達が驚いていると、グランドマスターから殺気が消える。そして、ケタケタと笑いだす。

 

「ははは。何を驚く? この男は罪人だよ。この男は私の部下(・・)で冒険者ギルドのシンマスター(・・・・・・)だった男(・・・・)だ」


 し、シンマスターだと!?

 冒険者ギルドの頂点を殺したのか!? 

 な、何を考えている!?


「な、なぜシンマスターを殺した!?」

「彼はシンマスターの地位を使ってマイザーと裏取引をしていたんだよ。一月に一度女性冒険者をマイザー王に献上するというね……。それで情報を流したりもしていた。許せないじゃないか……。それで粛清したに過ぎない」

「な、なに?」


 グランドマスター自らが殺したのか!?

 

「う、裏付けはあったのか?」


 今まで黙って聞いていたカンダタが口を開く。

 しかし、グランドマスターは意味が分からないと首を傾げている。


「なぜ、そんなモノが必要なのだ? 私がそうだと言えばそうなのだよ」


 ふざけるなよ。

 上に立つ者がそんな短絡的な考えが許されるわけが……。


「ご、傲慢な……」

「そうかな? 狂皇と呼ばれた皇王グローリア陛下。君も随分と好き勝手しているみたいじゃないか……。私としてもそれは看過できない」

「なんだと? ギルドと国はお互い不干渉のはずだ。それを、お前が口を出すと?」


 これだけは譲れるわけがない。これを許してしまえばギルドが暴走しちまう。


「君としてもエラールセからギルドが無くなるのは困るだろう?」

「くっ……。脅しているのか?」

「別にそんなつもりは無いよ」


 確かにギルドがなければ困る。確かにその通りだ。

 しかし、ギルドが国王のやり方に口を出すのは許されないはずだ。いや、俺が許さん。


「ははは。威勢がいいね。でも、言動には気を付けるんだね。私はこう見えても千歳を超えている。君達のようなひよっことは格が違うんだよ。年長者にはそれ相応の態度があるだろう?」

「な、なんだと?」


 やはり不老か。

 しかも千歳だと? どれだけの長い時を生きているんだ!?


「ふふっ。緊張しているな。今日君達の前に現れたのは一つは釘をさす事。もう一つはカンダタ。君に言いたい事がある」

「な、なに?」

「君がシンマスターをやれ」

「な!?」


 か、カンダタがシンマスターだと!?

 カンダタはレティシアの事に詳しい。レティシアの情報がギルド側に漏れるのは困る。

 

「カンダタはセルカのギルドマスターだ容認できないな」

「なぜ皇王の許可が必要なんだ? これはギルドの問題だ。さっき君が言ったじゃないか」


 くっ……。

 さっき、俺が内政に干渉するなと言っていたばかりだ……。クソっ。カンダタを信じるしかない。


「ふふふ。カンダタ……どうするんだい?」

「お、俺は……」


 普通であればシンマスターになれるとなれば喜ぶはずだ。しかし、カンダタは迷っている……。

 グランドマスターはその様子を楽しそうに見ている。くそっ……。


「まぁ、答えは急いではいないよ。それと、グローリア陛下。これは忠告だ。私の事を詮索しない方がいいよ。私の怒りに触れたなら私は国王だろうと……躊躇いなく殺すよ。じっくり考えると良い」


 グランドマスターはそう言って消えた。

 き、消えた!?

 て、転移魔法でもなく消えただと!?


「き、消えた……。転移魔法を使った形跡すらない……。姿を消しているのか?」


 俺は気配を探る。

 しかし、グランドマスターの嫌な気配を感じない。

 俺はギルガにも確認を取ってみる。


「ギルガ……気配は?」

「どこにも感じない。もういないはずだ……。あれがグランドマスターか……」


 ギルガの顔に汗が流れている。こいつほどの強さでもここまで緊張するのか……。


「ギルガ……お前はどう感じた?」

「レティシアと同じだ……得体のしれない強さを感じた……」


 やはりギルガも同じか……。

 俺はずっと黙っていたアセールを見る。アセールは俯いて黙っている。


「アセール……。あれがお前が尊敬するグランドマスターか?」

「そうや……。し、しかし……くそっ!」


 アセールは机の上に置かれたシンマスターの首を見て……泣いている。


「この爺さんは良い爺さんやった。そんな爺さんがマイザーと裏取引なんて……あり得へん……。きっと誰かに騙されたんや……」


 アセールは、俯いて静かに泣いていた。

 しかし、グランドマスターはなぜ調べもせずに殺したんだ? もしかして、アセールの知るこの爺さんとは違う裏の顔があった?

 もしくは……レティシアを手に入れる為に、カンダタをシンマスターにするのに邪魔な前任者を殺した?

 分からねぇが……、一つだけ言える事がある。

 

「どちらにしても、これ以上はグランドマスターの事を調べない方がいいな……」

「あぁ……。アレはレティシアと同じ感じがした……危険すぎる」


 ギルガも俺の意見に賛成のようだ……。

 カンダタには後で話をしておかなければいけない……。


 ここでアセールが虚ろな目で何かを言い出した……。


「ち、違うんや。グランドマスターは普段は優しい口調の方なんや。ギルドを立ち上げたんかって人間の暮らしをよくするためなんや。ただ自分の事を詮索されたくないだけなんや……」

「そうか……」


 俺はアセールのその目を見て……何か違和感を感じたが、これ以上の詮索は止めた……。

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