妹とソート
「お兄ちゃん……このコードが重いんですけど……」
未来がそんなことを言いながら泣きついてきた。
「とりあえず見せてみ」
「はい……」
そっとラップトップをこちらに向ける。Emacsが開かれていて書かれているのはC言語のようだ。
「俺はCはあんまり得意じゃないんだが……」
「そんなこと言わないでくださいよう……お兄ちゃん、自分でソートを実装できるって言ってたじゃないですか……」
そういえばそんなこと言ってた気がする。たしかソートがライブラリになかったときだったかな?
「まあできるけどさ、何をやればいいんだ?」
「このリストのソートなんですけど……せいぜい100万個くらいにしかならないはずなのにやたら時間かかるんですよ」
Sort()を検索して開いてみる。
そこにはバブルソートが慣れないであろうベタ書きで実装されていた。
「このやり方は効率悪いぞ」
へー、と言った風に未来が聞いている。
あと、この書き方だとデータ量の二乗に比例して時間がかかるからあんまり大きいデータには向かないぞ。
「そうなんですか!? 思いついたときはいいアイデアだと思ったんですけど……」
そうだよなあ、最近なら標準ライブラリに入ってるからスクラッチなんてしないよなあ。
「なあ、なんで自分で実装なんて考えたんだ?」
「言語処理系を作ろうと思ったんですけど、組み込みライブラリは自分で書かないといけないじゃないですか」
ああ、自作言語か……俺が以前挫折したやつに挑戦しようとしているのか……
頑張って欲しいなあ……
「まあなんだ、処理系は大物だから頑張れよ」
「うん!」
そういい返事をした未来は再び画面を見ながらコードを書き始めるのだった。




