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動物の本

「お兄ちゃん! ちょっと本屋さんまで連れてってくれませんか?」

「本屋ならその辺にあるだろ? べつにいいけど何買うんだ?」

「AB」

「え……」

「えーぶいじゃないですよ、えーびー、アニマルブックです」

 アニマルブック、業界人御用達の表紙が動物の絵になってるアレか……

「自分で買えよ、アレ高いし」

 むー、と頬を膨らませる未来、いや、あの本内容なりの値段なんだよな……高校生にはつらいお値段だ。

「いいじゃないですか……、お兄ちゃんにも読ませてあげますよ?」

 そりゃ欲しいけどアレ買うんならもっと欲しいものがあるしなあ……

「ほら、二人で買えば実質半額じゃないですか! おねがい!」

「はあ、分かったよ。その代わり俺も選ぶぞ」

「はい! じゃあ売ってる本屋さんまで週末に行きましょう!」

 あの会社の本は通販以外だと大型書店にしか置いていないんだよな……

「分かった分かった。俺は機械学習ものがいいんだが……」

「ええ! 絶対ネットワークものがいいです! 言語はPythonで妥協しますからそっちは譲れません!」

「しょうがないな……しかしネットワーク関係は結構面倒だぞ?」

 面倒なんだよなあ……昔Cでチャットシステム作ったときは悪夢を見た。

「お兄ちゃん、時代が違いますよ。今は数行でwebサーバが動く時代ですよ」

「楽しいか? それ?」

 わからん、数行で動いてもすごいのはライブラリやフレームワークじゃないか?

「本質はそんなところじゃないのですよ!」

 そりゃ分かるけどさ……細かいところを気にする俺がおかしいのだろうか……

「お前、三大美徳を信じてるのか?」

 エンジニアの三大美徳は「怠惰」「放漫」「短気」である。

 ちなみにこれをはじめに言ったのは某可読性が低いことで有名な言語の作者である。

「私ほど真面目な人はいないんじゃないですか」

「さよか」

 議論を諦め、さっさとスクリプトの続きを書こうとする。

「お兄ちゃん、プログラミングもいいですけどコミュニケーション能力もうちょっと頑張った方がいいですよ。なにはともあれ有名人はコミュ力高いですよ」

「俺はそこまで高みを目指してないんだよ」

 自分が使いたいと思うものを作ればいいと思うのだが……もちろん人からの評価も欲しいがそれはおまけだと思う。

「じゃあお兄ちゃん! 日曜に一緒に書店デートしましょうね!」

「お、おう」

 突然の発言にびっくりする。

 不意打ちはやめてくれよホント。

 そうして日曜に駅前の本屋に行くのを楽しみにするのだった。

 あれ? あいつデビットカード持ってなかったっけ? 通販でいいんじゃ?

−−−−

「やりました! お兄ちゃんとデートです! お兄ちゃんにあわせてプログラミングの勉強してた甲斐がありました!」

 ふっふーん! デートデート!

−−−−

 隣の部屋で何が起きているのか知らずに俺は寝た。

高いですよね、あのシリーズ……何とは言いませんが……

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