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エディタのウォーゲーム

好みは人それぞれで良いと思います。

なんだかんだでEmacs好きですけどね

「ふぃー終わった終わった」

 学校から帰ってそう独りごちる。

 部屋に入ってからラップトップを起動する、パスワードを入力してログイン。

 Emacsを起動してfizzbuzzを書いてみる。

 最速記録は3分だが、今日は5分半だった。

 気が向くといろんな言語で書いてるが今日はCで書いた、久しぶりに書いたので手こずったな。

 ちなみにではあるがbrainfackで書くという苦行にチャレンジしたこともあるがさすがに途中でリタイアした、書けるかあんなもん……

「お兄ちゃん、帰ってきたんなら言ってください」

「すまん、昨日夜更かししてEmacsでC書いてたら変なテンションになってな」

「お兄ちゃん……今……なんて?」

 なぜか未来の目が据わっている、なんか地雷ふんだっけ?

「だから暇つぶしにソース書いてたら筆が乗ってな」

「そこじゃない! 何で書いてたって?」

「Emacsだけど……」

「Emacs! あの邪悪なエディタを使うなんて! お兄ちゃんはおかしいですよ!」

「ええ!?」

「本物のプログラマはEmacsを使わないって文書を某掲示板に書いた私を舐めてますね!」

 そんなことやってんのかよ……

「いや、でもさ。もっと高級な言語はIDE使ってるし……」

「お兄ちゃん! 良いですか、ソースコードはテキストなんですよ。プレーンテキストをテキストエディタ以外で書くなんて論外です!」

「じゃあJavaをエディタだけで書けるの?」

「IDE前提の言語じゃないですか……それはしょうがないですけど……」

「良いですかお兄ちゃん、テキストを書くのはvim、いいですね。りぴーとあふたーみー」

「Emacs便利だぞ」

「あんな拡張入れないと使えないエディタは許せません。あと手がつるようなキーバインドも気にくわないですね」

「あのカスタマイズが良いんじゃないか。vimはカーソル移動から難易度高いだろ」

「どうやらお兄ちゃんには教育が必要なようですね。私のおすすめゲームをクリアしておいてください」

「なんでゲーム!?」

「これをクリアすればお兄ちゃんもvimの虜になりますよ!」

「タイピングゲームかなんかか?」

「ROGUEです」

「ローグ?」

「不思議のダンジョンって言った方が良いですか? ターミナルで動作して移動はhjklです。古くはこのゲームでviの操作に慣れろと言われたらしい由緒正しいゲームです」

そう言うとどこかの海外サイトのアドレスを渡してきた。

−−−−−−翌日

 疲れた……英語わかんねーし、ターミナルだとゲームって気がしない。

 結局俺はクリアできなかった。普通に無理だろこんなん。

 眠気を振り払いながらキッチンに入ると未来が……いなかった。

「おーい未来、寝坊かー?」

 部屋の前に行って呼んでみるとバタバタと部屋の中で音がして少し後に出てきた。

「珍しいな、なんかやってたのか?」

「えええ、ええ! ちょっとプログラミングをね……」

「寝坊するまでなんて珍しいな」

 そういうと未来はずいぶんとばつが悪そうに答えた。

「Emacs、使ったんです。便利でした」

その一言で悟った俺は朝食の用意をしながらEmacserが一人増えたのをうれしく思うのだった。

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