妹と高級アセンブラ
「お兄ちゃん! 文字列操作が面倒なんですけど……」
そんなことを言ってきた、ちなみにコイツの使っている言語はCだ。
「そりゃそうだろ、Cは文字列操作に向いてないよ」
「なんでこんな面倒なんですかね? 普通に+で文字列結合できてもいいじゃないですか!」
気持ちは分かるがCは古代の言語だからなあ……
「昔はリソースがとっても少なかったんだよ。CPUの使用時間に課金されてたんだぞ」
「えっ!? コンピュータが従量課金って怖すぎるんですけど!」
「ちなみにCはそういう時代に作られたんだ」
「昔は怖いですねえ」
「今はずいぶんいい時代だろ? Cはそういう時代背景で一番処理コストの少ない選択だったんだよ」
Cの文字列は鬼門だよなあ……領域外にアクセスしたら即セグフォはいて落ちるし。
「素直にPythonやJavaScriptにしたらどうだ。あっちはスゲー楽だぞ」
「楽なのは分かるんですけどねえ……インデントで構造を表したり、たいしたことしないのにHTML書いたりするの面倒なんですよね……」
妹様はこだわりがあるようだ。
「その二つならJetbrainsのIDEが使えて大分便利だぞ」
「IDEですか……お兄ちゃんIDE嫌いなんじゃ?」
「PythonとかIDE無しだと超きついぞ。一度使うとやめられない」
「そうですか……Cには何かいいIDE無いんですか?」
「WindowsならVisualStudio1択なんだがな……Macだよな?」
「もちろん! そういうの見るとwindowsもいいなあって思ったりもするよ」
「ところで、お兄ちゃんの大好きなJetbrainsはどうなんですか?」
「たしかにCLionあるけどな……ビルドがCmakeだからちょっとこったビルドしようとすると途端に難しくなるんだよな」
「意外と役に立ちませんね」
「いやデバッグとかにはすごい便利だぞ」
「そっちは便利なんですね……Cのデバッグって難しくないですか?」
「案外そうでもないぞ、真っ先に疑うのは配列のインデックスがはみ出してるとかだし、シンプルな分原因もしれてるんだよ」
「お兄ちゃんはなんでCが好きなんですか? 面倒じゃないですか?」
「最近の言語はブラックボックスのライブラリを持ってきて使うのが主流だからな、個人で開発する分には1から自分で作った方が楽しいんだよ」
「お兄ちゃん……人に頼るのを覚えた方がいいですよ」
「つってもなあ、みんなPythonとかJavaとかに言っちゃってるしなあ」
「安心してください! 私が協力しますよ」
「そりゃ心強いな」
未来は自信満々に言った。
仲間か……欲しいなあ……
「大丈夫ですよ私だって勉強してるんですから。お兄ちゃんの力になれますよ」
「あ、ああ……困ったときは頼むよ」
「デバッグは任せてくださいね! 自信ありますよ!」
そういえばデバッグもあるんだったな。面倒ですっかり忘れてた。
心強い妹がいるからきっとなんとかなるだろう。
気が向かないなあ……と思いながらCLionを起動するのだった。




