第30話 抵抗と恐怖
少女は腕を前に伸ばし、光り輝く球を作り出す。
光魔法の一種だろう。
見たところ、光を高密度に凝縮している。
徐々に温度が上がっていき、周辺が溶けていく。
少女は魔法で全身を覆っているのか、熱の影響を受けていない。
「逃げても無駄。ここ一帯を消すから。」
「それは、自爆するということ?」
「私は、死なない。攻撃を受けないから。」
どういうことだろう。
魔法で、守っているのか。
あるいは神器だろうか。
まあそんなことは後でいい。
問題は、この光の玉をどうしたものか。
自分だけを守ることはできるが、その場合周りへの被害は計り知れない。
いい案はないものか...。
「いい案...案...案...。あ!」
アランは閃いた。
その途端、少女は光の玉を放った。
「消えて。」
アランは、咄嗟に右手を伸ばす。
そして右上から左下に、右腕を振り下ろした。
その瞬間、目の前に存在していた光の玉が一瞬で跡形もなく消えていた。
爆発した音も、跡も、何も存在していなかった。
少女は唖然としていた。
当然のことである。
何が起こったのかわからないのだから。
先ほどまで、存在していた光の玉。
その球が、目の前にいる男によって音もなく消されたのだから。
「なんで、私の魔法が...どこに...。」
少女は混乱していた。
しかし、その間にアランは少女に近づいた。
少女は怯えながら咄嗟に、防御魔法を発動させた。
「すごいな。」
見るだけで分かる。
すごく硬い防御魔法だ。
俺の防御魔法よりも硬いかもしれない。
先ほど見せた魔法、そしてこの防御魔法。
【魔法の神】の加護を持っている可能性が高い。
それも、俺よりMPが多いかもしれない。
「こ、来ないで...。」
少女は怯えながら声を上げている。
まあ、よく考えたら無理もないかもしれない。
気づいたら知らない部屋にいるんだ。
こんなに小さな子がすぐ状況を理解できるわけがない。
防御魔法の前まで立つと、右手を伸ばす。
とても硬いドームのようなもので、中に入ることができないようになっている。
しかし、アランが触れた瞬間その部分だけが折れ曲がった。
そして、アランだけが防御魔法の中に入っていく。
少女は、そのことに驚きさらに怯え始めた。
アランが少女の近くに立つと、少女と目が合った。
少女の目からは、光が失われていた。
どれだけ酷い目に遭わされてきたのだろう。
あの時は、森の中に放置しておくことも一つの手だと考えていた。
しかし、今思うと助けて正解だったかもしれない。
今の少女の状況を見て、そう思った。
この選択が、この子のためになるのなら。
アランは、少女の頭に手を伸ばした。
そして、とても怯えていた少女の頭を優しく撫でる。
少女は、まだ怯えていた。
しかし、わずかながら落ち着いたようにも見えた。
今回も無事投稿することができました。
読んでくださりありがとうございます!
次回は、3月1日に投稿する予定です。
コロナには皆さん気を付けてください!
これからもよろしくお願いします。




