第25話 準備と開始
模擬戦が開始されようとしている中、大事なことを聞くのを忘れていた。
「そういえば、どうすれば決着がつくんですか?」
「ああ、ルールを言うのを忘れていたな。」
そうシエナさんが言い、説明を始める。
少々説明が長かったので、要約すると。
まず修練場には、【架空世界】という魔法が地面に描かれた場所があるらしい。
というか、今位置についているここがまさにその場所らしい。
効果としては、人を斬っても死なないというものだ。
要するに、VRゲームのようなものだろう。
斬られたときに感じる痛みも、切り傷程度に感じるらしい。
なんという便利な魔法だろう。
まあ、この魔法陣を描くのに最低でも1年以上はかかるらしいが...。
「まあ、要するに先に殺した方が勝ちってことですか。」
「そういうこと。それじゃあ始めようか。」
「そうですね。」
この模擬戦を見に、修練場には多くの騎士が集まってきた。
しかし、修練場には俺が勝つと思っている奴などいないだろう。
皆、シエナさんがどう戦うのかを見に来ているのだ。
あまり目立ちたくはないんだが...。
そう考えていると、シエナとアランの間に一人の騎士が立った。
「それではこれより、模擬戦を開始したいと思います。」
その騎士は、大きい声でそう言った。
その瞬間、地面に描かれていた大きな魔法陣が輝き始めた。
そして、その光があたり一面を包み込んだ。
次の瞬間、少し色褪せた世界がアランの周りに広がっていた。
よく見ると、魔法陣が描かれている大きさの半球体の中にアランはいた。
壁があるわけではなく、周りの騎士も色褪せてはいるがよく見える。
「驚いた?これが【架空世界】っていう魔法だよ。」
「この球体の中にいれば、殺されることはないと。」
「そういうこと。そして、この中から周りの騎士たちが見えるように、騎士たちも私たちを見ることができるっていう便利な機能付き。」
「なるほど。」
(世の中には便利な魔法があるものだ。)
球体の外にいる、審判役の騎士が喋りだす。
「準備はよろしいでしょうか?」
「私はいいよ。」
「いつでもどうぞ。」
二人は短く、そう答えた。
「それでは、両者。構え!」
その掛け声と同時に、シエナは神器を出す。
彼女の神器は、等身ほどの長槍だった。
そして、その長槍をしなやかに構える。
対するアランは...。
「刀に手を添えるだけ?」
シエナはそう呟く。
アランは、小さく手元にある刀に話しかけた。
「信じてるぞ。【水明】」
そして、
「始め!!」
一つの分岐点となる試合が、始まったのだった。
今回も無事投稿することができました!
読んでくださりありがとうございます!
次回は、10月1日に投稿する予定です。
コロナには皆さん気を付けてください!
これからもよろしくお願いします。




