表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

悪女と呼ぶなら呼ぶがよろしい


 市民が平等であることを謳って、だれもが幸せであるようなふりをするのです。

 そのようなことがありえるはずもありません。


 私を崇めなさい。


 これは決められたことなのでした。

 権力と財力を授けてくださり、それに加えて、この美貌もくださった両親には、しっかりと感謝しなければなりませんね。


 生まれ落ちたその瞬間から、選ばれた存在であるこの私は、運が良いだとか、そういう次元の話ではありませんでした。

 この美しい顔が、あとほんの少しばかりでも醜かったなら。

 父が母だけを愛する愛妻家ではなく、よりたくさんの子を作ってしまっていたなら。

 まるで同じ条件であったとしても、少しだけでも時代がずれてしまっていたなら。


 僅かな違いでもこうはいかなかったであろうからこそ、私がいかに神に選ばれた存在であるかということの、証明であるような気がしました。


 生きていくことさえ困難で、日々の命を繋ぐために、右往左往しているだなんて笑えてしまいます。

「お疲れ様です」

 零れた笑いに気付いてもいないのか、私の慈悲の心を思い込んで、ありがたがってなどいるのです。


 米作りを協力して行い、格差などない平等を信じる、そんな古い時代はもう終わるのですよ。


 そもそも、私の頭の辞書は、いくら探そうと協力という文字が見つからないのです。

 他人と協力して、努力してだなんてこと、経験がないものですから、私は知っているはずもないのですよ。

 私は私であり、唯一無二の、特別な存在であり続けました。


 私を崇めなさい。


 それが正であることは間違えないことであり、確実なことでありました。

 この世界においては、私を崇めることが、正しいこととして罷り通ってしまうのです。


 もちろん、そうなる道は両親が私のために用意してくれたものでありますし、私が維持しようと凛としているところです。

 けれども信じきられて、私が神であることが、常識的な事実になって来ていることは、やはりどうしても面白おかしく思えるのでした。


 このまま上手く騙していけば、くにの全ては私の思いのままになりましょう。

 滅ぼすつもりはありませんが、私が消えてしまったときに、滅んでしまうこととなりましょう。


 そうなったら、私を悪女として後世へと伝えていくがよろしい。

 私の生きている間さえ、夢を見させておけば良いのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ