10歳の誕生日
スキルレベルが1しかないのにものすごい強いヤツがいる
と言われるまでになる少年の成長を描く物語
―いよいよ明日だね
そう告げる母の声に僕はほんの少しの緊張と大きな期待を膨らませるのであった。
それが僕ことラナ・ユノスの人生を大きく狂わせるとも知らずに…
「…ふぁ」
昨晩は早く寝たというのによく眠れなかった。とまあ、当然のことである。なにせ今日は人生一番の大イベント、10歳の誕生日なのだから。
僕の住む世界では10歳の誕生日に神様から三つの贈り物がもらえる。一般にはギフトと呼ばれ、その後の人生を生きやすくしてくれるものだ。
例えば一つ上の姉のシーナは
記憶の加護…覚えようと思ったものを忘れづらくなる
成長Ⅳ…スキルや技術の成長を20%促進する
妖精の身代わり…致命傷を一度だけなかったことにする
の三つを授かり、魔法使いとして冒険者になるって言ってた。
そんな感じで個人個人多少の差異はあるもののみんなほんのり生きやすくなるんだと聞いていた。
街の真ん中にある教会について神父に手続きを済まし、いよいよ自分がギフトを授かる時が来た。
「目を閉じてゆっくりお祈りをしてください」
そう言われ目を閉じると
スキルレベル制限Ⅰ
成長ⅩⅩⅩ
スキルスタック
と頭の中に文字が浮かんだのでお祈りを終えた。
神父は「どんな加護を授かりましたか?」と笑顔で問いかけてきたので
僕は笑顔でさっき頭の中に浮かんだ文字を伝えると神父の顔から笑顔が消え、憐れむような顔となりどうにか絞り出すようにして
「貴方に幸せがありますように」
とだけ言われたのであった。