汝、中道を識る者
目の前のジーさんが憮然とした表情で説明してくれた事をまとめると、
人類は魔王が率いる魔物に脅かされている。
ぶっちゃけおされている。
この周辺を納めている王さまの城がここで、大都市のど真ん中にある。
そんで次攻められたらほぼ負ける。
魔王倒せば帰れる、と。
「要はあたしが勇者として召喚されたってこと?」
「……ああ、そうじゃ。」
なんていうか、『今、新しい伝説が生まれようとしている』ってかんじねぇ。あたしが10くらいの時だったかしら。あのゲームが販売したの。
「しっかしまぁ、よりによってあたしみたいのよんじゃってまぁ……、もっと適した若い子いるでしょうに」
「……誰が呼ばれるかは天がお定めになること。体だって最も優れていた時の状態だから問題ないです。加護もついているはずです。」
今までジーさんの横で、むすーっとしてた子がようやくしゃべった。
「え!あらほんと!皺が無いし、お肌ピッチピチ!」
「お主は……、男なんじゃよな……?」
「やーめーてーよー、ニューハーフよニュー、ハー、フ♪」
「いい加減になさい!!あなたは勇者で、民を救う希望なの!それなのに!」
「なのに…、こんな…!う、うぅ…」
ああ泣きだしちゃった……。まいったねこりゃ……。
――――――――――――ドゴォォォォォォォォォン――――――――――――
勇者(?)の困惑を知ってか知らずか激震が起こった。
「……来よったか!」
「来たって、魔物が?」
「ほかに何がいるのよ!」
「じゃあいっちょ倒しに行ってきますわ。」
勇者(?)は出口へ駆け出す。
「はぁ!?なんじゃと!」
「だって体は30代の下り坂迎える前のピーク時なんでしょ。いけるいける♪」
「いや、呼び出したわしがいうのもあれだが、そんな簡単に…」
「泣きべそかいてる女の子ほおっといてとんずらするなんてしないわよ!なめんな!!」
そう叫びながら出て行った勇者の姿は瞬く間に小さくなっていった。