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逃避雪国(中編)

「少年〜着替えが無いのだけど」

「な、なんで着替えも持たずに風呂入るんですか?やっぱあなた馬鹿でしょ??」

「なにおう、失礼な。あっ扉は開けないでよ!金とるからね!!」

「開けませんよ!!!ってか金の問題なんだ……」

「……えっち」



家に入れてもらったものの長い時間冬道で迷っていただけあって寒さに震えていた。それをみた少年が風呂を入れてくれたのだ。そりゃすぐに飛び込むだろう。着替えなんて気にする余裕無いよね。


少年が少年らしく着替えを風呂場の外に用意してくれたのでそれを着て部屋に戻るとあたたかい匂いがした

どうやら何か料理を作ってくれているらしい。


「いたせりつくせりだね。ありがとう」

「……別に良いですよ。いつも1人で作っているし2人分作るのも対して変わらないです」


しかし、最近の小学生は凄いなぁ。私は未だに作れる料理なんて卵をぐちゃぐちゃにしたやつとご飯を炊くこと位だ。それで困らないしなあ。


「少年はさいつも1人で料理を作ってるんだよね?」

「そうですけど」


軽快に手を動かしながら少年は答えた。


「それって寂しくないかい?」

「慣れましたよ毎日やっていますから」

「ふ〜ん。偉いね少年」

「……普通です。それより出来たから食べますよ」


照れているのかな?もう少しいじりたくなったけど止めておくか。料理作ってくれているし。


少年が作ってくれた料理はどれも美味しかった。年上らしく美味しい以外の言葉で感想を言おうとしたけど

美味しい以外浮かばなかった。まあ、正直は良い事だよね。


食べ終わってから食器を洗うのだけ手伝った。1枚お皿を割った所で強制退場させられたけど。手伝った事には手伝った。大事なのは結果より過程みたいだし。


「僕はお父さんの布団で寝るんでお姉さんは僕の布団で寝てください」

「……明日の少年は私が出てからその残り香を楽しみながらまさに夢を見るような心地で眠りにつくのであった」

「お父さんの布団で寝ますか?それとも床ですか?北海道の冬の夜覚悟して下さいね」

「あ、君の布団でお願いします」


いつも寝るよりも全然早かったから、布団に入れて貰っても全然眠りにつくことが出来なかった。

今日私の居ない教室はどうだったのだろうか?いつも私に間違えさせて笑いをとるあの先生の授業は今日は笑いが取れずつまらなくなっているのだろうか?いや、きっと他の人をネタにしていつも通り授業しているのだろうな。誰よりも替えがきくそれが私の価値。


親は心配しているだろうか?多分心配している。過保護な親だもの。でも本当は違う、心配している親を演じながらどこか非日常でドキドキしているのだろう。

親がいつも怒ると言うセリフが私の心を縛っている。


「あなたをここまで育ててあげたのは誰だと思ってるの?」


誰も育ててくれなんて頼んでないじゃん。

私を育てているのは仕方なくなの?

そう考え始めると何にでも口を出したり心配したりするのも嘘みたいに思えて、本当気持ち悪い。


……ああ、これじゃ家出前と何も変わらない。

家出前もこうやって何度もうじうじしてそんな自分を変えたくてここに来たと言うのに。


その点あの少年は凄いなあ。ほとんど1人で生活して

こんな悩みとは無縁なんだろう。あんな風になりたい

……よし。



「少年!私はファザコンだったのを忘れていた!やっぱそっちで寝る」

「うわあああ!!」


急にドアを開けたけどそこまで驚かなくても。うわあめっちゃ睨んでるし。


「ということで布団に入らせて貰うよ」

「何なんですか……まあ、もう何でも良いです。じゃあ、僕の布団に戻りますね」

「嫌、私実は人が隣で寝ていないと眠れないとんでもビッチだったんだ」

「は?」

「だから、さ。一緒に寝よ?」



嫌だ嫌だと言う少年にあらゆる文句をつけ、ぶーぶー言い訳を言っているうちに面倒くさくなった少年が布団を持ってきてくれた。隣で寝ることになった。


男と一夜を共にする……いやあ家出っぽくなってきた


「少年起きてる?」

「当たり前でしょう。何なんですか?」

「少年はさ、さっき1人でいるのはもう慣れたって言ってたじゃん」

「……そうですね」

「でもさ私の場合学校で1人でいるんだよね。それで1人でいることには慣れたよそりゃ。でもさ、それでもやっば寂しいよ。なんとかしたいと思う。なんともならないのはいい加減分かっているんだけどさ」


なんだろう?もう気にしてなかったはずなのにな。

少年と話していると勝手に言葉が口から出てくる。


「少年はさ、1人でいるのに完璧にこなしてるじゃん料理だったりの家事こなしたりさ、こんなふうに人を家に呼べたり」

「……別にそんなことないです」

「私はさ、学校のテストや態度も酷いんだ。だから1人になったのかもしれないけどさ。逆に言えば1人なのに何で他のこと頑張らなきゃいけないんだって思うんだよ」


少年は黙って聞いている。


「逆にね。家では完璧に過ごそうとするんだ。これみよがしに勉強したり親戚に良い顔したり。だからさ親が過保護になっちゃってさ、テストの点が悪いのは学校が悪い友達が居ないのは学校が悪いってね」

「……」

「そのせいで学校でますます孤立して、寂しいから家では完璧に過ごす。見事なまでの悪循環だよね」

「そうですね」

「……まあ、それを少年に言っても仕方ないけどね。偉い少年に会ってちょっと感化されたのかな」

「……同じです」

「え?」

「偉くなんかないっ!!僕はお姉さんとまるで同じだ!!同じで真逆だ!!!」



少年は少しずつ語り始める。

少女と少年の夜はまだ始まったばかりだ。

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