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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

暗めな話

異分子

作者: 毛布子

乙女ゲー小説に、サイエンスフィクションを追加。

ある意味、ホラー。

 この世界は箱庭なのか。

 決められた方向に向かって進むよう、誰かのためだけに作られた不自然な世界。

 その中で、見えない者の意図によって、私たちは生かされているようだ。

 ――見知らぬ誰かの、望む結果が出るように、と。



 振り返ってみれば、私の生は俗にいうところの「イージーモード」だったようです。

 私が今まで生きてきた間には、つらいことや悲しいことはほとんど無く、毎日が楽しくて仕方ありませんでした。

 でも、そんな夢のような(他者目線)日々は、今日で終わってしまうらしいのです。

 今日は、私の生における『ハードモード』初日かも知れません。不謹慎ですが、期待で胸が高鳴ります。 私は恵まれた『イージーモード』な自分の生活に、ほんの少しだけ物足りなさを感じていましたから。


 さて、そもそもの原因は、私の目の前にいる少女です。

 取り巻きたちと一緒にいた私を呼び止めて、あらぬ言い掛かりをつけてきました。



「あんたのせいで、この世界はメチャクチャよ!あんたがいると、男子はみんな恋に溺れて駄目になっていくのよ!あんた今日までに、どれだけの男を奪ったのよ!たくさんいい男ばかりはべらせて、女王さまにでもなったつもりなのッ!!」


 目の前の少女が私を平手打ちしたので、私は衝撃を堪え切れずに倒れこんでしまいました。

 私は地面に座り込んでしまいましたが、たいして痛くはありません。

 私のたくさんいる取り巻きたちが、庇って衝撃を和らげてくれていたからです。

 打たれた頬を押さえて蹲っていると、周囲のイケメンたちが過保護なくらい私を心配してくれます。

 わざと殴られた甲斐があるというものです。



 ――私、安利野姫香ありの ひめかは、生まれつき容姿に恵まれていたので、今まで努力しなくても逆ハーレムでした。

 現在は、なんだかよくわからないけれど、大勢の目の前で私のことを『男を手玉にとり、誑かして駄目にした悪女』だと鉢谷魅華はちや みかという少女が言っています。


 彼女はどことなく私に似ているのですが、纏う雰囲気が違うためか、あまり男性には好かれていません。

 だからこんなにひどいことをしてくるのでしょうか。

 私の周りにいる取り巻きたちは、今まで男も女もたくさんいましたが、みな優しく親切でした。

 しかし、彼女は私が取り巻きを利用していかにずるく生きてきたか、私が男をはべらせているせいでどれだけの女が恋を諦めていたか……そんなことを言っていました。

 そのようなひどいことをしているつもりは無かったのだけれど、この言い方だと私がものすごい悪女みたいに思われてしまう気がします。

 でも、私はそれに否定も肯定もしないつもりです。

 だって事実なのですから。

 現在進行形で、がっつり利用して生きてます。

 と言うより、彼らがいなければ私は生きていけません。そういう生き方しか私は知らないし、できないのです。そのように育てられ、これからも生きていかなければならないのです。

 そのように生きていくことこそが正しいことであり、私たちの世界の存続に繋がるのです。

 彼女は、いったい何がしたいのでしょうか。私に向けられている敵意に反応して、私は身を竦めます。

 私は本能に従って、そっと取り巻きたちの後ろに下がりました。

 私によく似ている彼女の姿が、見れば見るほど恐ろしい危険な存在のように私には思えたのです。


「この寄生虫を、みんなどうして庇うのよ!こんな女のどこがいいのよ!」


 周囲が思ったように反応を返してくれず、私が何も言わないからでしょうか。彼女は痺れを切らして、再度私に襲い掛かってきました。

 ――今度は、鋭い凶器をこちらに向かって突き出しながら。



 ……やはり、彼女は私の敵だったのです。

 どことなく似ていたのも、私を排除し、自分がその座におさまるための擬態だったのかもしれません。

 可哀相に。いくら姿が似ていても、しょせんは違うモノ。女王はおろか、私たちの仲間にすらなれないのに――――







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ピーピーピーピー


[ハチ子が生命活動を停止しました。]


 単調な呼び出し音と同時に、モニターに赤い警告文が表示された。

 モニターには大勢に取り囲まれて地に伏した少女の姿と、少し離れた場所で少数とともに佇んでいる女の子の様子が映っている。

 それを確認した男は、いつものように報告書を作成しはじめた。



[惑星チキュウ研究所ニホン飼育施設において、ホモサピエンスで実験されていた遺伝子操作による蟻と蜂の擬似フェロモンを持たせた個体の研究。


女王アリのいない働きアリと雄アリの遺伝子を組み込んだ人間のコロニーのなかに、女王バチの遺伝子を組み込んだ人間を投入した。

結果、コロニーの中から新たな女王が誕生し、ハチは排除された。やはり、フェロモンは同種属のものが優先されることが証明された。

今後は、別種の女王アリと雄アリの遺伝子を持たせたコロニー、女王バチと雄アリの遺伝子を持たせたコロニーを作り、我々に有効利用できる恋愛フェロモンの抽出をしていく所存である。]


男は報告書を書き上げると、すぐに

新しい実験体を育てるために、

――――実験施設を空ける準備にとりかかった。

SFは初挑戦でした、かなり難しいです。

これはひどいと自分でも思います。なので4月限定にします。

読んでくださってありがとうございます。


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