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凪神社  作者: おごまめこ
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第二伝:おかね

これは私の息子・しょうたの話です。

凪神社のお陰で、きっと幸せになったと思います。


でも、私は一生凪神社を憎み、恨み続けます。




私の家は恥ずかしながらかなりの貧乏です。

それは、しょうたが三歳の時、夫が女と浮気しウチの全財産を持って家出したことから始まりました。


私には兄弟と父母が居ましたが、兄弟4人姉妹3人という大家族。

お父さんやお母さんには迷惑を掛けることが出来ませんでした。


そして、私は一人でしょうたを養っていくことに決めました。

財産が一円もなかった私は、とりあえずパートを始めました。


しょうたには残っていたご飯や野菜を与え、私は一日一食の生活を送っていました。


しょうただけには、絶対不自由な思いはさせたくない。

その一心だけで私は働き続けました。


しかし、時代は不景気。

どんなに頑張っても、家賃・税金でお金はどんどん飛んでいきます。

世間がクリスマスでも、しょうたは一人でお留守番です。

本当に申し訳なくて仕方がなかったです。涙はもう枯れました。



でも、でも、、一番辛かったのはしょうたが何も言わないことです。


この子はほとんど泣かなくなりました。

夫が居る時は沢山泣き、駄々をこね、そして沢山笑っていました。


しかし、しょうたは唯一私が泣いている姿を見ると一緒に泣きます。

うわんうわんと大声出して泣くんじゃないんです。


静かに、ぽろぽろと涙を零します。



しょうたは分かっていたんです。

私がどれだけ頑張って自分を育ててくれているか。


しょうたに物をせがまれたことは、まったくと言っていいほどなかったです。


絶対にこの子だけは、絶対にこれ以上嫌な思いをさせるものか。


何度も 何度も 心に誓いました。



そんなこんなで、しょうたは小学校に上がりました。

兄から貰ったお下がりのランドセルに はしゃぎ喜ぶ姿は、今でも眼に焼きついています。


しょうたは小学校に行くようになってから、日増しに元気になっていきました。

友達と遊ぶのは何より楽しいようで、その時のことを内職している私によく話してくれました。



本当に 本当に 幸せでした。



ある日、しょうたは小学校から家への帰り道で、ちょっと寄り道をしました。


何もないのに周りをぐるぐると見渡します。

まるで、異世界を見るかの如く。


気付けばそこは深く、温かく、明るい森の中。

しょうたは余りの出来事で、言葉も出ない様子です。



そうだよね、いつも狭い部屋にいたんだものね。

外で遊んであげれなくて ごめんね。



しょうたは前にある神社のほうへ導かれるように歩きました。

先程まで前にあったかなんて、覚えてません。



中から、高校生ぐらいの女の子が出てきました。

女の子はしょうたを見下ろし、呟きます。


「ここは凪神社。貴方を助ける為に存在し、貴方を陥れる為に存在する。問おう。貴方は何を今願う?」


こんな難しいこと、しょうたに言っても分かるはずがない。



しょうたはずっと女の子を見ます。




しょうた、好きなものを言いなさい。欲しいものを言いなさい。

今まで、今まであんなに我慢したんだもの。

ちょっとぐらい、我がまま言いなさい・・・



しばらくの沈黙…



突然、少女は二コリと笑いました。


そしてゆっくりと音も立てず、神社の中に入りました。



しょうた・・・




気付けば私は部屋の中。

もう外は暗いのにしょうたが戻ってきません。


嫌な予感がしたので、すぐに探しに行きました。

今すぐこの腕で、この胸で抱きしめたい。

何故かそう、強く願いました。


しょうたの下校する道を走っていると、小さな人影がありました。

ランドセルのシルエットも見えます。



「しょうた!しょうた!しょうた!?!」



叫びながら必死で走ります。



そしてそこには



私に差し出そうとするように  


その小さな手に溢れんばかりの100円玉を乗せた


ランドセルと服を着た小さな地蔵が笑顔で立っていました。

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