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凪神社  作者: おごまめこ
1/3

第一伝:バッグ・真っ赤な。

皆さんは 凪神社 という現象を知っていますか?


貴方は知らなかったのですね。


そうですか、いつか出会えるといいですね。


私はもう二度と会いたくないですが。



私は、ある日買い物に出掛けたんです。

いつもの商店街をゆっくりと歩き、目的のデパートへ向いました。


この道はいつも人通りが比較的多く、車の行き来も激しいので私は嫌いなのですが、そんな理由でデパートの大安売りを見す見す逃す手はありません。

とにかく前方から来る人に気を付けなければ。ぶつかったら大変だもの。


そう考えていると、自転車が突然走ってきて、私の横を通りました。

そして私が持っていた大事な通帳や印鑑・財布が入ったカバンを物凄い力で奪い取ると、猛スピードで逃げていきました。


元々気の弱い性格です。それに、こんなに人が居るのに…

何が起こったかすぐには理解できず、ただ呆然と疾走する自転車を眺めていました。

そしてふと我に返り、すぐに叫びました。


「ど、どろぼお!」


しかし、もう自転車は随分遠く。


私はもう取り返すことより、取られたことを家族になんて言おうかと考えていました。

今月分の生活費、マイホーム建築の為にコツコツ溜めたお金、全部持っていかれてしまった。

そう考えると今にも倒れそうでした。


すると突然、辺りがぐるぐると回り始めました。

貧血でも起こったかな。

とりあえずしゃがんだ所、地面は回っていないことに気付きました。



景色、そう景色だけがだんだんと姿を変えていきます。



気付けばそこは、深い緑に囲まれ温かい木漏れ日が差し込む田舎の神社でした。

不思議と私は、そこに居ることに何の疑問も抱きませんでした。

気分は至極穏やかで、先程の事などもう忘れていました。


しばらく、緩やかな風に身を任せていると神社の中から一人の少女が出てきました。

巫女さんでしょうか。


体、顔は中学生か高校生ぐらいの可愛らしい女の子でしたが、その体からは想像できないような威厳がかもし出されていました。


少女はゆっくりと神社の階段を降り、私の前にきました。

そして、しばらく私の眼を見つめた後こう呟きました。


「ここは凪神社。貴方を助ける為に存在し、貴方を陥れる為に存在する。問おう。貴方は何を今願う?」


少女は表情一つ変えず、ずっと私を睨み続けます。

私は、言葉の意味を考えました。考えましたが、何故か冷静で居られません。


恐怖と欲望が同時にやってくるのです。

先程までの落ち着きはなくなり、緩やかな風が冷たい風に感じ、木漏れ日が身を焼く様に私を照らし、木々は私を飲み込まんばかりにザワッザワッと揺れます。


そうだ、望み・・・さっきの引ったくり・・・

返してもらおう!


私は頭から出てくる沢山の欲望を押さえ込み、そう願いました。


少女はニコリと冷笑を浮かべ階段を昇りました。

私は何も喋っていませんでしたが、不思議と思いが伝わったような気がしました。


「貴方の願い、受け止めました。私が言うことはありません。」


何故か最後の言葉がとても、そう、とても冷たく、心に刺さるように響きました。



気付けばそこは先程の商店街。バッグもちゃんと私の手の中。


いつもの商店街をゆっくりと歩き、目的のデパートへ向いました。


この道はいつも人通りが比較的多く、車の行き来も激しいので私は嫌いなのですが、そんな理由でデパートの大安売りを見す見す逃す手はありません。

とにかく前方から来る人に気を付けなければ。ぶつかったら大変だもの。


そう考えていると、自転車が突然走ってきて、私の横を通りました。

そして私が持っていた大事な通帳や印鑑・財布が入ったカバンを凄い力で奪い取ろうとしました。


私は体ごと持っていかれそうなのを必死でこらえ、カバンを握りしめました。

しかし、男はならばと言わんばかりに力を出し、とうとう私からカバンをとりました。


すると男は勢い余って車道に飛び出して行きました。

気付けば男は原型を留めていないほど、酷い姿をしていました。


続けざまに轢かれ続け、もう身元の特定も難しいほどらしいです。



そして警察から私に手渡されたのは 鮮血で染められた真っ赤なバッグでした。

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